「厳粛で、小さく、贅沢でない君主制に移行していく」王室の今後を専門家が解説。
Culture 2022.09.12
新国王チャールズ3世の未来、ハリー王子のポジション......。英国王室のスペシャリストが、エリザベス女王の死去が王室に与える影響を分析した。
すべてがあっという間だった。そして、イギリス王室の運命を左右する大きな出来事に関する情報は、惜しげもなく開示された。9月8日正午、医師から「健康状態が心配だ」と告げられたエリザベス女王は、バルモラル城で療養することになったと発表された。そして、王室のメンバーがすぐに女王の元を訪れ、最期の瞬間を迎えたことが報道された。
――女王の健康状態が「心配だ」と発表された後、王室メンバーは非常に迅速に女王の枕元に到着しました。これは、不可避の事態が起こるというサインだったのでしょうか。
ステファン・ベルン:もちろんです。でも、このニュースが出るずっと以前に、彼女はすでに亡くなっていたのです。イギリスには、君主の死を夕刊で発表してはいけないというルールがあります。そこで、午後7時半に発表し、翌朝の『タイムズ』や『デイリー・テレグラフ』に掲載されるようにしたのです。
――彼女の喪が明けるまでの間、ロイヤルファミリーのプライバシーを守るためでしょうか。
そうですね。イギリス王室によると、アン王女とチャールズ皇太子だけが、女王が亡くなった際に枕元にいたそうです。
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チャールズ3世とエリザベス女王、切っても切れない関係
――最初の声明で、チャールズ3世は「最愛の母」に言及しています。ふたりの絆が弱まることはなかったのでしょうか。
ありませんでした。確かにエリザベス女王はチャールズ3世が結婚生活を維持しようとしなかったこと、そして彼の離婚について、よく思っていなかったのは事実です。しかしながら、チャールズ3世とエリザベス女王はいつも一緒でした。君主として厳しい対応をすることがあっても、後継者である息子に対しては違いました。一見冷淡な関係でしたが、それは王室という世界の問題であり、ふたりとも自分の感情を表に出すようには育てられていません。チャールズ3世は母親から優しさを受けることはなかったものの、同時に多くの信頼と尊敬の念を示されていました。また、彼らは共通してユーモアセンスを持ち合わせ、チャールズ3世は尊敬の念を込めて「マミー」と「ハーマジェスティ(女王陛下)」を同時に使っていました。本当に悲しんでいるのだと思います。彼は大変思慮のある方ですが、私がこの発言で最も印象的だったのは、悲しみと変化の時について語っていることです。
――それはなぜでしょうか。
なぜなら、彼は「パラダイムが変わる」とストレートに述べているからです。これからは、より厳粛で、小さく、贅沢でなく、形式的でない君主制に移行していくのでしょう。戴冠式は、1953年のものとは似て非なるものです。王室は最もシンプルな形に縮小され、チャールズの兄妹は別の場所で働かなければならなくなるでしょう。少しは家族の生活が逼迫しそうです。時代の変化、空気の変化、世界の変化です。
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――しかし、王政を近代化する可能性の高いキャサリン皇太子妃とウィリアム皇太子の登場を前に、「過渡期」の治世と感じることも......。
チャールズ3世は間もなく74歳になるため、その治世は必然的に過渡期となります。しかし、過去の装飾品、伝統に内在する少し面倒なものを取り除いて、ウィリアム皇太子の王座を確立するためには、非常に有効な移行でしょう。良い伝統とは、進化する伝統であることを忘れてはなりません。
――ハリー王子の立場が問題になっています。彼はバルモラル城に最後に到着し、最初に出発しました......。これは、メグジットや王室と距離を置いた緊張感の中で読むべきなのでしょうか。彼は女王のそばに居たのでしょうか。
いいえ、ハリー王子はおそらく妻とともに10日以内にこちらに戻ってくるでしょう。10日後に迫った葬儀に、メーガン夫人とともに参列しないとは考えられません。ハリー王子は衝撃的な行動を起こしたものの、エリザベス女王は彼への愛情を持ち続けていました。同時に、(「メグジット」の後)ハリー王子の肩書きを残すかどうかを決める際、女王は「あなたが選びなさい」と述べています。
女王はとても親身に想ってくれたものの、ハリー王子は自分の運命を決め、その責任を負わなければなりませんでした。ダイアナ妃が亡くなった当時、彼の気持ちをいちばん理解していたのは女王だったでしょう。女王は、彼の迷いや悩みを理解し、彼の弱さを見抜き、孫をとても親身に考えていました。もちろん他の孫たちのことも同様に愛していましたが、自分を笑わせてくれる孫、ハリー王子には特別な愛情を抱いていました。
ふたりの関係は、明らかに通常の儀礼を超えていました。たとえば、ハリー王子は女王に、バラク・オバマ元大統領とインビクタス・ゲームのことを話してほしいと相談しました。女王は軍隊を尊敬していました。息子のアンドルー王子は軍人ですし、ハリー王子もそうでしたから。
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――葬儀に孫は出席するのでしょうか。
全員集合するでしょう。家族全員が参加し、数日後に実施される葬儀に出席することになります。しかし、喪に服すのはチャールズ3世とカミラ夫人です。キャサリン皇太子妃とウィリアム皇太子はおそらく目立つ場所にいるでしょうが、おそらく彼らの子どもたちはそうではないでしょう。曾祖母の葬儀に参列することが、子どもにとってどれほどトラウマになることかは計り知れません。
――メーガン夫人とハリー王子の子どもたち、アーチーとリリベットは、おそらくアメリカに残るでしょう。しかし、エリザベス女王の死去後、子どもたちには王子と王女の称号が与えられますが、サセックス公爵夫妻(メーガン夫人とハリー王子)は王室との距離を縮めるでしょうか。
もちろんです。何をしようが、何を言おうが、ハリー王子は常にエリザベス女王の孫に変わりありません。
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公からプライベートに関して
――エリザベス女王は、基本的に一般人と同様、母親や祖母だったのでしょうか。
彼女は母親であり、祖母であり、曾祖母でした。違うのは、彼女が公人であったことです。しかし、プライベートでは、エリザベス女王は非常に温厚な人だったと思います。孫と話すのが大好きで、ちょっとしたメールを送ったり、おしゃべりをしたりしたと、彼女をよく知る人たちは言います。一緒に散歩に行ったり、勉強のことややりたいことを聞いたりしていました。エリザベス女王は、他人への気配りができる人でした。カメラマンがいれば、誰しもありのままの姿は隠すものです。
――個人的には、イギリス王室に対してどのようなイメージをお持ちですか。
喪に服すときも、喜びのときも、偉大な瞬間に団結することができ、それによって国をひとつにすることができる方たちです。ロイヤルファミリーといえば、英連邦を含むイギリスの大家族のことも意味します。私たちを超え、時代を超え、私たちすべてに語りかける何かで結ばれた人々の感動が伝わってきます。社会学者のセオドア・ゼルディンは、この家族は基本的に絵のようなもので、各メンバーは異なる色を表しているものの、美しい絵を描くにはすべての色が必要だと述べていました。これは、彼らをよく表していると思います。
text: Pascaline Potdevin (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi