恋と結婚 ともさかりえに聞く、大人の恋って何ですか?

Culture 2023.10.11

世間から「恋多き女」と好奇の目を向けられたとしても。女優としてひとりの人間として自分の生き方をまっとうする、ともさかりえの純情。

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Rie Tomosaka
1979年生まれ。1992年に「コラ!なんばしよっと」でデビュー。女優、歌手として活動し、受賞歴も多数。サプリメントやアパレルのプロデュースなど多岐にわたって活躍中。

自愛の意味を知り、また恋をする勇気が持てた

黒いベレー帽を被り、まっすぐにカメラを見つめる美しい少女。先頃、ともさかりえがSNSに投稿したデビュー当初のアーティスト写真に添えられた「ここから先に待ち受けている出来事を思うと、なんか少し胸が痛くなった」という言葉は、彼女のまっさらな性格が伝わる“自愛”のつぶやきだ。

「12歳でデビューをして、右も左もわからない状態でずっと走り続けてきたので、思春期や成長の過程で経験することをすべてすっ飛ばして大人になってしまったんです。だから、本当に自分は未熟だと思うことが山ほどありました」と静かな口調で話す。

同世代の友人のように淡い恋心を打ち明け合って“秘密の共有”に胸をときめかせることも、通学路を遠回りしてデートをすることも、彼女にとってすべて叶うことのない憧れだった。

理想と現実の差を埋められず苦しんだ20代の恋。

「とてもありがたいことに、デビューしてすぐにCMのオーディションに受かって、そこからはまるでジェットコースターのような日々でした。10代は仕事を中心に人生が回っている感覚で、自分に与えられた役割をきちんとこなさなくてはというプレッシャーも常にありました。私のせいでまわりの人に迷惑をかけるわけにはいかない。ドラマでも音楽活動でも私がそのお仕事に携わらせていただくことでどれだけたくさんの人を巻き込んでいるかということを幼いながらに理解していたので、私の言動でそれを台無しにすることはできないんだと自分に言い聞かせていた部分もあります。それでも現実は恋に憧れる年頃だから、年相応の恋愛も水面下で密やかに育んでいました。私の世代ではタブー視されていた恋愛も、いまは時代が変わってわりとオープンになりましたよね。撮影の合間に若い俳優さんが恋愛トークで盛り上がったりしている場面に直面すると、逆にこっちがドキドキしてしまう(笑)。あっけらかんとして恋愛の捉え方がとてもポジティブ。いま考えてみれば、私もそこまで気負うことはなかったかなと思うこともあるけれど、あの時は自分はこうでなくちゃいけないという気持ちがすごく強かったから」

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ワンピース¥616,000/ボッテガ・ヴェネタ(ボッテガ・ヴェネタ ジャパン)

幼くして芽生えた責任感は、仕事の量と比例するように自分の肩にのしかかり、コントロール不能な状況に苦しんだことも。

「必要としてもらえることがありがたかったから、とにかくがむしゃらに頑張りました。でもあの頃を振り返ってみると恋愛に救いを求めすぎていたんだと思う。23歳で結婚したのも、そこにしか逃げ場がなかったから。もちろん、心底好きになった相手だったけど、心のどこかで救済を求めていた気がします。子どもの頃から大人に囲まれて仕事をしてきて、自分も同じくらいの経験値があるように錯覚していたけれど、実際は本当に無知で未熟だった。そんな自分を掬い上げてくれた彼には、本当に感謝しています。まったく違う人生を歩んできた同士がひとつ屋根の下で一緒に暮らすとこういうおもしろさがあるんだという気付きもありました。でも、その時の私は理想と現実のギャップを埋める術がわからず、ただ相手に求めすぎてしまった。言葉にするのが苦手で、どれもこれも飲み込んでしまって、結果的に相手も自分も傷つけてしまった。もちろん離婚するにいたった理由はいろいろあったけど、いまとなってはどうしてあんな些細なことで腹を立てていたのだろうと思うし、記憶にあるのは楽しかった思い出ばかりです」

自己嫌悪に陥っても、自分を手放さずに生きる。

日本人女性の多くは20代後半から30代前半にかけてライフスタイルの転換期を迎えるが、新しい恋と出合い、31歳の時に2度目の結婚を決意した。

「離婚をするとなった時は、また同じことを繰り返してしまったという自分の学習能力のなさにガッカリして、さらに息子に対しての申し訳なさもあり、本当に落ち込みました。しばらくは何も考えられず、ただ粛々と生きることしかできなかった。そこからの数年はリハビリというか、自分の人生を見つめ直す時間でした。それまで愛に依存して、そこに救いを求めながら生きてきてしまったけれど、恋愛に頼らなくても自分自身でいくらでも人生を豊かにすることができるんだと気付けたことは、とても大きかったと思います」

恋愛も結婚も相手があってのことだからこそ、自分自身を愛し、深く知ることが大切だという“自愛”の気付き。

「気合と根性でなんとかなる!という時代を生きてきて、自分を慈しむ自愛の精神とはずっとほど遠いところにいました。お芝居をするなかでいろいろな人物の人生を演じながら、この人は自分の気持ちをこんな風に吐露できて羨ましいなと感じることがすごく多かったんです。演じることで自分の人生経験を積み重ねているような錯覚に陥っていたけれど、実際の私はそうありたいと夢を見ていただけ。だから理想と現実の乖離の激しさに苛立ち、うまくいかなかったのかと気付いた時に、やっと心が解放されて、すごく気持ちがラクになりました。自分の弱さや、苦手なことと正面から向き合ったら、ものすごく生きやすくなった。うまくできなくてもいい、失敗してもいい。欠落した部分を受け入れられたら、素直な自分で人付き合いができるようになった。そこからは、仕事も日常もいろいろなことがスムーズに進むようになった気がします」

健やかで平穏な愛情を、大切に育むために。

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ワンピース¥2,200,000/ボッテガ・ヴェネタ(ボッテガ・ヴェネタ ジャパン)

少しずつ心に余裕が生まれ、精神的な健やかさを実感できるように。いまなら相手に気持ちを委ねすぎることなく、対等な立場で恋愛できるかもしれないと想像してみるが、自分からパートナーを探すという気にはならなかった。

「10代の頃からお世話になっている方に、りえちゃんそろそろ彼氏をつくってもいいと思うよ、いまのりえちゃんなら大丈夫だと思うと言ってもらえて。私以上に私を知る人に、そう太鼓判を押されたことがすごくうれしかったんです。いまの自分が心身ともに健康に過ごせているんだなって実感させてくれた。そんなタイミングで出会ったのがいまのパートナーです。大人なので互いに好意があるとわかれば話は早いですよね(笑)。どこかで狂わされている〝恋〟の在り方を、再確認させてもらった。もう互いに若くないですし、さまざまなことを乗り越えてきたいまだからこそ、表面的な恋に溺れるのではなく、もっと深いところにある人間力みたいなものに恋している状態なんだと思う。相手に依存せず、自由に生きる彼に良い影響を与えてもらっています。心が旅人みたいな人だけど、ひとりで過ごす私を決して孤独にしない。離れて過ごす時間に満たされていると感じるのは初めての経験です。健康でおおらかな人だから、少女漫画を読み耽り、ドリカムのラブソングをリピートして、そのままのマインドで恋愛に過度な期待を抱いて大人になった私には、捨てきれない乙女心があるのですが(笑)、そんな私もおもしろがってくれる。世間知らずで苦手なことがたくさんある私を決して否定したり馬鹿にしたりせず、良いヒントをくれる。学びを与えてもらえるって、ありがたいことだなと。些細な日常を分かち合うことの喜びとおもしろさを、いまあらためて教えてもらっています。懲りない女だと笑われてしまうかもしれないけど構わない。だって、私の人生は私のものだから」

最後に、ともさかさんにとって恋と結婚はイコール? と尋ねると少女の頃と同じまっすぐな瞳で「そうだといいなと思っています」と可憐に微笑んだ。

●問い合わせ先:
ボッテガ・ヴェネタ ジャパン
0120-60-1966(フリーダイヤル)
www.bottegaveneta.com/ja-jp

*「フィガロジャポン」2023年11月号より抜粋

photography: Ittetsu Matsuoka styling: Naomi Shimizu hair & makeup: Taeko Kusaba interview & text: Keiko Kodera

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