オランダのカタリナ=アマリア王女がマフィアに脅迫を受けている理由とは?

Culture 2024.05.08

オランダの王太子であるカタリナ=アマリア王女は2年前から殺害や誘拐の脅迫を受けてきた。これまでの経緯を振り返る。

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国賓晩餐会に初出席のカタリナ=アマリア王女。(アムステルダム、2024年4月17日) photography: Abaca

「スペインがオランダの麻薬王をうっかり解放」。そんな見出しが今年の4月、インターネットで躍った。記事によるといわくつきの麻薬犯罪者が最近、スペイン司直のミスで釈放されてしまった。インターポールが5年前から追いかけていたこの男、カリム・ブヤクリチャンはこれ幸いと行方をくらまし、現時点でも所在が確認できていない。

嘘のような話だが、さらに驚くべきことに、このカリムはある王族に対し、誘拐や殺害予告を繰り返していた人物だったのだ。その王族とは未来のオランダ女王、カタリナ=アマリア王女だ。

女王になりたくなかったプリンセス

覚えているだろうか、3年前にカタリナ=アマリア王女の伝記が発表されたことを。そのなかで王女は、自分にはまだ王位を継承する心構えができていないと語り、もし父が早世したら母にしばらく代位を頼みたいと話していた。普通の暮らしに憧れているのだろうなと、まだ10代だった王女の話をなんとなくほほえましく思ったものだ。ところがその後、王女には大変な試練が待ち受けていた。

モロッコ系マフィア

2022年9月、カタリナ=アマリア王女はアムステルダム大学に入学し、政治学、心理学、法学、経済学を専攻し始めた。当初は他の学生と共同生活を送っていたものの、じきに誘拐や殺害予告を受けるように。オランダのマルク・ルッテ首相と王女に対して脅迫してきたのは国際的な麻薬・コカイン密売を大々的に組織するモロッコ系マフィア。オランダ王室は動揺した。

カタリナ=アマリアは引っ越しせざるをえなくなった。ハーグにある王家の宮殿にこもり、外出するのは警護をつけた上で授業に出席するときだけだった。がんじがらめの生活を送る20歳の王女は、見知らぬ土地での自由な生活をなおさら夢みたことだろう。しかも王女の警護体制には不備があることが判明した。結局、王女は海外に行くことにしたとタブロイド各紙は報じた。

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マドリードで過ごした1年

オランダのマスコミによると、王女は1年余りをマドリードで過ごし、スペインのフェリペ6世とレティシア王妃の宮殿で守られて過ごした。学業はオンライン授業で続け、日常生活をほぼ取り戻したように見えた。その頃の、マドリードのエル・レティーロ公園を散歩したり、買い物に出かける王女の写真が残っている。オランダ放送協会の報道によれば王女はその後アムステルダムに戻った。そして今、モロッコ系マフィアのリーダーで、カタリナ=アマリアに対する脅迫の実行犯とされるカリム・ブヤクリチャンが逃亡中であることが明らかになったのだ。

司法のミス

一体どうしてこんな事態となってしまったのだろう。カリムは今年の1月、600万ユーロのマネーロンダリングの容疑でスペインのマルベリャにて逮捕され、身柄を拘束された。ところが2月末、マラガ裁判所は彼を仮釈放してしまう。その際、判事は被告のパスポートを没収するだけにとどめた。カリムの保釈金は5万ユーロで、月に2日、警察署に出頭するように言い渡された。

しかもマラガの裁判所はスペインの最高裁に当たる「全国高等裁判所(Audiencia Nacional)」の逮捕状発行を突っぱね、まずマネーロンダリングの罪に対して地元で裁くと主張した。カリム・ブヤクリチャンを麻薬密売の罪で裁きたいオランダ当局による緊急の身柄引き渡し要請も無視された。もちろん、当の本人はこのいざこざに乗じてとっとと逃げ出した。おおよそ3週間前の4月初めから行方不明になっているそうだ。

スペインのある閣僚はメディアで、この麻薬王と目される人物ができるだけ早く「司直の手にゆだねられる」ことを約束しているが、この人物がアムステルダムに舞い戻る可能性にオランダ王室が怯えているであろうことは想像に難くない。いまのところ、王女に対する脅迫の理由は明らかになっていないが、犯人の動機は金銭的なものである可能性が高い。わかっているのは、カタリナ=アマリア王女が自分の人生を決然と歩み始めたことだ。4月17日にはアムステルダムで初めて国賓晩餐会に出席した。

text: Chloé Friedmann (madame.lefigaro.fr)

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