ウィリアム皇太子を悩殺した、キャサリン妃のシースルードレス。
Culture 2023.04.29
名門セント・アンドルーズ大学の同級生だったふたりが恋に落ちるきっかけを作ったのは一着のドレスだった。思いがけない運命を引き寄せたドレスの話をしよう。
カナダ・ケロウナ訪問時のウィリアム王子とキャサリン妃。ふたりの仲良しっぷりはいまも昔も変わらない。(2016年9月27日)photography: Shutterstock/Aflo
いまから21年以上前の2002年3月26日、セント・アンドルーズ大学の学生たちは大忙しだった。その晩には年に1度のチャリティイベント、第10回「ドント・ウォーク」ファッションショーが開催されることになっていた。このイベントは服のデザインからショーの運営、モデルのキャスティングに至るまですべてを学生たちが手がけており、モデルに応募した学生のひとりがキャサリン皇太子妃だった。
当時20歳のキャサリン皇太子妃は美術史を学ぼうと前年秋に入学したばかりだった。まさか一年も経たないうちにランウェイを歩くことになるとは本人も思っていなかっただろう。ましてや、この体験が本人の運命とイギリスの歴史を変えることも。キャサリン皇太子妃がシースルーのドレスでランウェイに登場すると、観客席にいた友人のひとりは感嘆の声をあげた。それはウィリアム皇太子だった。
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「なんてセクシー!」
キャサリン皇太子妃が着用したシースルーのドレスは「誘惑の技法」というショーのテーマのひとつに沿って学生のシャーロット・トッドが作ったものだ。デザイナーの卵が自室でせっせと仕上げたこの服は、透かしのはいったシルクメッシュの生地を2本のストレッチウールブレードと青緑色のリボンで縁取ったもので、もともとはスカートにする予定だったものがドレスとなった。
ファッションショーで、キャサリン皇太子妃は黒いブラショーツの上に着用して登場した。なお、キャサリン皇太子妃はほかの服のモデルも務めており、たとえば白いブラとウェストに巻いたパレオといった組み合わせも披露している。
シャーロット・トッドはキャサリン皇太子妃を直接知らなかったようだが、2011年のドキュメンタリー映画『When Kate Met William, A Tale Of Two Lives(ケイトがウィリアムと出会った時、ふたつの人生の物語)』では、自分の服を着た女性は、ウィリアム皇太子が観客でいることを意識し、「何か考えがあった」のかもしれない、という意見を述べている。
「なんてセクシー!」とウィリアム皇太子はキャサリン皇太子妃が目の前を通った時に友人に思わず言ったそうだ。王室ジャーナリストのケイティ・ニコルが2011年に出版した『The Making of a Royal Romance(王室ロマンスの舞台裏)』にそう書かれている。その晩同席していた親しい友人たちも皇太子の反応をそう証言している。大学1年生の頃はただの友人だったと本人たちはいまも言っているそうだが、ふたりがこのファッションショーの晩に初めてキスをしたのではないかという噂もある。いずれにせよ、このシースルードレスでのウォークが、ロイヤルラブストーリーの出発点として伝説に刻まれた。
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落札額は78,000ポンド。
このドレスの話はまだ続く。ウィリアム皇太子とキャサリン皇太子妃が正式に付き合いはじめるようになると、このドレスを着ておへそを見せながら歩くカールヘアの若き「ケイト・ミドルトン」の写真がイギリスのタブロイド各紙の誌面を飾った。ロイヤルウェディングのマスコミ効果に乗じてシャーロット・トッドは2011年春、このドレスを自分のコレクションの「マスターピース」にする形で再販を試みるが、不人気に終わる。最終的にこのドレスは王室関連の服のオークションにダイアナ妃のドレスなどと並んで出品された。ロンドンでのオークション会場では、謎のバイヤーがその場にいた代理人を介して電話で入札をおこなった。代理人は20,000ポンドが上限という指示を受けていたものの、最終的に78,000ポンドで落札した。シャーロット・トッドがドレスの制作に費やした金額はたかだか30ポンドほどだった。落札後、代理人はテレグラフ紙の記者に、オークションにウィリアム皇太子もからんでいたことを語り、謎のバイヤーの正体を匂わせた。
あのドレスはいま、キャサリン皇太子妃の手もとにあるのだろうか? 謎は謎のままだ。いずれにせよ、キャサリン皇太子妃がその晩のことを忘れていないことは確かだ。
2012年、セント・アンドルーズ大学の学生たちとの夕食会で、キャサリン皇太子妃はこう口を滑らせている。「ファッションショーに参加しないほうがいいわよ。何を着せられるかわからないからね!」と。
text: Mitia Bernetel (madame.lefigaro.fr)