春を感じる週末に訪れたい、展覧会4選。
Culture 2024.04.04
野性的な造形から洗練と抽象化への道。
『ブランクーシ 本質を象る』
純粋なフォルムの探究により20世紀彫刻の領野を切り開いたルーマニア出身の彫刻家ブランクーシ。同時期に発見されたアフリカ彫刻など非西欧圏の芸術に見いだされた野性的な造形を特徴としながら、素材への鋭い感性に裏打ちされた洗練されたフォルムを追求し、同時代と後世の芸術に多大な影響を与えた。本展は彫刻を中核にフレスコ、テンペラなどの絵画やドローイング、写真作品が織りなす創作活動全体を紹介する、日本の美術館では初の機会となる。写実性や師ロダンの影響が見られる初期から対象のフォルムをエッセンスへと還元させた1910年代、『鳥』に代表される主題の抽象化を進めた1920年代以降までの歩みを示す充実した展観が実現する。
会期:開催中〜7/7
会場:アーティゾン美術館 6階展示室(東京・京橋)
営)10:00〜17:30最終入場 ※5/3以外の金は19:30最終入場
休)月、4/30、5/7 ※ 4/29、5/6は開館
料)ウェブ予約チケット¥1,800
⚫︎問い合わせ先:
050-5541-8600(ハローダイヤル)
www.artizon.museum
---fadeinpager---
美術館という場の力を問い直す試み。
『ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?――国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ』
20世紀前半までの西洋美術を収蔵・展示してきた国立西洋美術館にとって開館65年の歴史で初めてとなる、現代美術のアーティストとの大々的なコラボレーションによる展覧会。未来の芸術家の制作活動に資することを望む館設立の原点を見つめ直し、館の未来を思い描く中で生まれた挑戦的な本企画を通して、いまこそ美術館という場の力を問い直す。梅津庸一、遠藤麻衣、小田原のどか、ミヤギフトシ、ユアサエボシといった次世代を担う鋭敏な作家たちが所蔵作品からインスピレーションを得た作品や美術館の意義を問い直す作品を発表。エスタブリッシュな美術の殿堂と重厚なコレクションにどのような眼差しを向け、問題を投げかけるのか興味深い試みとなるはずだ。
会期:開催中〜5/12
会場:国立西洋美術館(東京・上野)
営)9:30〜17:00最終入場 ※金・土は19:30最終入場
休)月、5/7 ※4/29、5/6は開館
料)一般¥2,000
⚫︎問い合わせ先
050-5541-8600(ハローダイヤル)
www.nmwa.go.jp
---fadeinpager---
国際交流が生んだ文化的アイデンティティ。
『スーラージュと森田子龍』
戦後抽象絵画を代表する画家のひとりである「黒の画家」ピエール・スーラージュと1952年に「墨人会」を結成し、新しい書のあり方を追い求めた森田子龍。1950年代から交流したフランス現代絵画の巨匠と兵庫県出身の世界的書家の、初めての二人展が開催される。モノクロームの作品を描く画家たちを「白黒の仲間」と呼んで励みとした森田は1958年初来日したスーラージュと直接意見を交わし、1963年にはパリでスーラージュ夫妻と再会した。ふたりの芸術家の出会いを通して、戦後、海外の抽象画と日本の前衛書が国境やジャンルを超えて同時代性を示していたことがうかがい知れるとともに、ルーツを超えた文化的アイデンティティについても深く考えさせられる展覧会だ。
会期:開催中〜5/19
会場:兵庫県立美術館(兵庫・神戸)
営)10:00〜17:30最終入場
休)月、4/30、5/7 ※ 4/29、5/6 は開館
料)一般¥1,600
⚫︎問い合わせ先:
tel:078-262-1011
www.artm.pref.hyogo.jp
---fadeinpager---
鑑賞者のふるまいが炙りだす他者や社会。
『サエボーグ「I WAS MADE FOR LOVING YOU」/津田道子「Life is Delaying 人生はちょっと遅れてくる」Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024受賞記念展』
中堅作家を対象とした複数年にわたる継続的支援により、更なる飛躍を促すことを目指した現代美術の賞、Tokyo Contemporary Art Award(TCAA)。4回目の受賞者、サエボーグと津田道子の個展が開催される。ラテックスのボディスーツを着たパフォーマンスを通して人間と動物の関係性を問いかけてきたサエボーグは、鑑賞者がパフォーマンスの一端を担うことで観る側が観られる側に回る仕掛けを試み、"ケア"の視点に立った作品を発表する。強く関心を寄せてきた"身体性"を追求する津田は、自身の幼少期に最初に撮影されたホームビデオに収められた家族の出来事から着想した新作を中心に、鑑賞者を巻き込む映像装置が組み込まれたインスタレーションを発表する。
会期: 開催中〜7/7
会場:東京都現代美術館 企画展示室3F(東京・清澄白河)
営)10:00〜18:00
休)月、4/30、5/7 ※4/29、5/6は開館
料)無料
⚫︎問い合わせ先:
050-5541-8600(ハローダイヤル)
www.tokyocontemporaryartaward.jp
*「フィガロジャポン」2024年5月号より抜粋
text: Chie Sumiyoshi