注目のUKジャズほか、いま聞きたいアルバム3選。
Culture 2023.12.10
圧倒的な歌の吸引力を持つUKの新鋭。
『メンディング』/フリーダ・トゥレイ
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ジャジーでソウルフルでスピリチュアル。極上の音楽体験を味わわせてくれるのが、英国ジャズシーンの注目株。スウェーデン出身ということもあって透明感に満ちたボーカルは高く評価されており、エド・シーランやリアン・ラ・ハヴァスと共演していることからも、その実力はわかるはず。ほのかにエレクトロニカを取り入れたり、ゴスペルのようなコーラスを従えたりとサウンドの振り幅も大きい。後半に収められている弦楽四重奏をフィーチャーしたライブテイクの美しさも格別だ。
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トム・ミッシュのアッパーなプロジェクト。
『ハッピー・ミュージック』/スーパーシャイ
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アルバムのタイトルが物語るように、誰が聴いても心躍るダンスミュージック。エリック・クラプトンまでもが認めるギタリストであり、斬新なトラックメイカーでもある才人が新たに始めたのは、ハウスやディスコを追求した懐かしさと新鮮さが交差するサウンドだ。ロバータ・フラックの歌声をフィーチャーした名曲カバーなど飛び道具にも驚かされるが、何よりもこれまでになかった作風にワクワクさせられるだろう。とにかくいつまでもループするビートに身を任せていたいと思わされる作品だ。
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崇高で幻想的なインストゥルメンタル。
『アクツ・オブ・ライト』/ヒラリー・ウッズ
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まるで夢の中を彷徨うかのような音色は、アイルランドで一世を風靡したロックバンド、JJ72のベーシストによる実験作。スペインを旅しながら録音したというフィールドレコーディング音源や空間的なシンセサイザーから、重低音を響かせるコントラバス、神秘的な聖歌隊の合唱にいたるまで、さまざまな音像を重ねていくうちに紡ぎ出されるディープな音世界は唯一無二。淡々と奏でられていくハーモニーからは悲哀や喪失感を感じさせる一方で、心地良さや安心感も持ち合わせているのが特徴だ。
*「フィガロジャポン」2024年1月号より抜粋
text: Hitoshi Kurimoto