上海、プラダの歴史を巡る旅へ。

Culture 2023.12.28

中国・上海で開催されたプラダの歴史を辿る展覧会『プラダスフィアⅡ』。共同クリエイティブ・ディレクターであるミウッチャ・プラダとラフ・シモンズがキュレーションした、重層的なエキシビジョンとは?

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フラテッリ・プラダの店舗の一部を再現し、当時の作品を収めた超高画質動画や近年復刻されたバッグのほか、1920年代初期にマリオ・プラダが依頼した壁画のレプリカを飾った部屋。

本展覧会を巡る前に、まずプラダの歴史を振り返ってみたい。1913年にミウッチャ・プラダの祖父、マリオ・プラダが創設。現在も店舗を構える、ミラノのガレリア・ヴィットリオ・エマヌエーレII世内のフラテッリ・プラダに端を発する。そこで発売したバッグやトランクが瞬く間に評判を呼び、イタリア王室御用達に。70年代半ばにミウッチャ・プラダが参画、1988年秋冬にはレディスウエアを発表。以来、独自のビジョンと美の定義を持つ彼女の鮮明なクリエイティビティによって唯一無二のブランドとなる。2021年春夏からはプラダを愛してやまないラフ・シモンズが共同クリエイティブ・ディレクターとして参加し、革新の歩みを推し進めている。

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会場にはミウッチャ・プラダとラフ・シモンズの姿も。歴史ある南浦駅舎を2022年12月にジャン・ヌーヴェル設計で改築したSTART星美術館での大規模展覧会は今回が初。ラフ自身も本展をキュレーションする中でプラダの伝説的ナイロンウエアの誕生のエピソードなど、初めて知る事実があったという。

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この『プラダスフィア』展は初回を2014年にロンドンと香港で行い、今回が2回目。本展は単に110年というヘリテージの回顧には留まらない。ミウッチャが先鞭をつけたアート、建築、文化との関わりなど、ファッションがもたらす社会への多面的な影響力を掘り下げ、ラグジュアリーの本質を浮き彫りにしている。

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イタリア語で倉庫を意味する「マガジーノ」には、1988年からのレディスとメンズを各シーズン4~5ルックずつ、計200点余りを展示。「歴史的な文脈でアプローチすることが大切だと思ったので、ファーストシーズンから今日までの変遷を、順を追うように並べました。膨大なルックから限られた数を選ぶキュレーションは簡単な作業ではありませんでした」(ラフ)

さらに特筆すべき点として、ラフ・シモンズという強固なパートナーの視点がある。メイン会場「マガジーノ」のルックはラフが厳選。

「時間軸に沿ってクリエイティブを俯瞰することで発見があった。現在のプラダへと続くDNAは、すでにファーストコレクションで創り上げられていたんだ」と振り返る。ここから枝分かれするように配された各部屋には、プラダの足跡やアーティストとのコラボレーションなどがファセットのように彩る。ミウッチャはこう語る。

「制作プロセスもクリエイティブも似ているが、アートとファッションは似て非なるもの。アートはすべての人の中にあり、何をもってアートとするか。私が行ってきたのはファッションである」

あたかも一冊の書物をじっくりと読み解くように、プラダとゲストとの内なる対話を楽しめる極上の経験ともいえるだろう。

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プラダのサステナビリティな素材開発の取り組みを示す「リ・ナイロン」。ナショナル ジオグラフィックと共同制作したショートフィルムも上映。

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ミラノのスピガ通りを皮切りに世界へと展開したプラダの店舗。アイコニックなライムグリーンのディスプレイに、歴代のシューズが並べられた「グリーンストア」

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「マテリアリティ」には本展のために制作された初公開のスカート20点を展示。斬新な素材使いによる工房の技の結集を見て取れる。

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PRADASPHERE II

会期:開催中~1/21
会場:START星美術館
中国上海市徐匯区瑞寧路111号
入場無料
www.prada.com/ww/en/pradasphere/events/2023/pradasphere-shanghai.html

text: Hiroko Koizumi

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