フレンチカップルの恋愛事情。 カップルにとっていちばん上手い別れ方。

Culture 2024.01.03

いま、フランスのカップルたちはどんなことに悩み、どんな恋愛観を持っているのか? 恋愛に求めることや別れ方など、時代によって変わるリアルな恋の在り方を見ていこう。

いちばん上手い別れ方。

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カップルにとって、"いい別れ方"とは一体何だろう? いま、ダイレクトに別れるよりも、少しずつ相手との距離を取って別れる「クワイエットクイッティング」を選択する人々が増えてきている。果たして、お互いの感情をむき出しにしたケンカ別れよりも本当にいいの?

別れのための準備。

ローラ(30歳/内装建築家)の場合:
「私は彼(アレクシ)とカップルの関係を続けたいという気持ちも少しはありましたが、やはり失敗が目に見えていたので、関係修復の努力はしませんでした。『別れましょう』という決定的なフレーズを口にすることなく、彼のことを考えず、ジムに行き、友人とテラスでアペロし、週末はお買い物に行く。こうして関係をゆっくりと終わらせられればと思っていたんです」。ある日、ケンカをして、やっとアレクシと別れることができたローラ。別れに踏み切ることができないまま約3年が経ち、3年の間、彼女は相手が別れを切り出してくれることを願って立ち止まっていたと言う。「別れるまでの1年半はセックスもしませんでしたが、アレクシは別れを切り出して来なかった。彼は目を瞑っていたかったのだと思います」と彼女は分析する。

アメリカ人心理学者テレサ・E・ディドネートの見解:
このように段階的にひっそりと関係を解消していく離脱方法は「クワイエットクイッティング」と呼ばれている。もともとはビジネスの世界で、働きすぎず、定められた最低限の仕事に徹する従業員を指す言葉だった。「同じように、共通のアクティビティを避けるなど、最低限の関わりにとどめ、密かに関係を終わらせていくカップルがいます。クワイエットクイッティングは別れるための単なる時間稼ぎの方法かもしれません。自分の決意が正しいことを確信し、別れの準備をするための時間。出口を見つけるための戦略にもなるでしょう」。2023年、ビジネスにおいても愛情においても、感情をぶつけ合って去るよりも、静かに姿を消すのがトレンドのようだ。

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傷つけるのが怖い。

エディ(36歳/イラストレーター)の場合:
「彼女と別れるために、付き合って最初の数カ月に比べてうんと距離を置き、夜に会う提案もしなくなり、メッセージの回数も減らし、週末を田舎で過ごすような休暇もなくし、彼女と24時間以上一緒にいることを避けました。彼女が『彼は変わってしまった』と考えて自分から離れていってくれたらいいなと思ったんです」。自分から別れを切り出さなかったのは「そのほうが彼女の苦痛が少ないだろうと思ったから」。過去に別れを経験して、自分がどんなに相手に辛い思いをさせたかをわかっていたから「彼女を悲しませるのが怖かった。ショックが大きすぎるだろうと考えたんです」

心理学者イザベル・ルヴェールの見解:
「別れの言葉の中には、まるで刃物のように相手を傷つけるものもあります。怒りや悲しみの感情が生まれることも多いでしょう。そのようにパートナーの苦痛を予測することで罪悪感が生じ、別れを切り出せず、現状を維持してしまうのです」。しかし、言葉にしなくとも「捨てられ、距離を置かれた」という感覚は、はっきりと言葉にされた別れと同じような結果を生むこともある。「言葉で告げられなくても、ふたりの間には溝が生まれます。ですが、完全な別れを迎えていないため、相手はふたりの関係が終わりに近づいていることを本当の意味で理解できないのです」。はっきりとした答えがないために、怒りや拒絶の感情といった自己防御反応さえ得られないケースもある。

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言葉にしてくれない。

シュザンヌ(年齢・職業不明)の場合:
パートナーのトムとの関係に影が差し始めたのは数カ月前。彼はひっきりなしにスマホをいじり、シュザンヌへの興味を失ったことを隠そうとしなかった。「彼の目には私は存在しないも同然でした」。彼女は諦めなかった。「恋していましたし、長い時間をかければ、事態は好転するだろうと希望を持っていました。彼のほうから、別れを切り 出す素振りはなかったので、私は興味を持ってもらうために、何でもしなくてはという気持ちでした」

心理学者イザベル・ルヴェールの見解:
「たいていの場合、クワイエットクイッターは争いを嫌い、不満があっても明確に意思表示できずに、くよくよ悩むタイプ。本来、別れを切り出すことは責任を取ることでもあります。後で決断を悔やんだら? 相手の気持ちを傷つけて取り返しのつかない過ちを犯し、後戻りできなくなったら?」。言葉に責任を持つ勇気がないので黙ったままでいても、結局最後には別れるための言い訳を探さなくてはいけなくなる。

【合わせて読みたい】
現代における"ロマンティックな恋愛"って何?
一生ひとりのパートナーを愛し続けることはできる?

*「フィガロジャポン」2023年11月号より抜粋

text: Ségolène Forgar (Madame Figaro)

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