初のアフリカ系エトワール、ギヨーム・ディオップが示す「勇敢さ」。
Culture 2023.07.28
パリ・オペラ座バレエ団初のアフリカ系エトワールとなった23歳のギヨーム・ディオップ。最高の称号を手にしたのは類まれな才能と並外れた努力の賜物だ。この夏、『マノン』のデ・グリュー役をオペラ座で踊ったダンサーにフランスのマダムフィガロがミニインタビュー。
23歳でパリのオペラ座のエトワールに任命されたギヨーム・ディオップ。photography: Marechal Aurore/ABACA
― いまどんな気分?
まだ地に足がついていない気分だ。エトワールになることをずっと夢見てきた。これまでを振り返ると、両親が多大な犠牲を払って支えてくれたことがまず浮かぶ。「オペラ座では肌の黒いエトワールが生まれることは決してありえないだろう」と言われたけれど、アーティストの語彙に“決してありえない”という言葉は存在しない。
― これからの活動は?
『さすらう若者の歌』の情熱的で肉感的な役を終えて、『マノン』で再びオペラ座の舞台に立つ(※公演は取材後の7月15日に終了)。これはエトワールになって初の大役で、とても難しいパ・ド・ドゥがあり、素晴らしい物語を担う。ストーリー性のあるバレエ作品が好きだ。踊りながら表現することを要求されるからだ。毎日5時間から7時間くらい練習している。
― 自分はどんな性格?
頑張り屋で物事に執着する完璧主義者。やりすぎないよう、加減しなきゃと思う時がある。とても内気で感情に左右されやすくて夢想家。友だちからは、典型的なうお座だねって言われる。自分の星座なんだ。超繊細なところはオーヴェルニュ出身の母から、意志の強さは多分セネガル人の父から受け継いだ。父はフランスに来て成功するために猛烈に働いた。私の道のりに、父は自分を重ねているようだ。
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― 周囲からどう見られたい?
勇敢な人と見られたい。ただ、ひとりでここまで来られたんじゃない。オーレリー・デュポン(前芸術監督)のおかげによるところが大きい。バレエ団でいちばんの下っ端だった時から注目してくれ、2021年、負傷したエトワールの代役として『ロミオとジュリエット』の主役に抜擢してくれた。わずか2年足らずの間に大きな役をいくつも踊らせてもらえた。『ラ・バヤデール』の時は準備期間が3日しかなく、しかも相手はあの偉大なドロテ・ジルベールだったけれど。
― 自分について語るのは難しい?
簡単ではないけれど、必要なことだ。自分のことや役について語るためには分析する必要がある。インタビューに答える際、自分の内面を掘り下げて矛盾する部分と向き合わなくてはならない。自分について語るのは決して楽ではないが、インタビューというのは非常に興味深い内省の時間だ。
― 許せないと思ったことは?
「ポジティブ・アクション(積極的差別是正措置)」枠で任命されたと陰口を叩かれるのはとても悔しい。必死に努力してきた結果なのに。ダンサーという職業は真に打ちこむ必要がある。肉体的にハードな努力と非常に強い精神的負荷が伴う。うまくバランスを取っていくことはいつだって難しい。
― インタビューを受けるときはどんな服装がいい?
着心地がいいのがいちばん。だいたい。いつも厚底で大きめの靴を履いているのは自分が安心できるから。あとはお気に入りのシャツかトレーナーにゆったりしたストリートウエアのボトムスかな。
― いまの気分は戦闘的モード? 魅力アピールモード?
ケースバイケース。社会的な模範を示す役割なら買って出る。エトワール任命によって、どんな社会的地位や肌の色の子どもたちであっても、ダンスをやってみようかなと思うきっかけになることを願っている。子どもの頃、自分にはお手本がなかった。パリのオペラ座には肌の黒いダンサーも在籍していたし、たとえばエリック・ヴュ・アンもいたが、すでに引退していたので彼が踊るのを見たことがない。
― この取材後の予定は?
パリ・オペラ座のダンサーで大の仲良しのリュナ・ペリエと会う予定。役作りの際、いつも助けてくれた。私が落ちこんでいると、ちょっとした言葉をかけてくれる。親友なんだ。
text: Paola Genone (madame.lefigaro.fr)