フランスの宮廷文化とシャンパーニュに酔いしれた、『ジャンヌ・デュ・バリー』試写会の様子をお届け!

Culture 2024.01.30

革命前夜、フランスの宮廷文化が爛熟した時代ーー。愛に生きた女性と王の生涯を描いた映画『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』。シャンパーニュ「ルイ・ロデレール コレクション244」を味わいながらのトークショーも盛り上がった、日本初公開のプレミアム試写の様子をレポート!

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スクリーン入場口前に設置されたフォトスポットでは、ロココな雰囲気も漂うテーブルに深紅のバラとシャンパーニュのボトルが。

ワインを自分らしく楽しむための新しいコミュニティ「フィガロワインクラブ」のプレイベントとして開催された本イベント。受付を済ませた観客を待ち受けていたのは、泡立ちも美しいルイ・ロデレール コレクション244と、ワインテイスト飲料のジョエア・オーガニック・スパークリング・シャルドネだ。多くの人がドリンクを持ったままスクリーンの入場口前に用意されたフォトスポットへ進み、写真を撮る様子が見受けられた。

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きめ細かい泡が立ち上るルイ・ロデレール コレクション244。

観客はドリンクを持ったまま劇場内へ。上映を前に、シャンパーニュや劇中で描かれるフランス文化の理解度を深めてくれるトークショーが始まった。登壇者はルイ・ロデレールを輸入販売するエノテカ株式会社で広報を担当する佐野昭子さんと、服飾史家、著述家の中野香織さんだ。

「映画のなかでルイ15世とデュ・バリー夫人の初対面時に『シャンパーニュは?』と勧める言葉が出てくるので、ぜひ注目してみてください。18世紀のこの頃、すでにシャンパーニュは存在していたんですね」と語り始めた佐野さん。

ルイ・ロデレールは2世紀以上にわたり一貫して家族経営を続けている老舗メゾン。同社がロシア皇帝アレクサンドル2世の特注を受け、1876年に生産を始めた「クリスタル」は歴史あるプレステージシャンパーニュとして名声を博している。シャンパーニュの多くの造り手は栽培農家からブドウを買い付けるのが一般的だが、ルイ・ロデレールでは約240haに及ぶ自社畑を所有しており、必要なブドウの約3分の2を自社でまかなっている。シャンパーニュ地方における最大級のオーガニック生産者のひとつで、自社畑の約半分をオーガニック栽培しているのだという。

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佐野さんが覚えておいてほしいキーワードとして挙げたのが「マルチヴィンテージ」という言葉だ。

「シャンパーニュ地方は、北海道最北端の稚内よりも北、ブドウの栽培限界地に位置しており、気温が1年を通じて低く、日照時間も短く、そうした環境からブドウの成熟が非常に難しい土地なんです。年ごとにブドウの出来不出来の影響を強く受けるので、シャンパーニュは複数の収穫年の原酒をブレンドして造られるようになりました。これが『ノンヴィンテージ』のシャンパーニュ。生産者ごとに、一貫性のあるスタイルが重視されてきました」

ところが現在、地球温暖化などによってシャンパーニュ地方の環境は大きく変化している。以前では考えられなかったような、十分に熟した高品質なブドウが多く作られるようになってきているのだという。

「そこで誕生したのが、メゾンのスタイルの一貫性に加えて、年ごとの個性と、土壌などブドウの生育環境を表現した『マルチヴィンテージ』のシャンパーニュです。ルイ・ロデレールでは2021年に、ノンヴィンテージからマルチヴィンテージの「コレクション」にフルモデルチェンジしました。数字はルイ・ロデレールの創業から何回目の収穫かということを表しています。いまお飲みいただいている『コレクション244』は244回目の収穫となったということですね。 17~18世紀から脈々と歴史を受け継ぐシャンパーニュですが、その中身は大きく進化しています。映画とともにシャンパーニュのいまと昔にも、ぜひ想いを馳せてみてください」

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トークショーの様子。左からフィガロジャポン編集長代理の森田聖美、服飾史家の中野香織さん、エノテカ株式会社の佐野昭子さん。中野さんは革命前の貴族の男性が着ていた上着「アビ」を現代的に再現した、まるで『ベルばら』のオスカルのようなファッションで登場! アビの制作はアーティストのアキさん(@akitakechakoff

映画の主人公となるジャンヌ・デュ・バリーは、劇中で「公妾」という地位を得る。いったいこれはどういう立場なのだろうか? 中野さんが解説する。

「公妾はフランス語で『maîtresse en titre(メートレス・アン・ティートー)=タイトル付きの愛人』、とでもいうような意味で、半官半民の存在です。王妃と同じく宮殿に住んでいるし、ご飯も一緒に食べることができる。政治的な権力を持つこともでき、文化的にも多大な影響力を発揮した存在だったんですね」

ジョニー・デップ演じるルイ15世は、わずか5歳で国王の地位を継ぎ64歳で病没するが、その生涯で6人の公妾を持ち、デュ・バリー夫人は6代目だ。しかし、そのほかにも王は愛人を持つことができた。

「『petit maîtresse(プティメートレス)=小さな愛人』は『愛妾』と呼ばれ、公妾より低い立場でした。ルイ15世は10人の愛妾がいたという記録があり、"お盛んな"王様だったと言えますね。そのおかげで政治はガタガタになっていくのですが、子孫だけはたくさん残したわけです苦笑」

デュ・バリー夫人、というように、王の愛人となるには既婚者女性でなければならなかったのだという。ここにも、フランスの宮廷時代の体質が浮かび上がる。

「18世紀のフランスでは、未婚女性は一人前ではないとみなされていました。女性は若いうちに、親が決めた顔もよく知らない相手にとりあえず嫁がされる。結婚してからやっと一人前の人間として扱われ、夫も妻も自由に恋愛を楽しみ、それぞれ愛人を持って自宅に呼んだりする。古いフランスの邸宅を見ると、妻と夫が居館の両端に住んでいたりしますが、これはお互いの愛人と鉢合わせないようにするためです。結婚と恋愛は別物であり、嫉妬を表に出すのは洗練されたふるまいではないとされていたのです」

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ルイ15世の愛した女性の中でも別格だったのが、映画の中でも名前が登場するポンパドゥール夫人だ。

「先ほど申し上げたように、顔も知らない相手の元に嫁がされたいちばん有名な例がルイ16世の妃になったマリー・アントワネットです。そしてこの結婚を推し進めたのが、5代目の公妾として有名なポンパドゥール夫人なのです。贅沢好みで政治が嫌いだったルイ15世に代わって政治の実権を握るようになり、当時フランスの脅威だったプロイセンに対抗するためにオーストリアの女王マリア・テレジアやロシアの女皇エリザヴェータと協定を結び、その人質のような形でフランスに送られてきたのが幼いマリー・アントワネットだったのです。王に愛されたポンパドゥール夫人は博識で芸術への造詣が深く、サロンを開き多くの芸術家や思想家を育てました。その場所のひとつが、現在フランス大統領が執務を行うエリゼ宮の中にあります」

ちなみにポンパドゥール夫人は、シャンパーニュとのつながりもあるという。佐野さんが語る。

「この頃シャンパーニュは、その華やかさからフランスの宮廷で大流行していたそうです。ポンパドゥール夫人も非常にシャンパーニュを好んでいたそうで、ケース単位で注文していた記録が残っており、『女性が飲んで美しくいられるのはシャンパーニュだけ』という有名な言葉が残っています。ちなみにこの時代に飲まれていたのはいまのような辛口の味わいではなく、大変な甘口だったそうです! デザートワインのように飲まれていたんですね」

映画を観る前に世界観を深めてくれるトークショーが盛り上がりを見せ、上映が始まった。愛に生きたジャンヌ・デュ・バリーは天使だったのか? 悪魔のような女だったのか? その結末をぜひ、2月2日の映画公開後、劇場で確かめてみてはいかがだろう。 

フィガロワインクラブでは今後も、ワインと映画や芸術にまつわるイベントを随時開催予定。ぜひ今後とも、動向をチェックして。

『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』
●監督/マイウェン
●出演/マイウェン、ジョニー・デップ、バンジャマン・ラヴェルヌ、ピエール・リシャール、メルヴィル・プポー、パスカル・グレゴリー
●2023年、フランス映画
●116分
●配給/ロングライド
●2024年2月2日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開
公式サイト:https://longride.jp/jeannedubarry/index.html
公式X:https://twitter.com/dubarry_j
©️2023-WHY NOT PRODUCTIO NS-FRANCE 2 CINEMA- FRANCE 3 CINEMA-LA PETITE REINE-IMPALA PRODUCTIONS

 

text: madame FIGARO japon

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