世界最高峰のダイヤモンドにも注目!英国王の戴冠式。

5月6日に行われる、英国王チャールズの戴冠式。

え?もうすでに王になっているのに今から戴冠式なの?と思われるかもしれない。だが王族はこれまで故エリザベス女王崩御の喪に服していたために、新王のお祝い行事である戴冠式は即位から少し時間を開けて行われるのだ。

王室のビッグイベントには毎回コードネームが付けられていることでも知られているが、今回は「オペレーション・ゴールデン・オーブ(黄金の宝珠作戦)」とされている。

歴代の王の戴冠式は1308年から伝わる「リベル・レガリス」という文献に基づいて執り行われることになっているが、今回はそこに記された伝統を重んじつつも時代に即し現代的な式典となると言われている。

6日当日は午前11時の式開始に先立って、チャールズ王はカミラ王妃とともに、騎兵隊を伴ってダイアモンドジュビリー・ステートコーチと呼ばれる馬車で式が行われるウェストミンスター寺院に向かう。この馬車はその名の通り、故エリザベス女王がダイアモンドジュビリーを迎えた際に作られ、以降外国からの要人のための行事などでも使用されてきたものだ。

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モダンながらも豪華なダイアモンドジュビリー・ステートコーチ。
Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2023.

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これまで国王は戴冠式の際に中世の衣服を思わせる膝丈のパンツとシルクの白いストッキングの装いが決まりだった。しかし今回チャールズ王は軍服を着用すると言われている。カミラ王妃は彼女の親しい友人でもあるデザイナーのブルース・オールドフィールドが手がけたドレス姿とされている。

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ジョージ5世の戴冠式の写真をみると、王は膝丈パンツと白いストッキング姿なのが分かる。メアリー王妃の王冠は今回カミラ王妃の頭上を飾る。
Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2023.

王が纏うコロネーションローブは毎回新しく作られるのが習わしで、今回も例外ではない。その詳細はまだ明らかにされていないが、これまでの王たちのものに比べて短いのは確かなようだ。とはいえキャサリン妃のウェディングドレスの刺繍でも知られるロイヤル・スクール・オブ・ニードルワークの熟練した職人たちの手による豪華な刺繍が施されているのは間違いないだろう。

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ジョージ6世、エリザベス女王の戴冠式の写真。画面に入りきらないほどローブが長い!
Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2023.

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戴冠に先立って、王はまず聖油の儀式を受ける。式を執り行うカンタベリー大司教が、大鷲を模した聖油入れアンプルのくちばし部分からコロネーションスプーンに聖油を入れ、王の手、胸、頭に塗油する。コロネーションスプーンは12世紀から伝わるもので式典で使われる宝飾品のなかではもちろん、王族が現在も所有する金製の宝飾品のなかで最も古い品だという。この場面はエリザベス女王の際は天蓋で隠されて放映されなかった。今回も同様ではないかと言われている。

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金色に光り輝くアンプルとコロネーションスプーン。
Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2023.

その後、王はエドワードの椅子とも呼ばれているコロネーションチェアに腰掛け、ソブリンズ・オーブやソブリンズ・セプター・ウィズ・クロスなどを授かる。

オーブは王の権力を示し、キリスト教を象徴する十字架が地球を照らすさまをシンボライズしている。ダイアモンド、パール、エメラルド、ルビー、サファイヤで飾られ、重さは1.32キロあるという。

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ソブリンズ・オーブ。
Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2023.

セプターもまた王権を表す。1661年のチャールズ2世の戴冠式の際に作られ、1911年にジョージ6世がトップにあしらわれているダイアモンドを付け加えた。無色透明のものでは世界一の大きさとされている「カリナンⅠ」別名「アフリカの星」で、530.2カラットある。

カリナンとは1905年に南アフリカで発掘された3,106カラットの巨大なダイアモンドでエドワード7世に献上された。その後9つにカットされ、それら「カリナンⅠ」から「カリナンⅨ」は現在もすべて王家所有となっている。

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ソブリンズ・セプター・ウィズ・クロス

Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2023.

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チャールズ王が頭上に戴くことになるセント・エドワーズ・クラウンはもっとも重要な王冠とされ、王の戴冠式にのみ使用される。1661年に作られた金無垢でルビー、アメジスト、サファイヤが輝く。重量は2.07キロ。この重さに慣れるために、故エリザベス女王は戴冠式前に小麦粉の袋を頭に載せて歩く練習をしたという逸話が残っている。

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セント・エドワーズ・クラウン
Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2023.

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1953年の戴冠式でセント・エドワーズ・クラウンを戴く直前のエリザベス女王。
Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2023.

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カミラ王妃はクイーン・メアリーズ・クラウンを戴く。1911年に行われたジョージ5世の戴冠式でメアリー王妃のために制作された王冠だ。1761年のシャーロット王妃以降続いていた王妃が王冠を新調するしきたりに終止符を打つことになる。2,200個のダイヤモンドとともに「カリナンⅢ」「カリナンⅣ」「カリナンⅤ」が今回特別に取り付けられている。これら3つのダイアモンドは故エリザベス女王がブローチとして愛用していたことでも知られており、故女王へのオマージュとも言えそうだ。

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クイーン・メアリーズ・クラウン
Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2023.

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チャールズ王がウェストミンスター寺院を去る際の王冠はインペリアル・ステート・クラウンだ。1937年のジョージ6世の戴冠式の際に作られたもので、世界で二番目に大きなダイアモンド「カリナンⅡ」や「ブラックプリンスのルビー」、「セント・エドワーズ・サファイア」などの有名な宝石とともに2,868個のダイアモンド、17個のサファイヤ、11個のエメラルド、4個のルビー、269個のパールが飾られている。

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インペリアル・ステート・クラウン。王室ご用達の宝飾店ガラードが制作。
Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2023.

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戴冠式後に宮殿のバルコニーに立つエリザベス女王。ここでもインペリアル・ステート・クラウンが。女王の右にいるのは幼い頃のチャールズ王。
Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2023.

終了後にチャールズ王とカミラ王妃はゴールド・ステート・コーチでウェストミンスター寺院からバッキンガム宮殿に戻る。1831年のウィリアム4世以来、歴代の王の戴冠式の際には常に使用されている、その名の通り金の馬車だ。4トンも重さがあるため8匹の馬たちが牽引しながらも、速度は歩くくらいの速さになるという。

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御伽話に出てくる馬車そのもの。ゴールド・ステート・コーチ。
Royal Collection Trust / © His Majesty King Charles III 2023.

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英国史上初めてテレビ中継された1953年のエリザベス女王の戴冠式の映像を見ると、白黒ながらも宝石がきらびやかに輝き絢爛豪華なのがわかる。

 

 

それに比べると今回はモダンかつ簡略化される予定だが、王冠をはじめとするコロネーション・レガリアと呼ばれる宝飾品の数々の輝きは失われることはないだろう。そして王室に伝わる世界最高峰のダイヤモンド「カリナン」のⅠからⅤまでが重要な役割を果たしているのも見逃せない。

text: Miyuki Sakamoto

在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。

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