いくつ知ってる? 2023年に話題になりそうな5つの新語。
Culture 2023.04.05
アメリカのDay Oneが2023年を象徴すると見込まれる現象を表す新語の一覧を発表した。
Al-nxiety、fratigue、Tiktokocene、trendflation、re-economy。アメリカのPR会社Day Oneが作成した2023年のトレンド予測報告書にはこうした言葉が並ぶ。photography: Getty Images
今年1月、アメリカのPR会社Day Oneが用語集とトレンド予測を兼ねた2023年の「プレディクショナリー」を発表した。メディアと影響力を専門とする同企業は、今年1年の間に流行すると予想される現象や行動様式を簡潔に言い表す新たな語を作り出し、新語のリストとその定義をレポートで発表した。その中身を見てみよう。
1. AI-nxiety
「AI-nxiety」(人工知能によって喚起される不安)という概念がとりわけ適合するのは、いままさに多くの人々を魅了し、同時に不安も掻き立てているChatGPTだ。2022年11月末にカリフォルニアのスタートアップ企業OpenAIがオンライン上でリリースして以来、世界的ヒット中の会話ロボットは多くの人を魅了しているが、同時に、出版業界や教育関係者らをはじめ、一部の懸念も呼んでいる。
作文や本の要約もできる(つまり、人間が書く文章を模倣できる)ChatGPTは、「AI-nxiety」の要因となりうる典型的な例。これは人工知能がさまざまな場面で利用されることに対する不安感を指す言葉で、「私がいま見ているのは人間が作ったものなのか、それとも機械が作ったものなのか?」という問いに端的に表れる。
この不安は文章だけでなくイメージにも当てはまる。やはりOpenAIが開発したMdjourneyやDall•eのような驚くべきソフトウェアは、文章や口述されたフレーズから精度の高い画像を生成する。この現象はアートの世界に変革をもたらしつつある。
また皮肉にも、不安障害やうつ病の前兆を検出する予防ツールとしての人工知能の利用価値も、しだいに認知されるようになっている……。要するに、ビジネス、政治、芸術、そして医療という分野でも、ロボットが持つ潜在的可能性をめぐって、激しい議論が交わされている最中なのだ。
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2. Fratigue
プリークェル(前日譚)、シークェル(後日譚)、リブート——これらはどれも映画やドラマ、テレビゲームなどのひとつの作品から派生した作品を表す用語だ。「franchises(フランチャイズ映画)」と「fatigue(疲労)」を短縮した造語「fratigue」は娯楽作品から関連コンテンツが次々と生まれる状況に対して、視聴者やネットユーザーが感じる倦怠感を指す。
2021年に公開された『ウエスト・サイド・ストーリー』リメイク版や、2022年の『トップ・ガン マーヴェリック』、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』など、フランチャイズ映画の増殖はコロナ禍以後のハリウッド映画産業を特徴づける現象となっているだけに、さもありなんといったところ。
ブルームバーグの記事によれば、こうしたコンテンツがいやというほど氾濫する現状を前に、Day Oneはハリウッド映画スタジオに「節制時代」の到来を期待しているという。
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3. Tiktokocene
この言葉のもとになっている Anthropocene(人新世)は、地質学的観点から見た現代を指す用語で、人類が環境に与える影響が地球規模に及ぶ時代を意味する。
Tiktokoceneとはすなわち、TikTokが文化において支配的かつ長期的な影響を及ぼす新しい時代を表す。しかも、たとえ中国発のこのアプリが消滅することがあっても、影響は継続する。TikTokは政治においても音楽においても、人々が自分の趣味や志向を発見、定義、主張する方法に大きな革命をもたらしたのだ。
TikTok新世という説を支持する最も説得力のある論拠は、音楽産業。音楽業界では2016年に誕生したこの動画アプリが、流行を左右するほどの影響力を持っている。TikTokのミュージッククリップのおかげで、世間に知られずに消え去っていたであろう楽曲がいまや数千万回もの視聴回数を記録している。スコットランドの郵便配達員ネイサン・エヴァンスがカバーした船乗りの歌や、マルセイユのグループ「キッド・フランチェスコーリ」がその一例。そして、こうした楽曲が国際的な名声を獲得するに至っている。TikTokも音楽動画配信に特化したチームを設けており、今後、この動画アプリがミュージシャンにとって活躍の足がかりとなる可能性もある。こうした理由から、TikTokはいまや音楽レーベルのマーケティング戦略の中心に位置付けられている。
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4. Trendflation
SNS上で流布するまやかしの予言には要注意。とりわけ、いまやトレンド予測が主要な収益源となっているTikTokには気をつけよう。パンデミックの間にネットの利用時間が急激に伸び、それに伴いナンセンスな情報をまことしやかに伝えるメディアエコシステムが膨張した、とDay Oneは分析する。結果的に実態を伴わない一過性の現象で終わる可能性もある、こうした偽りの「トレンド」の「インフレ」的な影響を過大評価するのは危険だ。
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5. Re-conomy
エコロジカルな動機によるのではなく(表向きにはそうしたメッセージを掲げていても)、経済的成長という目的のためにセカンドハンドを謳い文句にする、一種のごまかし。2023年、再販プラットフォームSheinのようなグリーンウォッシュのために中古品を利用するファストファッション企業に注意するよう、Day Oneは呼びかけている。同社はまた、2022年10月にコンサルティンググループBCGが公表した報告書をもとに、2020年以後、再販事業の市場規模が3倍に拡大したことも指摘している。
長い間尻込みしていたハイブランドも、再販市場に参入しはじめている。ハイブランドの多くは、10年前から中古ブランド品を広めてきたオンライン委託販売業者TheRealRealと業務提携を結んでいる。2022年9月にイギリスの百貨店チェーンのセルフリッジズは、2030年までに修理品、再販品、レンタルによる売上を全体の半分にまで引き上げていく方針を発表した。こうした動きに、ヴィンテージショッピングの発展が、過剰消費を助長し続けるという落とし穴に陥る可能性もあるとレポートは言及している。
text: Annabelle de Cazanove (madame.lefigaro.fr)