USジャズにおける、最も注目すべきミュージシャンとは?
Culture 2023.02.20
ソウルフルなビートを叩くキーパーソン。
『ウィー・ダ・ピープル』/エマニュエル・ハロルド
USジャズにおける、最も注目すべきミュージシャンのひとりといっていいだろう。本作にも参加している、グレゴリー・ポーターのグラミー賞受賞作『オール・ライズ』を支えたドラマーが、ついにその才能を全開にしたソロ作品を発表した。キーヨン・ハロルド、マルコム=ジャマル・ワーナーなど、シーンのキーマンたちも参加している。ここでは狭義のジャズにとどまらず、R&B、ファンク、ゴスペル、ヒップホップといったさまざまなブラックミュージックの要素をふんだんに取り入れ、アルバム全体を独自の手さばきで雄大なグルーブを作り上げている。
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ダークながらスタイリッシュな歌の世界。
『インターナル・ワーキング・モデル』/リエラ・モス
アレキサンダー・マックイーンのTシャツにプリントされるくらい、ファッションアイコンとしてもカリスマ性を持つシンガーのサードアルバム。ザ・デューク・スピリットという、オルタナティブロックを奏でるバンドでも活動するだけあって、圧倒的な存在感を持つ歌声ではあるが、エレクトロなテイストのひんやりとしたトラックにうまく溶け込ませているのが特徴。ニューウエーブのレジェンドであるゲイリー・ニューマンや、ジョージ・ハリスンの長男ダーニ・ハリスンなどの参加も話題になっているが、クールながらも鋭敏さを兼ね備えた存在感が見事だ。
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社会的メッセージを込めた熱いセッション。
『コネクテッド』/リッチー・グッズ&チェンチェン
アリシア・キーズやコモンなどのバンドで活躍経験のあるベーシストと、台湾出身でニューヨークを拠点に活動するヴィブラフォン奏者とのデュオ名義のアルバム。なんともユニークな組み合わせなうえに、日本からもBIGYUKIが参加し、スケールが大きくスペイシーなサウンドスケープを構築している。アフリカンアメリカンやアジア人としてのアイデンティティをテーマにしており、ブラック・ライブズ・マターやヘイトクライムといった問題を楽曲に盛り込んでいることも非常に重要だが、何よりも人種の垣根を取り払ったエモーショナルな演奏に心が躍る。
*「フィガロジャポン」2023年3月号より抜粋
text: Hitoshi Kurimoto