KYOTOGRAPHIE 2023 11th Edition 対象の"時間の幅"を捉える、独特の距離感と眼差し。

Culture 2023.04.27

京都を舞台に開催される国際的な写真祭KYOTOGRAPHIE。初開催から11周年を迎えた今年のテーマは、BORDER=境界線。今回の展覧会に出展した6人の女性アーティストにインタビュー、彼女たちが向き合う“境界線”とその表現に迫る。


Yuhki Touyama

1983年生まれの写真家・頭山ゆう紀は、石内都との出会いからこれまでをこう振り返る。

「18歳の時、沖縄で行われた石内さんのワークショップに参加したのが最初の出会いです。その後、2006年にはリクルートのガーディアン・ガーデン主催の『ひとつぼ展』に応募した作品を石内さんが評価してくださいました。さらに、私の写真集の帯文を書いていただいたり、展覧会に来てくださったりと交流が始まりました。昨年の夏、片山真理さんに推薦していただき、群馬のアーティスト・イン・レジデンスのプログラムに参加させていただいたんですが、苦手だと思っていた滞在制作に挑戦していた時に、群馬在住の片山さんと石内さんが訪ねて来てくれて……。15時半の終バスで、嵐のように去っていきました」

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シリーズ『境界線13』より ©Yuhki Touyama

今回のKYOTOGRAPHIEで展開されるのは、世代を超えたふたりの写真家による対話的なエキシビション。石内の作品とのダイアローグのように配される頭山の作品群は、どのようなアプローチで生まれてきたのだろうか。

「祖母の介護をしながら写真を撮っていました。祖母が亡くなってから、冷たくしてしまったんじゃないか、もっと気持ちに寄り添ってあげられたんじゃないか、一方的で会話が足りなかったんじゃないかと後悔することがたくさんありました。もう祖母はいないし、答えは返ってこないけど、こうして写真を通して対話を続けていくことで、個人的な体験を超えていくかもしれない。それは石内さんの『Motherʼs』とも似ていると思います」

昨年、祖母を看取った後、母が急逝したという。祖母と母に育ててもらったと言っても過言ではない彼女にとって、重要人物ふたりを続けて亡くしたことになる。最近は、母についての写真も撮り始めている。先日は母が生まれ育った山口県にある実家の近辺を、叔父の案内で初めて訪れた。

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新シリーズより ©Yuhki Touyama

「海の目の前で育ったなんて、まったく知らなかった。なんでもひとりでやってしまう姉御肌で、自分の話をほとんどしない人でした。亡くなったのは突然のことで、心の準備もなかったから、昔の話を聴く機会もありませんでした。これから長い時間をかけて、母がいた風景や母個人のことと、写真を通して向き合っていきたいです」

本展の展示構成は、石内と頭山それぞれの個展と、ふたりの作品をミックスして展示する空間が設けられるのが特徴だ。京都の大店町家特有の空間も、これまでにないユニークな要素となる。

「ミックスの展示室の壁紙として、祖母の家のカーテン越しに庭を撮った作品を設えます。石内さんは『Motherʼs』の撮影当初、窓を背景に撮影をされていたそうです。石内さんの作品と私の作品を一緒に展示することで、見え方が変わって新しい発見もあるかもしれません」

頭山が被写体に対峙する姿勢には独特の距離感がある。瞬間を切り取るのではなく、まるで歴史のアーカイブのようにデリケートな触れ方で対象に向き合い、過去から現在に続く時間の幅を捉えようとする。そのタッチが石内の作品世界と触れ合う空間がとても楽しみだ。


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新シリーズより ©Yuhki Touyama

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頭山ゆう紀
1983年、千葉県生まれ。主な出版物に『境界線13』(赤々舎刊2008年)、『さすらい』(abp刊08年)、『THE HINOKI Yuhki Touyama 2016−2017』(THE HINOKI刊 17年)、『超国家主義−煩悶する青年とナショナリズム』(中島岳志著、頭山ゆう紀写真/筑摩書房刊18年)など。

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A dialogue between Ishiuchi Miyako and Y uhki Touyama
『透視する窓辺』

With the support of KERING’S WOMEN IN MOTION
誉田屋源兵衛 竹院の間
京都市中京区室町通三条下ル 西側
料)一般¥1,000

KYOTOGRAPHIE
京都国際写真祭 2023

『BORDER』
●開催中〜5/14
www.kyotographie.jp

*「フィガロジャポン」2023年6月号より抜粋

text: Chie Sumiyoshi

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