『ストレンジャー・シングスS4』いよいよ配信!「奇妙な懐かしさ」の正体とは?

Culture 2022.05.19

大人気シリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』が帰ってくる。シーズン4は5月27日からNetflixで配信スタート。イレブン、マイク、ウィル、ダスティンたちの冒険とノスタルジーを、世界中の人々が待ち望んでいた。

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ストレンジャー・シングス 未知の世界、シーズン4。 photography: Netflix

2016年夏に初配信され、たちまち人気を博したドラマシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』。3シーズンにわたって、ティーンエイジャーを主人公とするこのSFシリーズは、あらゆる賞を総なめにし(ゴールデングローブ賞、エミー賞、グラミー賞など、65の賞を受賞)、Netflixで最も視聴されている英語シリーズの第2位にまで上り詰めた。5月27日、第1部がお披露目されるシーズン4は、前作の約6億時間の視聴を上回る成果を上げることができるだろうか。いずれにしても、3年前から何百万人ものファンが待ち望んでいた作品だ。

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すべての人の心に響く“子ども時代”

1980年代のポップカルチャーにインスパイアされたこのシリーズは、ノスタルジアを刺激することが成功の一因となっている。シーズン1は、12歳の少年ウィル・バイヤーズの失踪から始まり、BMXのオタク少年たちが彼を探しに向かう。そのファッションは80年代そのものだ。

このシリーズでは、超自然現象と「裏側の世界(パラレルワールド)」を研究する秘密研究所を描いている。「裏側の世界」とは、日常生活によって麻酔をかけられた社会の合わせ鏡のような存在で、儚いファンタジーがたくさん詰まっている。そこに実験台となる少女(本シリーズの注目株、ミリー・ボビー・ブラウン)が加わり、超能力を身につけたたくましいヒロインが誕生。そして、このシリーズで復活した90年代のカルト女優、ウィノナ・ライダーという異例のゲスト出演者にも注目が集まった。

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冒頭から『ストレンジャー・シングス 未知の世界』は、サスペンス、モンスター、どんでん返しなど、おとぎ話のすべての要素を備えており、私たちを子どもの頃の純粋な気持ちへとタイムスリップさせてくれる。そこに描かれているのは、結束力のもたらす強さ、困難に立ち向かうための友情と団結力。これが超高速通信世代にウケた理由とは......。社会学者・広告戦略家でラジオ・カナダ・プルミエのコラムニストであるファビアン・ロスザフは、「このシリーズは、かつてSF映画をビデオデッキで見ていたVHSの視聴者の心に響く」と語っている。

「『ストレンジャー・シングス 未知の世界』を観ると、1980年代の子ども時代の寝室に戻ることができるのです。スティーブン・スピルバーグ監督の『グーニーズ』やロブ・ライナー監督の『スタンド・バイ・ミー』のような、子どもたちの冒険を再び描いています。子どもたちがパズルを解き明かし、大人たちは心配する登場人物に過ぎないという壮大な物語。クラシックなポップカルチャーとホラー映画をミックスしたようなもので、これらの原型は、誰にも通じるものです。学校の人気者ではないキャラクター設定は、いまのオタクに似ています。ただし、インターネットの登場によって、イーロン・マスクやジェフ・ベゾスのように成功し、人気を博した人たちは別です。ここでのオタクは、アウトサイダーからスーパーヒーローになるのです」。

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背景にあるのは冷戦

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ストレンジャー・シングス 未知の世界、シーズン4。photography: Netflix

作品のヴィンテージな美しさは、一世代上の人々の若き時代を再発見する25歳以下の若者と、クラブ・ドロテ(注:1987-1997年フランスで放送されていた子ども向けテレビ番組)、スピルバーグ監督のファンタジー映画、ジョン・カーペンター監督のホラー映画の音楽を懐かしむ両親世代の両方にアプローチしている。一方、団塊の世代はというと、消費主義で秘密主義のアメリカへの疑問を背景に、息を呑むようなエピソードで構成され、冷戦を想起させる脚本に唸る。

「1980年代、東西の対立は構造的なものであり、思想を構成するものだった。私たちは忘れてしまったが、全世代が核弾頭の脅威を頭上に感じながら育ってきたのだ。この時代の大作は、冷戦に大きく基づいている」と、ファビアン・ロスザフは回想する。マット&ロス・ダファー兄弟が製作総指揮を手がけるこのシリーズは、「バック・トゥ・ザ・フューチャーの中にエイリアンが上陸する」という位置づけで、誰もが興奮する内容になっているのだ。

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一昔前の要素が満載

「『ストレンジャー・シングス 未知の世界』は、シーズンを通して、過ぎ去った時代と現代の世界の両方を読み解きながら、いまの物語の糸をたどっていく。たとえばシーズン3では、新しいショッピングモールが10代の主人公たちの注目の的となる。アメリカでは若者の社会化に欠かせないモール文化の重要性を再認識させられる。モールは、若者たちが出会い、交流し、混ざり合う場所で、1980年代を象徴するような存在なのです」とファビアン・ロスザフは指摘する。ラジカセのような時代の典型的なオブジェもまた、ノスタルジアを演出している。

「“インスタント”という印象のないインターネット以前の世界では、当時の代表的なアイテムはホッとする要素です。ハイパーコネクション、世界の恐るべき加速度は課題ですが、各世代にとって、次の世代の動きはより速いことを視野に入れなければなりません」。

アメリカにある架空の町ホーキンスでは、スマートフォンはトランシーバー、テレビは戦車のように重く、電話機は壁に固定されている。Z世代を虜にし、セサミストリートとカジミール(フランスでかつて放送されていた子供番組)で育った人々を感動させる、一昔前の要素が満載なのだ。

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関連商品の売れ行きも好調

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ストレンジャー・シングス 未知の世界、シーズン4。 photography: Netflix

『ストレンジャー・シングス 未知の世界』は関連商品の市場も賑やかだ。たとえばシーズン3では、1980年代を代表するブランドであるリーバイスのチームが、本シリーズの衣装デザイナーと協力してふたりのキャラクターの衣装を制作し、その衣装は店頭でも販売された。またナイキは、2019年に『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のコレクションを発表し、主人公の高校にインスパイアされたトレーナー、フーディ、Tシャツ、キャップなどを発表している。ファッション界にとっても、このシリーズの成功は、ヴィンテージ好きが増えている若者の間に新商品を売り込む絶好の機会だ。さらに、NetflixはHighsnobiety(ハイスノバイエティ)、Havaianas(ハワイアナス)、H&Mなどのブランドと多くのコラボレーションを結んでおり、シリーズから派生した商品(おもちゃ、マグカップ、レゴなど)がこの現象をさらに高めている。

成功の恩恵を受けているのは、Netflixだけではない。このシリーズの主演女優、ミリー・ボビー・ブラウン(18)は、世界のミューズとなった。自身のコスメティックライン「Florence by Mills(フローレンスバイミルズ)」を立ち上げた後、ルイ・ヴィトンのアンバサダーに就任し、サングラスのキャンペーンを初めて行ったばかりだ。4年前、ルイ・ヴィトンのアーティスティック・ディレクター、ニコラ・ゲスキエールは、自身が愛するこのシリーズをモチーフにTシャツを制作し、ファッションとこのシリーズの密接な関係を彷彿とさせた。シーズン4ではミリーが演じる役柄がキーキャラクターとなり、難解なパワーと精神力を対立させ、善と悪の終わりのない戦争を描いた、さらにダークな新エピソードになると予想される。主人公は高校生になり、グループはバラバラになった。しかし、すべてをひっくり返すような謎に裏打ちされた、新たな脅威が出現する。子どもたちも大きくなった。ファビアン・ロスザフはさらに言う。「『ヒーローが年を取るのを見たくない』という視聴者たちが、彼らについて行くかどうかはまだわからない」。

text: Elisabeth Clauss (madame.lefigaro.fr), translation: Hanae Yamaguchi

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