夏休みに訪れたい、いま注目の展覧会4選。

Culture 2024.08.14

自身と向き合う時間をもたらす「心象人物」。

『彫刻の森美術館 開館55周年記念「舟越桂 森へ行く日」』

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『樹の水の音』2019年 楠に彩色、大理石 93×46.5×31cm 西村画廊蔵 photography: 岡野 圭 © Katsura Funakoshi Courtesy of Nishimura Gallery

遠くを見つめるまなざしを持つ静かな佇まいの人物像で知られる彫刻家・舟越桂。この春逝去した彼が準備を進めてきた本個展では、生涯を通じて人間とは何かを問い続けた彫刻家の作品の変遷とその創作の源となる視線に迫る。聖母子像や性別を感じさせない静謐な空気を纏った人物像に始まるその作品世界は、人間存在の大きさや不思議さを象徴する山のようなイメージの人物像、さらに「祈り」に人間の姿を与えた人物像や、両性具有の身体と⻑い耳を持ち人間を見つめる「スフィンクス」へと辿り着いた。「心象人物」と名付けられたその作品との出合いを通して、舟越が望んだように、一度きりの人生を初めて生きる存在である自分自身と向き合う機会となるはずだ。

『彫刻の森美術館 開館55周年記念「舟越桂 森へ行く日」』
会期:開催中~2024/11/4
会場:彫刻の森美術館
tel:0460-82-1161
営)9:00~16:30 最終入場
無休
料)一般¥2,000
https://www.hakone-oam.or.jp/

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社会問題への静かな告発を続けた画家の美学。

『空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン』

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『無題』フォロン財団 ©Fondation Folon, ADAGP/Paris, 2024-2025

20世紀後半のベルギーを代表するアーティストのひとりであるフォロン。若き日にマグリットの壁画に感銘を受け、絵画世界に惹かれた彼はパリに移住。作品を投稿したアメリカの「エスクァイア」「タイム」など有力誌で注目され、1960年代初頭には各誌の表紙を飾る。やがて世界で高い評価を得たその活動は、版画や水彩画、ポスター、挿絵や舞台美術など多岐にわたった。一見、詩情あふれる端正な作品には、孤独や不安、環境破壊や人権問題など厳しい現実への告発が潜んでいる。日本で30年ぶりの大回顧展では、大きな曲がり角にある現代の社会だからこそ、環境や自由への高い意識を持ち、抑圧や暴力、差別に静かな抗議を続けたフォロンの芸術をいまあらためて見直そうとする。

『空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン』
会期:開催中~2024/9/23
会場:東京ステーションギャラリー
tel:03-3212-2485
営)10:00~17:30 最終入場(火~木、土、日)、10:00~19:30 最終入場(金)
休)月 ※9/16、9/23は開館
料)一般¥1,500 
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/index.asp

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境界を超え、元気をもたらしたデザイナー。

『髙田賢三 夢をかける』

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1970年 photography: 岩田弘行

日本人のファッションデザイナーとして、いち早くパリで自らのブランドを立ち上げた髙田賢三の没後初となる大規模な個展。木綿の新しい可能性を打ち出して「木綿の詩人」と賞賛され、独特の色使いや柄の組み合わせにより「色彩の魔術師」の異名を得た。日本人としての感性を駆使したその作品は、国境や文化、性別を自由に超えて、西欧中心の伝統文化にとらわれない新しい衣服を示唆し、いまもなお世界中で愛される。髙田の創作の変遷を辿り、幼少期の絵画やアイデアの源泉となった資料、デザイン画などを紹介する本展では、斬新なデザインで常識を打ち破るスタイルを次々と生み出した髙田の人物像を、多角的な視点で浮かび上がらせ、生涯にわたる創作活動を回顧する。

『髙田賢三 夢をかける』
会期:開催中~2024/9/16
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
tel:050-5541-8600
営)11:00~18:30 最終入場
休)月 ※9/16は開館
料)一般¥1,600
https://www.operacity.jp/ag/

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絵本作家を超えた、幅広く立体的な創作活動。

『new born 荒井良二 いつも しらないところへ たびするきぶんだった』

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『花の草』2008年

日本人として初めてアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞するなど世界的に評価される荒井良二。滴るようなみずみずしい色彩や独特の線や形、リズミカルな文体は特別な読後感を残してゆく。100冊以上の絵本・書籍から代表作の原画を紹介する本展では、哲学的示唆に富んだ作品集や、郷里・山形や震災後の東北を舞台とした取り組みなど絵本を超える創作活動も紹介。先が見えない不安や恐れをも楽しみに変えてしまうような気持ちで活動の幅を広げてきた荒井の旅の軌跡と現在地を語る作品たちが、訪れる人を立体的な展示空間で迎えてくれる。小さな家々が点在する最後の展示室では、家の素材や形態、細部の設えから子どもたちの物語を想像し読み取ることができる。

『new born 荒井良二 いつも しらないところへ たびするきぶんだった』
会期:開催中~2024/8/25
会場:アーツ前橋
tel:027-230-1144
営)10:00~17:30 最終入場
休)水
料)一般¥800
https://www.artsmaebashi.jp/

*「フィガロジャポン」2024年9月号より抜粋

text: Chie Sumiyoshi

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