ジャスティン・トルドー首相、夫人と別居へ。
Culture 2023.08.05
8月2日、カナダ首相夫妻はそれぞれのインスタグラムで別居を発表した。固い絆で結ばれているかのように見えた夫妻のこれまでを振り返る。
多くの試練を共に乗り越えてきたカナダのジャスティン・トルドー首相と妻のソフィー・グレゴワール。ふたりの絆は時の流れにも負けないほど強いように思えた。しかしながら18年間連れ添ったカナダの首相夫妻は8月2日に別居を発表した。「ソフィーと私は辛くても意義のある話し合いを何度も重ねた結果、別れる決断をしたことをお伝えしたいと思います 」と、首相はインスタグラムで明らかにした。
そして、「これまで通り、私たちは親密な家族としてこれまで築いてきたもの、これから築いていくもの、そしてお互いに対し、深い愛情を注いでいきます 」と続けた。メディアと一般大衆には、家族のプライバシーを尊重してほしいと呼びかけた。首相官邸もほどなく声明を発表し、夫妻が「別居合意書」を作成したことを伝えた。声明では夫妻が今後「子どもたちの成長」を見守っていくことや、「一家が一緒にいる姿を国民は今後も頻繁に見ることになるであろうこと」も述べられていた。離婚を経験したカナダ首相はジャスティン・トルドーとその父親のピエールしかいない。
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弟の同級生
夫妻にとっては苦渋の決断だっただろう。長年、ソフィーは夫を支えてきた。ふたりの物語はずっと昔のトルドー家で始まる。首相の弟、ミシェルの同級生だったソフィー・グレゴワールはよくトルドー家に遊びにきていた。後にソフィーが語ったところによると、戸棚にジャスティン・トルドーと一緒に隠れていて、キスしたこともあったそうだ。ソフィーが名門マギル大学の商学部で学ぶために家を離れてからはふたりが出会う機会もしばらくなかった。再会は数年後のことだ。
ソフィーは後にカナダの「ラ・プレス」紙面でこの時のことを回想している。「私たちはサンタドルフにあるトルドー家のお宅にお邪魔しました。ピエールが暖炉の火を見ている間、私より4歳年上のジャスティンは顔も見ずにビールを渡してくれました」と。ふたりがその後、再び会うのは2003年のこと。モントリオール・グランプリのガラパーティーで共同司会をすることになった。「その晩は一緒に楽しく過ごし、翌朝、ジャスティンに"楽しかった、またね"と親しみをこめてメールを送りました。でも返事が来なかったんです。頭に来て、彼の名前を太い黒線で消しました」と彼女は言う。ジャスティン・トルドーは後に、当時は誰ともつきあう気がなかったと釈明した。
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妙な初デート
その後、ふたりは街でまた偶然にもばったり出会った。今回のジャスティンは積極的だった。「ディナーに招待したいからと電話番号を聞いてきたので、"あなたはトルドー家の一員でしょ。自分で調べれば"と突っぱねました」とソフィーは当時を語る。初デートは妙な雰囲気としか言いようがなかった。「ジーンズを履いたジャスティンが、古い82年型ブロンコ4WDで迎えにきました。車内は防虫剤みたいな臭いがしていました。アフガニスタン料理を食べながら、何時間もおしゃべりをしているうちにとうとう、君こそが僕の生涯の伴侶だと言いはじめたんです。そのときも、私がいつも感心してしまう落ち着き払った自信たっぷりの口調でした。正直、この人、なにか薬を飲み忘れたのかしらと思いましたけれど」とソフィー。その晩、ジャスティン・トルドーは動揺のあまり柱に頭をぶつけた。「3ヵ月後、私は彼とロワ通りに引っ越しました」
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私が望んだことではない
ソフィーの美しさ、優しさ、知性、価値観に魅了され、ジャスティンは1年後、彼女に結婚を申しこみ、ふたりは2005年5月に結婚した。しかしながらジャスティンが政治家として頭角を現していくにつれ、ふたりはギクシャクしはじめた。「自分の仕事はとても大変で、プレッシャーも大きい」とジャスティン・トルドーは2014年、CBC ニュースに語っている。「妻が私の仕事を嫌がる時もあるし、仕事を愛しているからと妻から嫌われることもある。それでも、多くのものを与えてくれたこの国に奉仕する機会に恵まれたこと、それがどんな責任であるかを理解してくれる時もある」
それでもこの頃は夫婦仲が悪いわけではなく、子どもを3人授かった。2007年生まれのグザヴィエ、2009年生まれのエラ=グレース、そして2014年生まれのアドリアンだ。ジャスティン・トルドーが当選後にカナダの首相官邸、すなわちサセックス24番地のリドー・ホールに引っ越したとき、ソフィー・グレゴワールはなかなかなじめなかった。「首相官邸に住むことは私が望んだことではありませんが、この場所が持つ魅力も認めざるを得ません。ジャスティンにとっては幼い頃住んでいた場所ですし」とソフィーは2013年の「ラ・プレス」紙の取材に語っている。なんとか官邸に慣れたソフィーは夫の公務をサポートするようになった。SNSでは「どこにいても子どもたちへの愛を忘れない」父親である夫を称賛している。
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完璧な関係なんてない
この18年間、夫妻は公の場で仲の良いところを見せながらも問題を抱えていることを隠さなかった。2022年5月、ソフィー・グレゴワールは結婚記念日に意味深なメッセージを発表した。「19年間一緒にいて、17年前から結婚している。その間、晴れた日も、激しい嵐の日も、いろいろな日があった。そしてそれはまだまだ続く。皆さんは私が正直なことをご存知でしょう。長期に渡る関係は、いろいろな面で難しいのです」
そして続けて「そこには絶え間ない努力、柔軟さと妥協、犠牲、献身、忍耐、努力、その他諸々のことがあります」と述べると「完璧な関係」 なんてなく、「あなたを守り、解放し、成長させてくれる愛こそが本物の愛なのです」と述べた。2020年9月、初デート17周年の記念日には、「浮き沈みはあったけれど、あなたが今でもいちばん。愛している」と書いている。その後、夫婦の愛情は薄れてしまったのかもしれないが、元夫婦になっても逆境に直面しても結束し、親密な関係を保つだろう。
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【写真】トルドー夫妻のこれまでの歩み
ソフィー・グレゴワールは、ジャスティン・トルドーの弟の同級生だった。2005年、ふたりはロード・オブ・ザ・リング風の結婚指輪を交換した(モントリオール、2005年5月28日)。
Photography: Abaca
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透明なリップグロスは当時大流行した。ジャスティン・トルドーは後にハンサム首相としてもてはやされるようになる。(モントリオール、2005年5月28日)
Photography: Abaca
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夫は教職から将来有望な政治家へ。妻はテレビのキャスターからボランティア活動中心の生活へ。夫妻は人前でもキスしたり、笑いあったり、とてもオープンだ。(トロントのリベラル・リーダーシップ・ナショナル・ショーケースにて、2013年4月6日)
Photography: Abaca
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子どもたちとこれぞ完璧な家族。(オタワ、2013年4月14日)。
Photography: Abaca
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トルドー家の幼い子どもたちはハロウィンでチューバッカとニンジャタートルに変装した(オタワ、2015年10月31日)。
Photography: Abaca
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2015年10月、43歳のジャスティン・トルドーがカナダの首相に就任した。彼の父は1968年から1979年まで、そして1980年から1984年までカナダ首相だったピエール・エリオットだ。
Photography: Abaca
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旧姓を使い続けることにしたソフィー・グレゴワール=トルドーは、夫の影にとどまるつもりはなく、男女平等を支持する発言をよくしている。(オタワ、2015年11月10日)
Photography: Abaca
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夫妻は「普通」に振る舞うことを望み、公の場ではいつも仲の良い姿を見せた。 (マルタでの英連邦首脳会議にて、2015年11月27日)
Photography: Abaca
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ソフィー・グレゴワールは夫ジャスティン・トルドーのジョークの1番のファン。(オタワ、2015年12月4日)
Photography: Abaca
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キャサリン皇太子妃にも負けていない。ソフィー・グレゴワール=トルドーのウェーブヘアも素敵。(ルネ・アンジェリルの葬儀にて、モントリオール、2016年1月22日)
Photography: Abaca
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カナダのファーストカップルは、どうやらミシェル&バラク・オバマ大統領(当時)を魅了しようとしているようだ。(ワシントン、2016年3月10日)
Photography: Abaca
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ソフィー・グレゴワール・トルドーとミシェル・オバマは、ドレスと笑い声で競いあう。(ワシントン、2016年3月10日)
Photography: Abaca
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2人とも自分のファッションスタイルがはっきり持っている。(ワシントン、2016年3月10日)
Photography: Abaca
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ソフィーは米国大統領夫人への憧れを隠さない。(Washington, 10 March 2016.)
Photography: Abaca
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オバマ大統領は、年次記者晩餐会でジョークを飛ばすのが恒例だった。カナダではトルドー首相が夫妻で頑張る。(ガティノーの年次記者晩餐会、2016年6月4日)。
Photography: Abaca
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礼儀作法なんかより、まずは楽しもう主義のトルドー家。(オタワ、2016年7月1日)
Photography: Abaca
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キャサリン皇太子妃がH&Mのドレスを着て話題に?カナダではソフィー・グレゴワール=トルドーがビーチサングラスと福袋のプラスチックブレスレットで決める。 (バンクーバー・ゲイ・プライドにて、2016年7月31日)
Photography: Abaca
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とにかく楽しくやろう。(バンクーバー、2016年7月31日。)
Photography: Abaca
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ウィリアム皇太子とキャアサリン皇太子妃を迎えるジャスティン・トルドーとソフィー・グレゴワール。みんなでおすまし顔。(バンクーバー、2016年9月25日)
Photography: Abaca
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でもすぐに自然な笑顔に。キャサリン皇太子妃が上品に微笑む一方、ソフィーはウィリアム皇太子とはしゃぐ。(バンクーバー、2016年9月25日)。
Photography: Abaca
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ご婦人方は帽子を着用。ソフィのフェルトハットはいかにもカナダっぽい。 (ビクトリア、2016年9月24日)
Photography: Abaca
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夫妻がフランスを公式訪問したのは、11月13日の同時多発テロの犠牲者に敬意を表するための1回だけだった。(パリ、2015年11月29日)
Photography: Abaca
text: Chloé Friedmann et Ségolène Forgar (madame.lefigaro.fr)