MESSAGE 仕事が私にくれたもの 元Apple幹部が立ち上げたワインは、日本文化と料理に合うピノ・ノワール!?
Culture 2023.11.18
ザンダー・ソーレン|ワインメーカー
20年以上アップルの重役としてGarageBandやiTunes、iPodといった革新的な企画に携わったザンダー・ソーレンが次のキャリアとして選んだのは、テクノロジーと真逆にも思えるワイン造りだ。
「ワイン造りはアップルに勤務しながら10年間、休暇中の趣味として情熱を注いできました。遂にそれだけに集中することを決意したのです」
幼い頃から日本が大好きだった彼は、日本料理向けのピノノワールの開発に注力。そしてこのほど「ザンダー・ソーレン・ワインズ」が、世界に先駆けて日本でお披露目されることとなった。
「カリフォルニアワインでありながら、洗練された日本料理に寄り添うようなエレガントなワインを目指しました。そのためにカリフォルニアの中でも厳選した冷涼産地のブドウを使い、ブルゴーニュの上品なワイン醸造スタイルを採用。アルコールやオークの風味を極力抑えることで、食事の繊細な味わいを邪魔しないスタイルに。私の日本文化と料理に対する敬意が込められています」
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食事の繊細な味わいを邪魔しないワインに、
日本文化と料理に対する敬意を。
日本のアート、デザイン、歴史に魅了され、大学ではそれらを専攻してきたソーレン。彼をワイン造りに邁進させたのも、日本での体験からだった。
「以前来日した際、和食に日本酒だけでなく、フランスワインを合わせていることに驚きました。寿司と成熟したピノノワールの組み合わせは美しく魔法のようだった! 上品なピノノワールは、あらゆる料理にマッチすると気付いたのです」
幾度となく来日している彼は、おいしいものがあると聞けば日本全国をフットワーク軽く駆け回る。そこで出会った人たち、知らなかった郷土料理などがワイン造りのヒントになることも。
「日本のシェフやソムリエたちが私を応援してくれたことはとても幸運でした。仲間を感じながらのものづくりはアップルの時と同じ。細部までこだわり、質の高いものを追い求める姿勢も変わらない。今後もますます高みを目指していきます」
1970年、アメリカ生まれ。アップルの重役としてデジタル音楽製品の制作に従事、スティーブ・ジョブズとともにアップルの経営の基礎を築いてきた。アップルを退職後、ワインブランド「ザンダー・ソーレン・ワインズ」を設立する。
*「フィガロジャポン」2023年7月号より抜粋
text: Tomoko Kawakami photography: Margot Duane