英国で日本の女性作家の小説が人気沸騰。その訳とは?

Culture 2022.06.29

日本の作家が手がけた小説の英訳本が定番人気となって久しいイギリス。近年は特に、女性の小説家による作品が好評だ。ロンドン中心部の大型書店に行けば、それらのペーパーバックが平積みで並んでいるのを頻繁に目にする。

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書店内の一角に日本の女性作家コーナーがあることも。サイン本も並んでいる。

また先日、イギリスの権威ある文学賞ブッカー賞の翻訳部門ブッカー国際賞に著作本『ヘヴン』がノミネートされて授賞式のために渡英していた著者の川上未映子が、ロンドンなどのいくつかの街で開催したトークイベントは大盛況だったという。

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「吉本ばなな、川上弘美、小川洋子など、これまでも多くのファンを獲得した日本の作家は少なくありません。そのなかでさらなる後押しのきっかけとなったのは、2018年の村田沙耶香による『コンビニ人間(英題:Convenience Store Woman』の英訳本の出版でした」と村田の本をイギリスで手がけるグランタ・ブックスのエディトリアル・ダイレクター、アン・メドウは語る。

『コンビニ人間』が日本で発表されたのは2016年。主人公の恵子は大学卒業以来18年間コンビニでバイトをしている。それまでの人生でずっと周りに違和感を抱いてきた彼女は、コンビニの店員として働いているときだけ世界の歯車になれると感じていた。しかし婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて恵子の周辺は大きく変わっていく。2016年上半期の第155回芥川賞を受賞した作品だ。

イギリスで村田の本は老若男女に幅広く読まれているが、特に20代〜30代の女性からの反響が大きいという。

「村田や川上ら、イギリスで出版されている女性作家の作品の多くはフェミニズムを扱っています。読者は登場人物を通して日本の女性たちの感じている生きづらさを知り、自分たちを重ねて『女性に従順さを求める世の中で、どう調和していくか』という問題が世界共通であることを実感しているのだと思います」

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またベストセラーを出す為に、編集者たちも作品選びに心を配っている。

「日本での評判や、英語以外の言語での翻訳本への反響などを踏まえるのはもちろんですが、編集者と翻訳者が密に連絡を取り合って仕事をすすめることをとても大切にしています」とメドウ。

2020年にモーガン・ジャイルズの訳で全米図書大賞の翻訳部門を受賞した『JR上野駅公園口』の作者、柳美里。彼女はスウェーデン滞在中に担当編集者と翻訳者とのミーティングを前に、次にどの本を翻訳するかを決めるのには「翻訳者の気持ち、思い、意向がとても重要」とツイートしている。

 

 

日本語を解する翻訳者たちが小説の熱量を直接感じて共感し、だからこそもっと広く読まれてほしいとする強い意思が、作者と海外の読み手の重要な橋渡しとなっているのだろう。

そうして晴れて翻訳された本の情報を、20〜30代の読者たちはSNSでシェアしていることが非常に多いとメドウは指摘する。読後の感動が冷めやらないうちに、作者名や作品名のハッシュタグをつけて感想をSNSで発信。それが読書好きの同世代の心を捉え拡散されて、ファン層がさざ波のように広がっているという。

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7月14日発売の村田沙耶香の『生命式(英題:Life Ceremony)』の表紙を手がけたのはルーク・バード。カラフルさと目を引くデザインで、村田の描く世界観を感じさせるものに仕上げた。

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柔らかなトーンが印象的な多和田葉子の『地球にちりばめられて(英題:Scattered All Over The Earth)』)の表紙。日本の単行本や文庫本とは違うアプローチなのが興味深い。

グランタ・ブックスは6月2日に多和田葉子の『地球にちりばめられて(英題:Scattered All Over The Earth)』を発売し、7月14日には村田沙耶香の『生命式(英題:Life Ceremony)』を店頭に並べる。さらなる注目を集めるのは間違いないだろう。

text: Miyuki Sakamoto

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