仕事が私にくれたもの:シンシア・ヴィルチェス・カスティリオーニ アリータのディレクター、シンシア・ヴィルチェス・カスティリオーニ。
Culture 2024.05.11
身に着ける人の性格や記憶に繋がり、
寄り添えるジュエリーを作りたい。
「コンテンポラリーで遊び心があって、ガーリー。それと同時にエレガンスも持ち合わせたジュエリーを作りたい。身に着ける人が思わず笑顔になり、とても身近に感じられるものづくりを目指しています」
とは、イタリア発のジュエリーブランド、アリータの創立者兼クリエイティブ・ディレクター、シンシア・ヴィルチェス・カスティリオーニ。南米のベネズエラで生まれ育ち、ファッションマーケティングを学ぶためにミラノに移住したシンシアは「アリータはイタリアだからこそ生まれたブランド。私が尊敬するイタリアの職人たちの伝統的なテクニックがアリータのジュエリーを特別なものにしてくれるのです。ふとした時に浮かんだアイデアが実際にジュエリーとして完成した時はいつも興奮する」と言う。家、恐竜、動物、フルーツなど、アリータのジュエリーは温かみがありどことなくメランコリックなモチーフも多い。
「身に着ける人の性格、幼い日の思い出、家族といった本人に繋がる何かを感じさせることができるのがジュエリーの魅力。着けていると安心できて、ひとりじゃないと思ってもらいたい。それを可能にしてくれるからジュエリーデザインの道に進みました」
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シンプルでプレイフルなアリータのジュエリーだが、精巧なクラフトマンシップを駆使することで、大人も楽しめる洗練された仕上がりになっている。
「ナポリの郊外にカメオ専門の工房があり、繊細で美しい花や顔のモチーフを手彫りしています。職人を説得し、恐竜や宇宙飛行士のモチーフを彫ってもらうことでアリータのジュエリーはとても温かみを増し、イタリアらしさを表現できました」
彼女の祖国、ベネズエラでは生まれたばかりの女の子にピアスホールを開けるのが習わし。シンシア自身も幼い頃からジュエリーは身近な存在だった。
「子どもの時からいつもジュエリーを着けていました。何もないとまるで裸のような気分になってしまう。私にとっては、おしゃれとしてのアイテムというより、お守りのような存在に近いですね」
*「フィガロジャポン」2024年3月号より抜粋
text: Tomoko Kawakami photography: ©Allita