「人生最後に食べたいもの」を実感した人々の一皿とは?

Culture 2022.12.25

演劇界の異才が代表作でついに小説デビュー。

『今、出来る、精一杯。』

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根本宗子著 小学館刊 ¥1,760

人と人のわかりあえなさに絶望したことがあるなら根本宗子の描く世界はきっと刺さるのではないか。19歳で演劇ユニットの月刊「根本宗子」を旗揚げ。脚本、演出を手がけてきた。初期の代表作であり、再演を重ねた本作で、ついに小説デビュー。東京都三鷹市にあるスーパー、ママズキッチンのバックヤードを舞台にした男女12人の、期待しては傷つき、空回りして、それでも関わろうとする感情の応酬を解像度の高い言葉で描き出す。

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喪失と再生を描いてきた作家が辿り着いた到達点。

『もう行かなくては』

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イーユン・リー著 篠森ゆりこ訳 河出書房新社刊 ¥3,740

3人の夫に先立たれ、5人の子どもを育て、17人の孫を持つリリアは81歳。まずまずの人生を送ってきたといえるが、長女を自殺で亡くした喪失感を抱えて生きてきた。かつて愛した男の日記に毒舌の書き込みをしながら、自らの人生を辿り直す。分かち合えなかった喜びや悲しみを孤独と呼ぶこともできるけれど、それでも生き抜いてきたいまが対岸の景色をまた違う光で照らし出す。喪失を描いてきた作家の新たな到達点といえる傑作。

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料理を通して見えてくる、危機の時代を生き抜く力。

『ベイルート961時間(とそれに伴う321皿の料理)』

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関口涼子著 講談社刊 ¥1,760

レバノンの首都ベイルートは戦禍をくぐりぬけ、近年また危機に瀕した街だ。人生の最後に食べたいものは何か。現地でこの質問をすると、彼らが一度はそれをリアルに考えたことがあることがわかるという。他民族国家で食文化が入り交じるこの地で食について語ってもらおうとすれば、その人の人生を紐解くことになり、一皿の料理に歴史が潜んでいる。危機の時代に食の持つ力をあらためて思い起こさせるルポルタージュエッセイ。

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ジェーン・グドールと語る、私たちの選択が変える未来。

『希望の教室』

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ジェーン・グドール、ダグラス・エイブラムス著 岩田佳代子訳 海と月社刊 ¥1,760

レオナルド・ディカプリオが「この地上で最も影響力のあるリーダーのひとり」と言い、グレタ・トゥーンベリも「本物のヒーロー」と賛辞を惜しまないのが現在88歳の動物行動学者ジェーン・グドール。ひとりの人間が起こしたアクションが、どんな変化をもたらすか。自らの経験と貴重なエピソードを惜しみなく語った本書では、自然の持つ回復力を信頼し、私たちの選択と行動が変われば、いまからでも現実を変えることができることを示唆してくれる。

*「フィガロジャポン」2022年8月号より抜粋

text: Harumi Taki

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