日本だけじゃない!「パパ活」が世界中で問題に。

Culture 2023.09.16

アメリカの社会学者アシュリー・ミアーズは超富裕層のナイトクラブでフィールドワークをおこない、美しい女性が権力者によってどのように消費されるのかを調査研究した。

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ニューヨークからサントロペまで、2年にわたるフィールドワークを実施し、著者は超富裕層の世界に潜入した。photography : Getty Images

社会学者のアシュリー・ミアーズは前作『Pricing Beauty: The Making of a Fashion Model(原題訳:美の値段、ファッションモデルの作り方)』(2011年)で、ファッション業界内でモデルが評価されるメカニズムを検証した。新著『Very Important People(原題訳:VIP)』ではナイトクラブで美しい女性がどのように搾取されているのかの実態を探っている。ニューヨーク、サントロペ、マイアミ、ハンプトンズなど世界各地でのフィールドワークを通じて著者は世界を飛び回る富裕層の実態に独自の方法で迫った。そこでは社会集団ごとに呼び名がある。クジラ、レタス、プロモーター、ボトルガール、フィラー等。そしてこの世界では女性の外見は男性によって利用される資源なのだ。

かつてファッションモデルだったこともあるアシュリー・ミアーズは現在、ボストン大学の女性・ジェンダー・セクシュアリティ学部で社会学を教える教授だ。新著『Very Important People』は、カール・マルクス、ピエール・ブルデュー、そして近代アメリカの人類学者の先駆者フランツ・ボースを視野に入れつつ、新興超富裕層のエリートたちのナイトライフに潜むジェンダーの不平等について述べている。現在はSNS上のジェンダー・ステレオタイプと不平等というなかなか興味深い研究をおこなっている教授がパリの政治学院に講演にやってきた折に取材した。

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プロモーターという職業

「プロモーター、もしくはイメージ・プロモーターはVIPの世界で要となる存在だ。多くは若い男性で、クラブから報酬をもらって上客、すなわち主として金持ちの男性と「美しい」女性を連れてくる役割を担っている。ニューヨーク、ミラノ、パリなど、モデルが多く住む大都市で、プロモーターたちは女性たちに街なかで直接声をかけ、スカウトする。彼らはモデルたちがランチする場所、キャスティングの場所、エージェンシーの住所をよく知っていて、女の子を誘う術に長けている。愛想が良く、カリスマ性もあり、人脈もある。あなたがニューヨークにやってきたばかりの新人モデルだとしよう。モデル仲間からは当然のように、人と知り合うためにとプロモーターを紹介される。プロモーターは空港に迎えに来てくれ、キャスティングに連れていってくれて、ディズニーランドのチケットをくれ、おしゃれなレストランでランチを食べさせてくれる。それと引き換えに夜、VIP向けのクラブやプライベートなパーティーに同伴するよう頼んでくるはずだ。行くだけでいいし、全て無料だ。プロモーターはそれで報酬を得る(プロモーターが手にするのは、自分が連れてきた富裕層が使った金額の10から20%のコミッション)」

「もっともプロモーターに言わせれば、自分たちは売春斡旋行為など一切していない。キレイな女の子をクラブに連れていくだけだそうだ。女の子たちが決して行けないような場所に連れていってやり、安全に帰宅できるようにタクシー代まで出してあげるのだと。プロモーターにとって違いは明白だ。“使用と乱用は明らかに違う。たとえその差がほんの僅かであっても”とプロモーターのひとりから言われたことがある」

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VIPならぬVIB(Very important beauty)

「高級ナイトクラブは、名声とお金と美しさで成り立っている。私が会ったプロモーターは、いつもキレイな女の子たちを6名ぐらいぞろぞろとひき連れていた。ひと目でモデルとわかるような子たちばかりだ。若くて色白で175センチ以上の長身で極端に細い。彼女たちの数が多ければ多いほど、また彼女たちが目立てば目立つほど、客は大事にされていると感じる。彼女たちの美しさは客のステータスの高さや価値の証であり、だから正当化され、神聖化される。たいていの場合、プロモーターが連れてくる女の子たちは有名ブランドのランウェイから直行してきたかのような雰囲気があり、店に入ると誰もが注目する。彼女たちは、その場にいるすべての人を含め、空間全体を「格上げ」するのだ。客は“ああ、昨晩このクラブに僕もいたよ。女の子たちはこんな感じだったね”と言えるようになる。客はすぐにセルフィーを撮ってインスタグラムに投稿し、知人たちにひけらかす。それが翻っては自分がビューティフルピープルである証であり、ひいては自分の社会的地位を示すからだ」

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“モデルとボトル”という表現

「VIPの世界にモデルは顕在している。だからたとえば”モデルとボトル”という表現がある。パーティーをするという意味だ。もっと言えば、女の子がキレイであればあるほど金持ちは気前が良くなる。それはつまり経済がもっぱらイメージで動いていることだ。ナイトクラブにモデルを呼んで富裕層を引き寄せ、その富裕層がボトルを入れる。“金持ちの男性のために美しい女性を用意した”のではなく、“男性が入れたシャンペンを飲みに美しい女性たちが来た”という体裁を取る。結局は同じなのだが」

「女の子が初めてこのような場所に行くときに多くの子が疑問を抱く。“自分たちも払うの?誰が払うの?これと引き換えに何をさせられるの?”といった類の疑問だ。少なくとも、流行りのレストランで豪華なディナーをご馳走になったら、ナイトクラブで3時間ほど過ごすことが期待されている。しかもいくつかの条件を守ること。すなわち靴はハイヒール(モデルらしく見えるため)、楽しそうに振る舞う、プロモーターのテーブルからあまり離れないことだ。一方、プロモーターは、彼女たちをVIPエリアを留めておくために使い古された手を使ったりする。例えばハンドバッグを預かってあげると言って自分の手元に置いておく。女の子は帰る前に当然、バッグを取りにこなくてはならず、その際にプロモーターからひき止められることになる」

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ポトラッチ

「19世紀末のアメリカの人類学者たちは、太平洋岸北西部の部族でおこなわれていた浪費の儀式の風習を記録し、これを「ポトラッチ」と名付けた。これらの部族では酋長が収穫物から食料、財産、金銭などをすべて自分に集約し、壮大な儀式として一大宴会を開く。非常に金がかかる大宴会を開いて浪費することで、酋長は自分たちの地位を強固なものにした。すなわち、一般的に贈与というものは贈り贈られの対等な関係にある。ところが相手が返せないほどの浪費、つまり互恵関係を築けないような浪費は相手に屈辱を味わわせて支配するためにおこわれる。ポトラッチと同様、VIP向けのナイトクラブは従属と支配の関係を明確に演出し、金持ちの男たちを夜遊びの間だけ「偉い人」に変えてしまう。一晩で数万ドル、数十万ドルを散財する金持ちは「クジラ」、より小額ながら定期的に散財してくれる金持ちは「レタス」と呼ばれる。私の調査では、最も有名なクジラはジョウ・ロウ(マレーシアの実業家で、現在は逮捕されている)で、その豪遊ぶり(サントロペで一晩に150万ドル散財)は伝説となっている。

こうなってくるとほとんど芝居がかってくる。クラブが演出するぎょうぎょうしいパフォーマンス、行事のようなものだ。例えば、シャンパンボトルの値段は指数関数的に上がる。大事なのは中身ではなく、大きさだからだ。あまりに大きくて重たいボトルなので筋肉隆々のボディガードを呼んでこないと注げない場合もある。ばかばかしいが、ダンスフロアを埋め尽くす人々(フィラー)がスマホで撮影し、SNSに投稿するのはまさにこのシャンペンを注ぐ瞬間なのだ。こうして観客もショーの一部となり、客は最高の気分を味わい、クラブは大儲けだ」

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グローバル化するエリート層

「新著で私が描写したこれみよがしな消費行動は、エリートたちのライフスタイルの変容を物語っている。今日、私たちは極端な富の民主化を目の当たりにしている。以前よりも流通している金銭が増えているのだ。昔のエリート層は主に上流社会の一族で構成され、特定の町に根を下ろし、知ったもの同士で場所やルールを共有していた。一方、新しいエリート層は近年、金融やテクノロジー、暗号通貨の分野でのしあがってきた。彼らはロシア、ブラジル、インド、東アジアなどバラバラな地域の出身で、世界のあちこちに出没する。こうして世界の四隅にある、どこも似たりよったりのVIP向けのスポットで自然と顔を合わせることになる。場所だけでなく、出没するイベントも似通っている。ファッション・ウィーク中はニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリと一斉に移動するし、世界の主要な経済フォーラムや文化イベント(カンヌ映画祭、アートバーゼルなど)にも出向く。もっと言えば冬はカリブ海、夏は地中海にいる。要するにこうした場所を新しいグローバル・エリートはぐるぐる回っており、そこに彼ら向けの場所が出来ていく。ブルデューの言うエリートの概念とは真逆だ。ブルデューによれば、真のエリートになるためにはまさしく、物事は際立った、利害関係のない、普通のやり方で消費されなければならない」

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女の子資本

「女の子たちがVIPの世界に入ることを許されるのは、その身体資本のおかげだ。大きな資産ながら女の子自身がその恩恵を直接受けることはない。「女の子資本」と私が呼んでいるこの資本の活用はもっぱら男性に利益をもたらす。これにはいくつかの理由がある。第一に、確かに女の子たちは自分たちが美しいことを武器に金持ちと出会うが、それだけではセックスワーカーと大差ない。しかも女の子たちが、定期的に出かけてパーティーや無料のシャンパンなど、得られるすべての恩恵をフルに享受しようとすると遊び好きの女のレッテルを貼られがちだ。

つまり、このシステムは、女の子が自らを資本化するというよりも、男性が女の子を資本化するような構造になっている。一般的に、美というものは女性にとって資本の一種であり、それを女性は自分の利益のために使うのだろうと多くの人が思っている。しかし、この手のクラブの中で、女性が男性のために様々な社会的・職業的潤滑油の役割を果たすことを考えた場合、疑問が湧いていくる。その場合の女性の価値とはになにか。フィールドワークをしたときに私が抱いた印象を定量化したり実証したりする方法を持ち合わせていないが、彼女たちは目に見えない形で、すなわちそこに存在するだけで金融効果をもたらしているのではないか。富裕層の男性たちが顔見知りになって取引をする際、女の子資本はそうした男性の手で社会的地位、特権的な関係、有利なビジネスに変換される。顧客は、エリートの階段をあがって他のVIPとのつながりを築くために、女の子たちを利用するのだ」

text: Marion Galy-Ramounot (madame.lefigaro.fr)

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