セックスレスは心配すべき? そのメカニズムとは?

Culture 2023.06.30

愛し合い、幸せでも、ほとんどあるいはまったくセックスをしないカップルたちがいる。彼らの証言と専門家の見解をまとめたフランスの「マダム・フィガロ」のリポートを紹介しよう。

230613-sexless-01.jpgセックスレスはカップルの危機? photography: Shutterstock

ヴァレンティーヌがパブロと出会ったのは20歳の時。当時、ふたりは別々の国に住んでいた。その後、ヴァレンティーヌはパブロと生活をともにするために家族、仕事、友人を祖国に残して彼の元へと旅立った。10年経ったいま、ふたりはかわいい娘に恵まれ、相変わらず幸せだ。しかし、ひとつ変わったことがある。それは夫婦生活の頻度がずいぶんと減ってしまったことだ。

それは、娘の誕生とともに徐々に起こった。出産直後のヴァレンティーヌは性欲があまりなく、痛みを感じることを恐れていた。そして、あることをきっかけに、ふたりは疲弊し、赤ちゃんや日常生活に追われ、スキンシップも減っていった。「昔は、仕事から帰ってきたら家の中ではふたりだけ。いまよりももっと愛し合える雰囲気でした。いまも欲求がないわけではないけれど、それ自体の存在感が薄れ、何よりも、体力がほとんど残っていないのです」と、30歳のヴァレンティーヌは言う。

多くの人がそれマイナスに捉えがちだが、ふたりはセックスの回数と反比例して、親密さや快適さが増したと語る。
ふたりの間に恥じらいはまったくなく、スキンシップが絆を強くしていると彼女は語る。「ふたりだけの時間を持つために、冬は家の近くにある温泉によく行きます。一緒にお風呂に入ったり、抱き合ったり、愛情表現はたくさんしますが、それが単純にセックスには繋がらないのです」

ふたりはこの状況が特に問題だとは考えていない。「それについて話すことはありますが、それが恥ずかしいことだとか、どうにかしなければならないことだとか、大ごとだとは捉えていません」。頻度が低いこと自体はどこか「自然」とさえ感じている、とヴァレンティーヌは続ける。「私たちカップルを繋げているものはそれ以上にもたくさんあります! とても仲が良いですし、たくさんのことを一緒にします。彼ほど私のことを理解している人はほかにいません。落ち込んでいる時にどうやって私を支えるかを知っていて、前進させてくれます。彼にはすべてを話せます」

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“セックスはカップルの基盤を作る時間だ”

マンネリのせいで相手に対する欲望が薄れたり、セックスが完全になくなったりしても、その人のいない人生なんて考えられない、と言うカップルはほかにもいる。交際相手を限定する形をやめて、“外で”別の関係を持つことで気晴らしをしている人もいる。それぞれの形があるわけだが、彼らに性生活について質問すると、そろって「それで問題ない」と答える。

これは意外な感覚だ。通常、性欲の減退は心配の種になる。社会学者のジャン=クロード・コフマン(1)は、セックスは現代のカップルの中心的な位置を占めており、多くの場合、それがカップルの出発点だと指摘、「セックスは、象徴性を強く帯びたカップルの基盤となる瞬間なのです」とまとめている。
「出会った最初の頃は、相手はまるで発見したばかりの新大陸のようなもの。セックスによってパートナーとの融合を感じることができるのです」と精神科医のフロロンス・ロトレドゥは続ける。セックスには、実に多くのことが賭かっているのだ。

ヴァレンティーヌも、出会った当時は週に3回ほどセックスをしていたそうだ。しかしお互いに慣れてくると、大きな出来事や子どもの誕生などによって欲望は薄れていく。このような状態で本当にカップルと言えるのか、雑誌に載っているような定期的で“普通の”性生活がないことについて疑問に思ってしまう人は多い。しかし、それらの疑問をヴァレンティーヌは一蹴する。「ほかのカップルと同じであるために、無理をしたくはありません」

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穏やかなカップルというモデル

「カップルによっては、セックスは中心的なものではなく、夫婦の生活の中にたくさんある要素うちの一つでしかない場合もある」とクロード・コフマンは分析している。「セックスはカップルの絆の証」という思い込みで、欲望からよりも安心のために性交を「必要なものとしてやり遂げる」カップルもいる。問題の解決をアウトソーシングして、外で関係を持つ人もいる。また、“情熱的”ではなく“穏やかな”カップルであることを受け入れ、お互いをサポートする“よきパートナー”であることに重点を置く人もいる。

それはセックスよりも安心感が優先される愛の形だとフロロンス・ロトレドゥは分析する。安心感を与えてくれる結婚生活にするには、セックスと結婚生活をまぜこぜにしないことが最も効果的な方法ではある。性は「緊張を生み、想像力を必要とし、魅力的であり続ける努力や自分自身のケアを必要とします」と精神科医は指摘する。要は多くのエネルギーを必要とするのだ。しかし、無意識のうちに興奮を取り除いた時、すべてはシンプルになる。
それは自分の親のあり方を再現するということでもある。つまり、「性的な要素がない家庭。正常な家庭であれば、親は子どもの前では性行為はしませんから」と彼女は強調する。ある種の「穏やかな結婚生活」の再現だ。「よきチーム」というモデルほど安心感を与えてくれるものはない、と考える人もいる。

フロロンス・ロトレドゥはこう断言する——性生活がなくてもカップルはうまくいくし、幸せにもなれる、と。しかし、それは個人の精神的なバランスのために必要な自分の性欲を忘れてしまったり、黙らせてしまったり、諦めてしまったりしないことが条件だ。マスターベーションは性を自分の中で維持する一つの方法だ。

(1) ジャン=クロード・コフマン著 『Pas envie ce soir, le consentement dans le couple,』 Les liens qui libèrent社刊。

text : Jane Roussel (madame.lefigaro.fr)

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