カニエ・ウェストのパリでのショー、問題視された理由とは?
Culture 2022.10.06
パリ・ファッションウィークでのサプライズショーで、ラッパー兼デザイナーである彼は、YEEZY(イージー)シーズン9コレクションの発表の場を利用し、自らの多くの不満を訴えた。
Instagram@nssmagazineのスクリーンショット
数日前から、パリのファッションウィークではYEEZY(イージー)に暗雲が立ち込めている。噂によると、45歳のラッパー、カニエ・ウェストが、2020年以来となるサプライズ公演を行うという。10月2日(日)、雑誌「Business of Fashion(ビジネス・オブ・ファッション)」がこのニュースを確認した。翌日、パリ8区の非公開の場所で行われたYEEZYシーズン9の発表会には、選ばれた50名が参加し、その模様はオンラインでも配信された。賛否両論を巻き起こす要素がすべて揃った、親密で反響の大きいショーであった。物議をかもす発言で知られるラッパーは、自分が特に得意とする芸術分野で、自らのアート作品のコントロールを取り戻そうと強く決意している。
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冒頭のトーク
前日、アーティスティック・ディレクターのデムナがデザインするバレンシアガのショーのオープニングで、カニエ・ウェストは決定的な一歩を踏み出した。今後は沈黙を守ると宣言していたが、ショーを自らのステージに変えてしまった。彼は、ショーの前に長々と語り、2016年に行われたYEEZYのショーでモデルが失神したこと、パリでのキム・カーダシアンの強盗事件、精神病院への入院など、彼にクレイジーというレッテルを貼られたエピソードを振り返った......。10月3日(月)、カニエ・ウェストは更生への道を歩み始めたが、途中で行き詰ってしまったようだ。
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ファッションウィークで決着をつける
デムナ、ジョン・ガリアーノ、アントワーヌ・アルノーを含む聴衆を前に、アメリカのファッションブランドGapとのコラボレーションが頓挫したことを語り、スピーチを終えた。カニエ・ウエストは、ストリートが必要としているものを形にする方法を知っていると主張するものの、残念ながらファッション業界と敵対しなければならない。そのため、彼は戦わざるを得ない。「ベルナール・アルノー(LVMH会長兼CEO)は俺の新たなドレイク(かつてカニエがディスり合っていた相手)だ」と締めくくった。これは、ふたりの歌手の喧嘩を意味するだけでなく、LVMHのトップに立つ人物との提携の可能性についても言及したものである(実際にはLVMHグループの総会で中止された)。
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ホワイト・ライブズ・マター
カニエ・ウェストがイベントで着用したTシャツの背面には「White lives matter(ホワイト・ライブズ・マター)」というスローガンが書かれており、前面にはローマ法王ヨハネ・パウロ2世の肖像画も描かれていた。不思議なことに、ドナルド・トランプに近いアメリカの政治評論家キャンディス・オーエンスも、アメリカの反人種差別運動「ブラック・ライブズ・マター」のスローガンをもじった作品を着用していた。これには、当然強い反響が起きた。とりわけ、カニエ・ウェストの元妻であるキム・カーダシアンは、「この選択に嫌悪感を抱いたけれど、注目を集めたいというこの欲求には驚かなかったわ」と述べたと、「Hollywood Life(ハリウッド・ライフ)」は報じている。
ショーが始まると、YEEZYシーズン9は、セーター、ジャケット、オーバーサイズのダウンジャケット、不穏な目出し帽、レギンスなど、曖昧な都会的イメージを持つシルエットを発表した。Hood by Airの創設者であるシェイン・オリバーとのコラボでデザインされたルックには、3Dプリントされたブーツが添えられていた。ビジュアルは、これまでのコレクションとあまり変わらない。
“White Lives Matter” #YZYSZN9. The Pope is on the front. pic.twitter.com/kVJRqeOUhV
— Vanessa Friedman (@VVFriedman) October 3, 2022
“ White lives matter(ホワイト・ライブ・マター)” #YZYSZN9 前面にローマ法王が描かれている。
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ナオミとノースの合唱
前日、カニエ・ウェストのInstagramアカウントには、ビヨンセ、ジゼル・ブンチェン、ローリン・ヒル、リアーナからなる豪華なキャストの写真が登場した。当日は、ナオミ・キャンベル以外の有名人の顔はなく、リック・オウエンスの恋人のミシェル・ラミーやジバンシィのクリエイティブディレクターのマシュー・M・ウィリアムズなど、意外なモデルが参加していた。モデルのステップに合わせて、ラッパーの合唱団「ドンダ」の子どもたちが、彼のヒット曲を歌った。
父のリミックス曲に合わせて9歳のノース・ウェストもコーラスに参加。しかし、出演モデルも子どもたちの歌声も、カニエ・ウェストの武骨さを和げることはない。すべての音楽が癒しになるわけではないのだ。
text: Mitia Bernetel (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi