新しいアートの聖地、青森を巡る 八戸市 八戸美術館はアートコミュニティへ進化。
Culture 2022.09.17
イカの水揚げ日本一を誇る漁港の町に、昨年末、新生美術館がお目見え。アート鑑賞だけでない、新たな役割を担う。
八戸市美術館
“まち”のハブとして、アートでコミュニティを活性化。
高さ18mにもなる吹き抜けが特徴のジャイアントルーム。すべての展示室は、この空間をハブに繋がっている。家具、カーテン、展示パネルは可動式なので、プロジェクトに合わせて自由な空間作りができる。
直線のファサードが美しい建物は、西澤徹夫、浅子佳英、森純平による設計。
1986年の開館から30年強。市の美術館が2021年11月、新たに生まれ変わった。鑑賞目的だけでない、アートを通して人と町が出合えるような“アートファーム”の概念を掲げ、コミュニティ作りに貢献。それゆえ館の大部分を占めるのは、展示室ではなくジャイアントルーム。フリースペースとして開放し、時に市民憩いの場に、時にアーティストと市民との共同制作の場になっている。小さな展示室、コレクションラボには収蔵作品を展示し、ホワイトキューブには八戸や青森ゆかりの展示をすることも多々。地元の活性化に一役買っている。
コレクションラボは、あえて中の展示スペースが見えるようガラスの入口に。撮影時は田沢湖の『たつこ像』で知られる彫刻家、舟越保武の作品を展示。
館内は白やグレーが主体だが、2 階に続く階段はぬくもり感じる木材×オレンジのじゅうたん。さらに進むとテラススペースが広がっている。
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アート散歩の寄り道@八戸市
八戸ブックセンター
ユニークな空間で、書物との出合いをサポート。
「世界」「人文」「自然」「芸術」など独自のテーマに沿ってさまざまな書物をセレクト。「本のまち」をテーマにした一角には関連書籍だけでなく、八戸の小説家、三浦哲郎の文机のレプリカがある小上がりを読書席として用意。店内で購入したコーヒーを片手に「カンヅメブース」に籠もり、執筆活動にいそしむ人も。
入口近くにギャラリー、店の中央には一杯ずつハンドドリップで淹れるコーヒーなどドリンクを販売するカウンターが。ギャラリーは本を切り口にしたテーマで展示。
芥川賞作家、三浦哲郎の作品が並ぶ読書席。作家や本と向き合えるプレゼンテーションや仕掛けがいっぱい。
青森県八戸市六日町16-2 Garden Terrace 1F
tel:0178-20-8368
営)10:00~20:00(月、水~土) 10:00~19:00(日、祝)
休)火 ※祝日の場合は開館、翌日休館
https://8book.jp
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八戸まちなか広場 マチニワ
水と光と色が呼応する、アートな広場。
町の中心部に広がる、ガラス屋根がついた広場のようなフリースペース。青森県出身のアートディレクター、森本千絵が監修したシンボルオブジェ『水の樹』がそびえ、噴水で遊ぶ子どもなど、老若男女で賑わう。大型ビジョンを利用したイベントや、パフォーマンス発表の場として活用されている。
水飲み場も兼ねた『水の樹』。時間に合わせて音色を奏でる。施設内にはテーブルと椅子も用意され、宿題中の学生の姿も。
青森県八戸市三日町21-1
tel:0178-22-8228
営)6:00〜23:00
休)無休
料)無料
https://machiniwa8.jp
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6かく珈琲
雑味のない炭焙煎のコーヒーでほっとひと息。
かつて製炭業に携わっていたほど炭に魅せられた店主が、地元八戸で始めた店。販売するコーヒーやチョコレートはすべて炭を駆使したものだ。南部鉄器で入れるネルドリップや雑味のないエスプレッソなど、こだわりの一杯がいただける。2022年8月には、店内にテーブル席を設け、グランドオープンを予定。
豆はインドネシアなど5~6 種を用意。150g ¥1,650。同じく炭で焙煎したカカオから作るチョコレート各¥850
元旅館をリノベーション。靴を脱いで廊下を進んだ先にカウンター。
濃いエスプレッソから作る、まろやかな「ミルクとエスプレッソ」¥650
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ソールブランチ 新丁
美術や音楽が交じり合う、カルチャー発信地。
店名の「新丁」とは、花街だったこの町の昔の呼び名。音楽やアートなど、八戸のカルチャーシーンを作り出してきたオーナーが2015年に開業。店内にはカフェとショップ、ギャラリーも併設。青森の人々を撮り続けた工藤正市の写真展など、カルチャースポットとして感度の高い市民を引き付けている。
花街として賑わっていたこの地域は、旅館も複数あった。同店もかつての旅館を一部リノベーション。
撮影時は工藤正市写真展『青森 1950-1962』を実施。文化人を呼んでのトークショーや、自社レーベル関連のライブも開催。
青森県八戸市小中野8-8-40
tel:0178-85-9017
営)12:00~18:00
休)不定休
https://saulebranche.info
*「フィガロジャポン」2022年9月号より抜粋
photography: Kentauros Yasunaga