存在感を放つキャサリン皇太子妃、かすむカミラ王妃。

Culture 2022.09.14

新国王チャールズ3世の誕生とともにウィリアム王子夫妻も称号が変わり、皇太子夫妻、すなわちプリンス&プリンセス・オブ・ウェールズとなった。次期王妃でもあるキャサリン皇太子妃を前に、カミラ王妃の存在感がかすんでいる。

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毎年恒例の英陸軍の式典、「トゥルーピング・ザ・カラー」でのキャサリン皇太子妃とカミラ王妃。(ロンドン、2022年6月2日)photography: Abaca 

「プリンセス・オブ・ウェールズ」。重みのある称号だ。最後にこの称号を使用したのはダイアナ妃だった。「心のプリンセス」、「人民のプリンセス」と呼ばれ、存在そのものが愛された。2005年にチャールズ皇太子と再婚したカミラ・パーカー=ボウルズは、プリンセス・オブ・ウェールズの称号を名乗る権利があったものの、そうしなかった。ダイアナ妃への敬意もあるが、当時からすでに彼女へ王妃の称号を与えることに反対する声があり、イギリス国民の怒りを買うことを恐れたのだ。こうして、彼女はコーンウォール公爵夫人というもうひとつの称号を名乗ることにした。

しかしながらキャサリン皇太子妃の場合は事情が異なる。夫の母親の称号を引き継いでも誰も文句を言わないだろう。20年近くかかってようやくイギリス国民に嫌われないようになったカミラ王妃と異なり、「完璧なケイト」の愛称を持つキャサリン皇太子妃はとっくにイギリス国民の心をつかんでいる。人気が下がったことがなく、上がりっぱなしというのも王室の歴史で滅多になく、特筆すべきことだ。2000年代初頭、ケイト・ミドルトンはチャールズとダイアナの長男、ウィリアムと交際を始めて注目を浴びた。優雅で物静かな女性は「平民」(両親は元英国航空勤務のディスパッチャーと客室乗務員)出身で、その点もふたりの愛が本物である証拠とみなされた。チャールズ皇太子とダイアナ・スペンサーの愛なき結婚、その後のいわゆる「ウェールズ戦争」(夫妻がそれぞれ公然と互いに傷つけ合い、不倫をした。不和の主原因はカミラだった)の記憶は当時の人々にとってまだ生々しかった。

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新しい時代の到来

実のところ、平民出身の女性との結婚が許されたのはイギリス王室でウィリアム皇太子が初めてだった。許可を出したのはエリザベス女王だ。1992年の「アナス・ヒリビリス(ひどい年)」の再来はもうこりごりと思っていたに違いない。この年、女王の4人の子どものうち、チャールズ皇太子、アン王女アンドルー王子の3人が離婚した。だからケイト・ミドルトンは2011年の「世紀の結婚式」、いや婚約よりも前から、民主的で開かれた新しい王室の象徴だったのだ。未来のプリンセスに共感した若い世代の目を王室に向けさせる効果もあった。やがて人気が失われ、人々にそっぽを向かれる可能性だっておおいにあっただろう。しかしながらケイトことキャサリン皇太子妃は決してひるまなかった。カミラ同様、王室の一員になるための訓練を受けたわけではなかったが、ウィンザー家の人々とつきあう中で必要なルールを身につけ、それを完璧に守った。

フィリップ王配はかつて王室のことを「ザ・ファーム(会社、事業)」と呼び、その呼び名は王室の代名詞のひとつとなった。キャサリン皇太子妃以前に王室に嫁いだ女性たちは「ザ・ファーム」の魔の手にかかり、彼女のような成功はつかめなかった。ダイアナ妃は「心構えが足りなかった」と感じ、セーラ・ファーガソンは「おとぎ話とは異なる」体験だったと語った。ハリー王子と結婚したメーガン夫人は、2021年のオプラ・ウィンフリーによる衝撃的なインタビューで、「これがどういう仕事なのかよくわからなかった」ともらした。しかしながらキャサリン皇太子妃はやすやすとすべてをクリアした。2013年にジョージ王子、2015年にシャーロット王女、2018年にルイ王子と、それぞれ王位継承順位2位、3位、4位の可愛らしい王位継承者を3人授かり、夫のウィリアム皇太子とともにきちんと公務をこなす。しかも控えめで思慮深いという、王室にとって大切なふたつの資質を保ち続けている。

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決して出しゃばらない

昨年5月、映画『トップガン』のプレミア上映会ではレッドカーペットでキャサリン皇太子妃はこのうえなく美しく、隣にいたトム・クルーズ明らかにメロメロだった。一転してコロナ禍中、医療関係者や患者とビデオ会議をしている時には人間的で慈悲深い顔を見せた。公務中、皇太子妃の顔から笑顔が一瞬でも消えたところを見た人はいるだろうか? 青でも緑でもピンク、黄色でも、皇太子妃が着たドレスが完売しなかったことがあるだろうか? たまに行うスピーチも非の打ちどころがない。エリザベス女王の眉をひそめさせることもしていない。キャサリン皇太子妃がメディアから多大な注目を浴びながらも、決して出しゃばることのない態度を女王は高く評価していた。イギリスの世論調査、YouGovが昨年春にイギリスでおこなった人気調査によると、回答者の68%がキャサリン皇太子妃に好感度を持っていた。イギリス王室ではエリザベス女王(75%)に次ぐ第2位。一方カミラ王妃は8位にとどまった......

カミラ王妃は国王チャールズ3世の妻として王妃の称号を得たものの、その道のりは決して平坦ではなかった。ダイアナ妃からは、一度噛みついたら離さないという意味を込めて「ロットワイラー犬」とさげすまれ、イギリス国民からは「夫を奪った女」としか見られなかった頃からすればずいぶんマシな立場にはなったのだが。キャサリン皇太子妃同様、カミラ王妃は公の場でほとんど発言せず、王室内で目立たないように振る舞い、チャールズ3世を支え続ける存在としてようやくイギリス国民の密かな尊敬を集めるまでになった。今年の2月にはエリザベス女王から王妃(クイーン・コンソート)にふさわしいことを認められた。「王室は短距離走ではない、長距離走だ」と、ダイアナ妃の伝記をかつて書いたアンドリュー・モートンは2018年、ウィリアム皇太子とハリー王子の対立をあおるメディア合戦に関連して語った。そのことを王室のふたりのファーストレディは熟知している。本人同士は前から仲良しだが、イギリス国民の間でふたりの人気にはだいぶ差がある。40歳になったキャサリン皇太子妃は、ハリー王子が妻メーガン夫人と米国移住し、彼女とウィリアム皇太子だけが王室の未来を担うことになって以来、ますます人気が高まっている。

完璧な妻で模範的な母親でもあり、王室の一員としても非の打ち所がない。そんな彼女がナンバー2の地位にあれば本人が望まずとも、彼女ほど完璧ではないナンバー1の王妃の存在感はどうしても薄くなる。フランスのマダムフィガロ誌の取材を受けた歴史家で、人気テレビドラマシリーズ『ザ・クラウン』の監修をおこなっているロバート・レイシーは、「イギリス人はキャサリン皇太子妃のことを王室のルールに比較的従順な妻と見ています。ですが、彼女はとても頭がいい! 王室一族の行動に決定的な影響を与えています」と分析してみせた。チャールズ3世は王室を争いやスキャンダルから遠ざけたいと考えているようだが、イギリスのタブロイド紙の目からは、まだまだネタが転がっているようだ。

text: Marion Galy-Ramounot (madame.lefigaro.fr)

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