韓国ドラマの食事から知る、韓国の日常。 おせっかいが愛情表現。『サイコだけど大丈夫』

Culture 2024.01.05

韓国ドラマによく登場する食事シーンは、主人公たちの心情や、作品のコンセプトそのものを伝える役割を果たす。食材やメニュー、食卓の風景などからもっと深くドラマを理解しよう。


 

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うずらの卵煮は代表的なミッパンチャン(常備菜)のひとつ。韓国の食卓ではミッパンチャンが何皿も並ぶ。『サイコだけど大丈夫』にはさまざまな料理が登場して、いずれも意味深いが、なかでも印象的なのがうずらの卵煮。伝統的な食事作法として、おかずは箸、ごはんと汁はスプーンで食べるのだが、童話作家の女性はうずらの卵が箸で上手につかめない。主人公の保護士は代わりに卵を取って、彼女のごはんの上に載せてあげる。最近ではマナー違反と言われることもあるが、韓国の人々は食事の時は少々おせっかいで、おいしそうな料理があると、勝手にごはんの上に載せてくれる。外国人は「なんで直箸で......」とキッとなったりもするのだが、それが幼い頃から家庭で学んできた愛情表現。彼らが両親や祖父母から、そうやって愛されてきた証なのだ。

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『サイコだけど大丈夫』
幼い頃に両親を亡くした自閉症スペクトラムの兄と精神科病棟で働く保護士の弟。ふたりの前に現れた女性童話作家は、反社会性パーソナリティ障害の傾向があり、人の気持ちはもちろん、愛という感情さえわからない。世の中の基準で見ればサイコにも見える3人が、互いの心の傷を癒やしながら成長していく。
監督/パク・シヌ 脚本/チョ・ヨン 出演/キム・スヒョン、ソ・イェジ、オ・ジョンセほか
Netflixにて独占配信中

Text: 伊東順子
1990年に渡韓し、企画、翻訳オフィスを運営する。2017年に同人誌「中くらいの友だちー韓くに手帖」(皓星社刊)創刊。著書に『韓国カルチャー 隣人の素顔と現在』(集英社刊)、7月には第2弾を発売予定。

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*「フィガロジャポン」2023年9月号より抜粋

illustration: Kaeko

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