年末年始も美術館へ! いま気になる展覧会4選。

Culture 2022.12.25

年末年始、心を落ち着け新たな活力と視点をもらいに美術館へ詣でるのはいかがだろう? 19世紀パリの洒脱な木版画から写実性の高い絵画、現代性を持ったテーマに挑むプロジェクトに、アートによる作家同士の対談の様な企画まで……。いま気になる展覧会をピックアップ!

黒と白の版画が描きだす、パリの人間模様。

『ヴァロットン―黒と白』

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19世紀末、パリの街で観察した社会の暗部や複雑な人間模様を独自の辛辣な視点で描いたスイス生まれの画家ヴァロットン。本展ではその作品世界を象徴する黒一色の革新的な木版画に焦点を当てる。なかでも男女関係の不協和音を暗示する10の場面を描いた連作『アンティミテ』は、単純化された人物と装飾的な調度品の描写によって、密室の秘め事の親密な空気感を表現して魅惑的だ。また6点の連作『楽器』ではフルート、チェロ、バイオリン、ピアノ、ギター、コルネットを演奏する音楽家たちを描いた。ほぼ漆黒が埋め尽くす画面に楽器と人物のシルエットが仄かに浮かび上がる構図の巧みさに唸らされる。1894年に設計されたこの美術館ならではの親密な室内とのバランスも絶妙だ。

『ヴァロットン―黒と白』
会期:開催中〜2023/1/29
会場:三菱一号館美術館(東京・丸の内) 
営)10:00〜18:00 ※金、第2水曜、最終週の平日〜21:00
休)月、12/31、2023/1/1 ※12/26、2023/1/2、9、23は開館
料)一般¥1,900

●問い合わせ先:
tel:050-5541-8600(ハローダイヤル) 
https://mimt.jp/vallotton2

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不在の対象をも描きだす写実絵画の本質。

諏訪敦『眼窩裏の火事』

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緻密で再現性の高い画風から写実絵画の第一人者と目される諏訪敦は、単に「実在する対象を眼に映るとおりに写す」写実性とは一線を画する意欲的な取り組みを行ってきた。画家としては異例なほど、丹念な調査と過剰ともいえる取材をもとに、眼では捉えきれない題材に肉薄し、新たなテキストとして提示する。終戦直後に満州で病死した祖母について亡父の手記を手がかりに取材したプロジェクト『棄民』。コロナ禍に着手した静物画の探求。そして1999年から描き続けた大野一雄の没後、気鋭のパフォーマー川口隆夫の協力を得て亡き舞踏家の召喚を試み、異なる時間軸を生きた対象を写し描く意味を再検討した肖像画。これらの作品から「視ること、そして現すこと」を問い続ける、創作の本質に迫る。

諏訪敦『眼窩裏の火事』
会期:開催中〜2023/2/26
会場:府中市美術館(東京・府中) 
営)10:00〜17:00
休)月、12/29〜2023/1/3、10 ※1/9は開館 
料)一般¥700

●問い合わせ先:
tel:050-5541-8600(ハローダイヤル)
www.city.fuchu.tokyo.jp/art/tenrankai/kikakuten/2022_SUWA_Atsushi_exhibition.html

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女性声優の「声」を巡る違和感の検証。

『百瀬文 口を寄せる』

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不均衡な社会構造やコミュニケーションに対して自他の身体から生まれる違和感や問題意識、セクシュアリティやジェンダーを巡る問いや欲望をテーマに、主にフィクションと事実を織り交ぜた映像作品やパフォーマンスを通して考察してきた百瀬文。これまで、ろう者との対話、戦時性暴力、人工中絶、鍼灸による対話といったテーマを掘り下げてきた。本展では、女性の声優特有の「声」をアニメーション映像と切り離し、性別を超えた流動的な存在として検証する新作サウンドインスタレーション『声優のためのエチュード』などを展示。存在していながら、なきものとして抑圧され、さまざまな身体を行き来する「声」に向き合う展覧会となる。

『百瀬文 口を寄せる』
会期:開催中〜2023/6/4
会場:十和田市現代美術館(青森・十和田) 
営)9:00〜17:00
休)月、12/27〜2023/1/1、1/10〜19 ※1/2は開館
料)一般¥1,800

●問い合わせ先:
tel:0176-20-1127
https://towadaartcenter.com

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ふたつの文化圏から生まれる虚構と現実。

『訪問者』クリスチャン・ヒダカ&タケシ・ムラタ展

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ともに日本にルーツを持つヒダカとムラタは日本の文化や言語と一定の距離を持つ。英国で育ったヒダカはだまし絵の手法を用い、中世の迷路のような展示空間に西洋美術と日本文化の引用をちりばめた絵画とフレスコ絵画のようなカゼイン(ミルクプロテイン)テンペラの壁画を施した。米国で育ったムラタは動画圧縮時のエラーを用いて視覚的効果を与えるグリッチアートの先駆者として知られ、本展ではデジタルメディアを駆使したアシッドなイメージを通して独自のリアリズムを追求。虚構と現実の狭間を問うふたりの作品世界を訪問する私たちは、時にうっとりと幻想的な、時に歪な悪夢のような独自のフィクショナルな構造に巻き込まれていく。

『訪問者』クリスチャン・ヒダカ&タケシ・ムラタ展
会期:開催中〜2023/1/31
会場:銀座メゾンエルメス フォーラム(東京・銀座) 
営)11:00〜19:00
無休
入場無料

●問い合わせ先:
tel:03-3569-3300 
www.hermes.com/jp

*「フィガロジャポン」2023年2月号より抜粋

text: Chie Sumiyoshi

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