「本当のMBTI」とは? 流行中の性格診断との違いを徹底解説!

Culture 2024.08.16

自己分析に人々の興味が集中する近年、よく耳にするMBTI®。実は流行中の無料性格診断テストと別物だった!? 正しいMBTIについて、日本MBTI協会の代表理事・園田由紀が徹底解説。

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MBTIとは?

私たちの心は、身体と同様、常に健康であろうと自律的に働いています。しかし人は、自分の心が休むことなく、どのように情報を集め、その情報をもとにどんな判断をしているのか、気付かないことがほとんどです。要するに、意識的に見ようとしないと見えない世界、それが自分の心というものです。スイスの心理学者C.G.ユングは、それに着目して、「タイプ論」というひとつの理論を提唱しました。身体に利き手や利き目、利き耳があるように、心にも生まれ持った「心の利き手」(「認知スタイル」、「タイプ」ともいう)があると考えたのです。その理論をベースに、米国人の親子が、誤解や偏見による対立や憎悪を減らすことで、戦争をなくしたいという大きな願望を持って1962年に開発したのがMBTI(Myers-Briggs Type Indicator)です。MBTIは他者や基準と比較した行動特性を測定する、いわゆる性格診断ではなく、回答結果をもとに、MBTIの有資格者の支援のもと、理論と受検者の実際とを照らし合わせながら、本来の自分の「心の利き手」を体験的に分析しながら自分で見いだしていくメソッドです。

MBTIではわからないこと?

能力や適性や相性、何かのスキルの有無や上手下手、優劣などはまったく見ていません。タイプによって自然と興味や関心が湧きやすい職業はありますが、その仕事で成功するか否かはわかりません。また性格の良し悪しも見ていませんし、精神の病理や障害も測っていません。MBTIはあくまでも自分の認知スタイルを確認し、そこに課題解決、対話、リーダーシップや対人関係などに"スタイル"があることを知り、自分とは異なるスタイルを持つ人がいることを理解する指針なのです。

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MBTIで何ができる?

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●自己分析
MBTIが最も重要視しているのが、自己分析です。人は、自分のことをわかっている分しか他者のこともわからないからです。ただ、人それぞれに認知スタルがあり、客観的に適切に自分ひとりで分析することは難しい。また、人はCharacte(r 人が生まれ持った質)とPersonality(後天的に身についた特性)のふたつの側面が相互作用して性格が築かれており、この切り分けが「心の利き手」を見いだすのに不可欠なのですが、これもひとりでは難しい作業です。故にMBTIは、国際規格の厳しい訓練を修了し合格した有資格者の支援があって初めて、自分でも気付いていない、自分にしかない強みや動機に気付けます。また自分の認知の偏りにも気付け、是正する指針も。人生は判断の連続で、その大元に認知スタイルがあるので、人生の羅針盤を獲得できます。

●他者理解
自己分析が進むと、他者をその人そのまま見ようとする力がつきます。また、自分と相手の「心の利き手」が違うと、自分とは異なる言語を話すことに気付きます。それがわかると相手が本当に言わんとしていることが理解でき、誤解や偏見が激減します。このような効果が実証されているため、長きにわたり多くの企業で職場のコミュニケーション向上や健全な人間関係の構築に活用されています。

●ストレス回避
ストレスの原因は「タイプ」によって異なります。ある人にはストレスでも、ほかの人にはエネルギーを充電する機会になるほどに違うのです。よって、対処法も大きく異なります。また、自分は良かれと思ってしたことが、相手には耐え難いストレスになることも少なくありません。「心の利き手」がわかると、何がストレスの原因になり、どうすればストレスと対峙したり回避したりできるかの指針も得られます。

16Personalitiesとは違う?

最近、MBTIの名前で誤用されている性格診断テスト16Personalities。間違われる理由は、結果表記にMBTIオリジナルのESTJやINFPなど同じアルファベット4文字を用いていることにあるでしょう。MBTIはユングの心理学的タイプ論がベース。持って生まれた認知スタイルを有資格者の支援のもとじっくりと分析してゆく過程が重要で、同じタイプでも衝動の表れ方には個人差がある、というスタンスなので、タイプ別に行動を決め付けはしません。一方の16Personalitiesは、偏差値のように基準を設け、それと比較して集団の中の自分の行動特性の位置付けが測定されます。よって、MBTIと16Personalitiesはまったく異なる側面を見ている別の検査なのです。

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MBTIの4つの指標とは?

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1. どこに関心を向けることを好むか、どこからエネルギーを得るか

E 外向(心的態度)⇔ I 内向(心的態度)
外向を指向する人は、人、社会、いろいろな出来事などの外の世界(外界)に関心を持ちます。外の世界で起きていることにエネルギーや関心を向け、動機付けられることが多い。人との関わりや体験からエネルギーを得、動機付けられます。
内向を指向する人は、内に生じる思索や内なる体験などの内の世界(内界)により関心を持ちます。内の世界で起きていることにエネルギーや関心を向け、内に生じる思いや、気持ち、内省などからエネルギーを得、動機付けられます。
注:「外向」はよく使われる「社交的」とか「賑やか」ということではありません。「内向」は「内気」とか「消極的」なこととはまったく意味が異なります。MBTIでは外向でも無口な人はいますし、内向で社交的な人もいるという考えです。

2. どのように情報を取り入れることを好むか

S 感覚(心的機能)⇔ N 直観(心的機能)
感覚機能を指向する人は、事実そのものや実際に起きている情報を取り入れることを好みます。自分の周囲で実際に起きていることを観察し、具体的なことあるいは事実かそうでないかについて気付きます。
直観機能を指向する人は、まずものごとの全体像から、関係性や繋がりに着目して情報を取り入れます。まず、ものごとにおけるパターンを把握したりして、可能性があるかどうかについて気付きます。

3. どのように結論を導くことを好むか

T 思考(心的機能)⇔ F 感情(心的機能)
思考機能を指向する人は、まず自分の選択や行動の結果を論理的に考えて結論を導こうとします。対象から距離を置き、賛同できることとできないことについて客観的に捉えようとします。批判や分析をして問題を捉え解決することによってエネルギーを得ます。同じような状況下において応用できる基準や原理原則を見いだそうとします。
感情機能を指向する人は、まず自分や他者にとって大切なことを考慮に入れて結論を導こうとします。対象と同じところに立って、当事者としてものごとを捉えたりすることで、人を重んじるという自分の価値観に基づいて結論を導こうとします。他者を理解したり援助したりすることによってエネルギーを得、個人の良いところを探します。一人ひとりと個人として関わり、調和をつくろうとします。
注:「感情」は情緒的にいう「感情」とは違います。

4. どのように外界と接することを好むか(生活やライフスタイルのあり方)

J 判断的態度(心的態度)⇔ P 知覚的態度(心的態度)
判断的態度を指向する人は、自分の周囲にあるものごとをまず調整したり統制しようとし、計画や秩序に基づいて行動することを好みます。何がしかの判断を下し、ひとつのことに決着をつけてから次のことに着手します。また、ものごとを体系立てて行い、周囲をきちんと整理された状態で生活する方が楽と感じます。計画やスケジュールに沿って行動し、一旦決めたことをやり遂げることでエネルギーを得ます。
知覚的態度を指向する人は、自分の周囲にあるものごとは、それはそれとして捉えたまま、できるだけ制約を受けずに柔軟に行動することを好みます。詳細な計画や最終決定はある種の束縛と捉え、最終的な決断は最後の最後まで待つことで、新しい情報やオプションを見ながら、臨機応変に生活する方が楽と感じます。その場その場での求めに応じて対処しながら進めていくことでエネルギーを得ます。

【『MBTIタイプ入門 第6版』(JPP㈱刊)より一部抜粋】
※二項対立のどちらも人は持っていますが、どちらか一方の方が「心の利き手」として4指標のそれぞれが相互作用し、ひとつのタイプが生成されます。上記の理論はタイプの一部を説明したにすぎず、これらを組み合わせただけで自分のタイプがわかるわけではありません。また、日常使う言葉と意味合いが異なります。
®MBTI and Myers Briggs Type Indicator are registered trademarks of the Myers & Briggs Foundation in the United States and other countries

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MBTIを受けるプロセスとは?

1. MBTIを受検

公式サイトからMBTI体験セッションの受検を申し込む。MBTI質問URLが届くので、セッション前日までに93問の2択の質問にWEBで回答。日常生活における自分の考え方にまつわる質問に考えすぎずに答える。世界各国の言語で受検ができるが母国語で回答することが望ましい。日本語版は日本人が回答しやすい質問内容に整えられている。すぐに結果は出ない。

<申し込み先>
JPP株式会社主催
MBTI公開体験セッション
https://www.jppjapan.com/session/

2. 回答結果報告

セッション当日、ユングの理論の説明が丁寧になされた後に、4つの指標で表されたMBTIのタイプが記載されているプロファイルレポートのPDFを有資格者から受け取る。

3. 検証セッション

グループセッションでは、5〜10名で約7時間30分じっくり一人ひとりと有資格者が対話しながら、いくつものグループ演習を実施。その都度、自己理解や相互理解のための対話時間を設け、理論と実際を照らし合わせながら、報告されたタイプが自分にフィットするのかを検証し、最後に自分のベストフィットタイプを見いだす。

園田由紀 / Yuki Sonoda
国際的MBTIマスタートレーナー、臨床心理士。米国人のユング派 臨床心理学者 ナオミ・クエンク博士に20年師事。MBTIの日本版開発と倫理的普及等に尽力、30年間で5万人へのMBTIフィードバックの実績がある。現在一般社団法人日本MBTI協会代表理事で、東京大学大学院・京都大学大学院の非常勤講師でもある。

illustration: shutterstock text: Yuki Sonoda

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