「審査員に男性がいたら、優勝はあり得なかった」大会初のショートカットのミス・フランスが酷評されている理由とは?
Culture 2023.12.23
ミス・フランス2024のショートヘアが話題になっている。その理由を歴史家のエリザベス・ド・フェイドーに聞いた。
ーーマダム・フィガロ - ショートヘアでセンセーションを巻き起こした2024年ミス・フランスのイヴ・ジルですが、なぜ彼女のヘアスタイルが話題になっているのでしょうか?
エリザベス・ド・フェイドー−興味深いのは、彼女は他とは異なる点にあり、他の人は最終的にはみんな似て見えました。彼女を見て、私はすぐに思いました:「この人は違う、ちょっとオードリー・ヘップバーンのような一面がある」と。彼女の勝利に対する反応に関しては、女性のショートヘアが常に違和感を引き起こしてきたことを知る必要があります。それは、髪が究極の女性的装飾品と考えられていた古代にまでさかのぼります。髪は誘惑と女性らしさの象徴だったのです。東洋でも西洋と同様に、髪はエロティックな誘惑、そして絶対的な女性らしさの象徴的存在だったのです。そのため、西洋の中世では、女性は恥ずかしさから頭を覆いました。今日でも、美しく整えられた髪は手入れが必要であり、それゆえ洗練や健康の証でもあります。髪はしっとりしているため、皆手を通すのが好きです。ボードレールの作品を再読すれば、納得できるでしょう。髪はどこまでも広がる海のようで、人はそこに魅了されるのです。
ーーしかし、社会が進化しても尚、女性のショートヘアが否定的に見られているのはなぜでしょうか?
長い間、髪を切ることは罰や義務と結びついていました。囚人女性、死刑囚の女性や裏切り者は頭を剃られたのです。第二次世界大戦末期、ドイツ軍に協力したとして告発された人々がどのような扱いを受けたかを見ればわかるでしょう。また、貧困のために髪を売ることを余儀なくされた女性もいます。1900年から1910年にかけて、女優のポレールや作家のコレットのように、女性が自発的に髪を切り始めたとき、そこにはふたつのメッセージがありました。ひとつはもちろん自立、もうひとつは性的指向です。髪を切った人たちは、自分たちが女性を好んでいることを示していました。そして、イヴ・ジルの当選に反応したコメントを読むと、このような偏見が見られます。2023年となった今でも。
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ーー「髪を切ることは、非常に象徴的でもある......」
1920年代にいわゆるギャルソンヌが行ったように、髪を切ることは解放と自立を連想させます。実際、別れたり、離婚したりした後に髪型を変える女性は珍しくありません。私は「エネルギーカット」と呼ばれるヘアカットの技法を行う人と話をしましたが、その人は髪が体の最後の記憶と説明していました。失恋の後、私たちは再生し、新しいページをめくりたいと思うものです。まるで本能的に、体と感情の最後のメモリを切り取ることで、それを取り除くかのようです。それには「リセット」の側面があります。この場合、女性は自らの希望で選択をし、それを受け入れるのではなく、弱体化するのではなく、髪が武器となって強化する要素となります。
ーーショートヘアのミス・フランスの優勝は、時代遅れと考える人もいる美人コンテストの前進なのでしょうか?
何よりも、イヴ・ジルが優勝したのは、審査員が女性だけだったからだと思います。彼女は女性の美の基準は満たしていますが、男性の好みには合いません。もし審査員が男女混合だったら、間違いなく同じ評価は得られなかったでしょう。かなりアンドロジナスな体つき、ショートヘア......彼女は女性の好みに合った基準で選ばれました。2023年、バービー人形はもうたくさんだということを証明するかのようです。
ーー実際、ソニア・ロラン、リンダ・ハーディなど何人かの元ミスたちは「在位」後に髪を切りました:美の女王のタイトルから差別化するためでしょうか?
髪が非常に長かった場合、(髪を切ると)、軽減感があります。そして、伝統的な女性の属性以外の要素に注目が集まり、それがメッセージになります。髪は飾り物ですので、それを取り除くと視線が強調され、知性が際立ちます。ミス・フランスはそこが際立っていて、最初から自分のスタイルを押し出しており、そこが生意気な印象なのでしょう。彼女は知的で自由を示すことができる現代のギャルソンヌのように映ります。しかし、社会にとって最も受け入れがたいものであり、賞賛の引き金にも苛立ちの引き金にもなるのです。
エリザベス・ド・フェイドーは歴史家で、『Elsa Schiaparelli, l'extravagante(原題)』(Flammarion刊)の著者である。
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【画像】髪をショートにしたセレブたち
デミ・ムーア、1984年1月のブルネットヘアと1989年9月のボウルカット。
photography: Getty Images
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フローレンス・ピュー、2023年4月のフリンジボブと2023年7月のマシュマロピンクのベリーショート。
photography: Getty Images
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ケリー・ラッセル、1999年1月のカスケードカールと1999年のショートヘア。
photography: Getty Images
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ゾーイ・クラヴィッツ、2014年3月のシンメトリーボブと2020年1月のピクシーカット。
photography: Getty Images
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モナコ公国のシャルレーヌ公妃は、2019年12月にクラシックなボブに、2023年11月には少し控えめなショートヘアに。
photography: Getty Images
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モニカ・ベルッチ、2019年8月の前髪ありのロングヘアフリンジと同年12月のショートカット。
photography: Abaca / Patrice van Malder pour Madame Figaro
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ケイト・マーラ、2014年1月のロングボブと2015年7月のツイッギーカット。
photography: Stefanie Keenan / Paras Griffin / Getty images
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ヴァネッサ・パラディ、2012年1月のボヘミアンロングヘアと1997年10月のボーイッシュカット。
photography: Getty Images
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ミシェル・ウィリアム、2020年2月のブロンドロングヘアと2019年4月のポーラーブロンドのショートカット。
photography: Getty Images
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リアーナ、2017年11月のボリュームのあるブローヘアと2008年2月のショートカット。
photography: Abaca
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ジェニファー・ロペス、2020年11月のウェービーボブと2021年2月のウェットな質感のショートカット。
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ハル・ベリー、2004年3月のカーリーヘアと2002年3月のボーイッシュカット。
photography: Abaca press
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ルイーズ・ブルゴワン、2018年9月の栗色のロングヘアと2015年5月の束感のあるショートヘア。
photography: Abaca press
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セリーヌ・ディオン、1998年4月のクラシックなロングヘアと2000年6月のブリーチカラーのボーイッシュなカット。
photography: Abaca press
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ロビン・ライト、映画『プリンセス・ブライド』を彷彿とさせる2005年のロングヘアと 2014年2月のボーイッシュカット。
photography: Getty Images
text: Justine Feutry (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi