心が浄化される、ポップでメロウなアルバム3選。
Culture 2023.11.08
レトロ感覚に引き込まれる極上ポップ。
『カミーノ・ドラド』/ローラ・コバチ
フォークロックやスイートソウルのようなヴィンテージサウンドと清冽な歌声。アルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に活動するシンガーソングライターの2作目は、前作の70年代フォーキー路線からさらにステップアップ。スペイン語の響きを生かし、懐かしくも新しい雰囲気が漂うが、キュートな声とバンドのアンサンブルはスタイリッシュでスウェディッシュポップを思わせる。バート・バカラックの「Close To You」をとろけるようなメロウネスでコーティングしたカバーも秀逸だ。
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UKの気鋭によるクロスオーバーサウンド。
『ジェントル・コンフロンテイション』/ロレイン・ジェイムス
ひんやりとしたシンセサイザーのサウンドと、刺激的なビートの融合。2017年にデビューして以来、エレクトロニカ、R&B、ジャズ、アンビエントなどさまざまなジャンルを網羅しながら独特の響きを持つ音世界を構築してきたサウンドクリエイターの新作は、これまで以上に攻めながらもポップなボーカルチューンがメインの作品となった。人間関係が大きなテーマだけあって多数のゲストを招いており、一音一音が有機的に絡み合う。全体的に漂う気怠さに、すっと心地よく包まれ続けたい。
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エモーショナルで神秘的なポップワールド。
『ザ・ランド・イズ・インホスピタブル・アンド・ソー・アー・ウィ』 /ミツキ
作品を出すたびに評価が高まる日系アメリカ人シンガーソングライターの新作。ナッシュビルとロサンゼルスでレコーディングされた本作の特徴は、崇高なゴスペルや賛美歌のような合唱を聴かせるクワイアのメンバーが参加していることだろう。これによって彼女特有のヒリヒリとした内面の苦悩や社会的なメッセージを形にした歌詞が、メランコリックなメロディと融合。歌は自然体でありながら、情感豊かな表現で聴く者を魅了する。心を浄化させるような気持ちでじっくりと対面したい作品だ。
*「フィガロジャポン」2023年11月号より抜粋
text: Hitoshi Kurimoto