新しいアートの聖地、青森を巡る 弘前市 記憶の継承をテーマにした新美術館へ。
Culture 2022.09.17
弘前城とリンゴ園、津軽富士とも呼ばれる岩木山。歴史薫る町の風景に敬意を払い建てられた美術館は、記憶の継承をテーマにしている。
弘前れんが倉庫美術館
新旧が交わる空間で、最新アートを浴びる。
右が弘前れんが倉庫美術館、左の小さな棟は、カフェ&レストラン ブリック。シードルゴールドの屋根が、光の反射によって煌めく。
戦前は日本酒、戦後はシードル造り等に使われていた建物を、建築家の田根剛が古い梁やレンガを活用しながら改修。「記憶の継承」と「風景の創生」をコンセプトに、美術館として2020年、生まれ変わった。建物に入ると、弘前出身の奈良美智による『A to Z Memorial Dog』がエントランスで迎えてくれる。奥に広がる巨大な展示室は、この空間に似合う作品をとアーティストの創作意欲を刺激し、大きなスクリーンを活用したり、大型の彫刻を展示するなど幅広い。鑑賞後は隣接するカフェへ。弘前産リンゴで造ったシードルがおすすめだ。
パリと京都を拠点に活躍するアーティスト/作曲家の池田亮司。天井高15mにもなる大空間には、巨大なプロジェクション『data-verse 3』を。映像と音と建築の共鳴を身体で感じたい。『池田亮司展』は2022年8月28日まで開催。
展示室1には池田の『point of no return』
ブリックの奥にある工房で醸造した「弘前吉野町シードル」グラス¥1,040。透明感のあるみずみずしい味わい。ほかに飲み比べセットも用意する。
パスタやアップルパイなどを供するカフェ&レストランとして営業。ショップも併設し、35種以上の弘前産シードルのほか、展覧会関連グッズを販売。
青森県弘前市吉野町2-1
tel:0172-32-8950
営)9:00〜17:00
休)火 ※祝日の場合は開館、翌日休館
料)展覧会ごとに観覧料が異なる
www.hirosaki-moca.jp
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アート散歩の寄り道@弘前市
ザ・ステーブルス
土地の風景が浮かぶ、東北の手仕事たち。
作家の意思や意図を感じるもの、個人など小規模な造り手によるうつわ、服、小物を中心にセレクト。弘前のシンボルである岩木山を模した津軽焼や、津軽で穫れる根曲竹のカゴグッズなどが店頭に並ぶ。青森出身のイラストレーター、花松あゆみの版画作品集など、店とのコラボアイテムにも注目したい。
山形のオブジェは弘前の陶芸家・小山陽久が春夏秋冬の岩木山を表現。冬は雪で真っ白に。岩木山(大)¥550、岩木山 四季(小)各¥440。中央は小山の息子、佐藤学が手がけたカップ¥3,850。コースター¥700〜。根曲竹の豆カゴ¥1,760
東北以外の手仕事も。
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イルフィーロ
地産地消イタリアンで、生産者と繋がる。
野菜や魚をはじめ、チーズやワインなど地元食材を盛り込んだ、地域密着型イタリアン。シェフ自身も猟銃免許を取得し、近隣の山で獲れたツキノワグマを使ったモルタデッラや、ジビエ料理を提供する。保存を目的にしない自家製シャルキュトリーは、塩味が穏やかで肉の風味がしっかりと感じられる佳品だ。
料理はいずれもアラカルトのディナーメニューより。日によってラインナップが替わる「生ハム&サラミ 4種の盛り合わせ」¥1,800。豚と熊で仕込んだモルタデッラと津軽鴨のハムは自家製。
「本日の魚のソテー」¥1,500。生産者との深い繋がりがないと手に入らない食材も。この日の魚は、市場に出回らないという川で獲れたサクラマス。
市内中心部に位置。イルフィーロとは糸という意味。まわりの生産者との関係性を大切にしたいと名付けた。
青森県弘前市土手町107 2F
tel:0172-55-9979
営)11:30~14:00L.O.、18:00~21:30L.O.(月、火、木、金)
11:30~14:30L.O.、18:00~21:30L.O.(土、日、祝)
休)水 ※ほか不定休あり
@il_filo_hirosaki
*「フィガロジャポン」2022年9月号より抜粋
photography: Kentauros Yasunaga