黒人女性初のブッカー賞受賞作ほか、いま読みたい4冊。
Culture 2023.12.18
黒人女性として初のブッカー賞、最高にエンパワメントな傑作。
『少女、女、ほか』
50代にしてついに劇作家としてブレイクを果たしたアマのもとに家族や友人たちが集う。イギリスで黒人として差別と闘いながら生き抜いてきた女性たち12人の人生が語られていく。年齢も職業もさまざまな彼女たちはそれぞれの苦難を乗り越えてきた。悲壮感がないのはウィットに富んだ文体の賜物だろう。人生捨てたもんじゃないと思わせてくれる爽快でエンパワメントな読後感。著者は黒人の女性作家では初めてブッカー賞を受賞した。
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伝説の文芸批評家が選んだ、いまを生きる力をくれる本たち。
『エクス・リブリス』
ミチコ・カクタニといえば、ニューヨーク・タイムズで書評を担当。辛口の批評で名を馳せ、1998年にはピュリツァー賞を受賞している。そんな彼女が自らの愛読書を語った本書には目利きのバイヤーのセレクトショップをのぞくような喜びがある。『白鯨』のような古典的名作であれ、ハリー・ポッターやシェイクスピアであれ、その魅力を彼女ならどう語るのか。読書することは古びた思考習慣を乗り越える力を鍛えることだと教えてくれる。
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身近で奥深いフィールドワーク、おいしく食べられる雑草の世界。
『道草を食む 雑草をおいしく食べる実験室』
「雑草という草はない」と言ったのは植物学者の牧野富太郎だけれど、わざわざハーブを育てなくても、道端にこんなにも多種多様な植物が息づいていることにまず驚かされる。しかも、この本では個性豊かな雑草のクセを知り、上手に調理しておいしくいただいてしまおうというわけだ。古くから民間薬として使われているなど、効能も見逃せない。イタドリのまぜごはん、ツユクサのパンケーキ......すべて試してみたくなるレシピ付き。
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戦場カメラマンが見つめ続けた、27の国で暮らす子どもたち。
『元気? 世界の子どもたちへ』
戦場カメラマンとして紛争地帯や辺境の地に足を運ぶたび、真っ先に心を開いてくれたのはいつも子どもたちだった。標高2000mを越える山の学校に通うアフガニスタンの少女。エルサルバドルの市場で働く子どもたち。内戦前のシリアで夢を語った少年はいまどうしているのか。過酷な環境でたくましく生きる子どもたちの日常に寄り添う写真とコラムに胸を衝かれる。国や文化の異なる人と、ともに生きるヒントが詰まった一冊。
*「フィガロジャポン」2024年1月号より抜粋
text: Harumi Taki