10月に観に行きたい、展覧会4選をお届け。
Culture 2024.10.01
陰影の追求が深遠な創作に結実する作品世界。
『西川勝人 静寂の響き』
長年にわたりドイツを拠点に活動する西川勝人。彫刻、平面、家具など異なる造形分野を横断しながら、光と闇、その間に広がる陰影に心を配り、深遠な示唆に富んだ作品を生み出してきた。これまで国内で作品を見る機会が限られてきた西川にとって日本初となる回顧展では、自然光、外光、照明、間接光と、さまざまな光のもとでその作品世界を紹介する。なかでも、抽象的なフォルムを持つ白い彫刻は、木や石膏を用いた簡素な構造でありながら表面に淡い陰影を宿し、周囲の光や音さえも吸い込むようにただ静かに佇んでいる。美しい庭園の中、日常から隔たれた美術館で、静謐さに包まれた展示空間に身を置き、心ゆくまで観想に耽ることのできる、一人ひとりのための展覧会だ。
会期:開催中~2025/1/26
会場:DIC川村記念美術館
050-5541-8600
営)9:30~16:30最終入場
休)月、10/15、11/5、12/24~2025/1/1、14 ※10/14、11/4、2025/1/13は開館
料)一般¥1,800
https://kawamura-museum.dic.co.jp/
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都市深部の機構に内視鏡を入れるアクション。
『SIDE CORE展|コンクリート・プラネット』
公共空間や路上を舞台に多彩なアートプロジェクトを展開するアートチーム、サイドコア。東京初の大掛かりな個展では、都市に跋扈(ばっこ)する機能照明やインフラ、道路工事のピクトグラムなどを素材としたインスタレーションと映像が、耳なじみのある環境音や人工光を放ち、生活者である観客の身体と有機的に繋がり合う。なかでも圧巻なのは、東京の地下空間をスケートボードの滑走により開拓していくプロジェクトの最新版。都市の暗部に侵入し、小さなアクションを積み重ね、都市の風景にノイズをフィードバックしていく。ストリートカルチャーが探り当てた都市深部の水脈に、彼らがまるで内視鏡を入れるように介入するその活動と思考を、美術館にいながらにして体感できるはずだ。
会期:開催中~12/8
会場:ワタリウム美術館
03-3402-3001
営)11:00~19:00
休)月 ※10/14、11/4は開館
料)一般¥1,500
http://www.watarium.co.jp/
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奄美の自然と生きることを選んだ画家の真髄。
『田中一村展 奄美の光 魂の絵画』
幼少期は神童と称され、現・東京藝術大学に入学したものの2カ月で退学し、独学で自らの絵を模索した画家・田中一村。奄美大島の地に隠遁し、生涯無名のまま没した。その三回忌に奄美の人たちの手で行われた展覧会が地元で報じられ、1984年、NHK「日曜美術館」の特集により全国に反響を呼んだことから再評価が進んだ。その全貌を紹介するこの大回顧展では、終焉の地・奄美で描かれた代表作『不くわずいも喰芋と蘇鐵』、『アダンの海辺』をはじめ、近年発見された未完の大作を展示。未知の軌跡をも辿る構成となる。東西の近現代美術史の影響下で学びながら、終には奄美の自然とともに生きることを選んだ画家の真髄に迫り、"生きる糧"であった一村の芸術の深みに触れたい。
会期:開催中~12/1
会場:東京都美術館
050-5541-8600
営)9:30~17:00 最終入場(火~木、土、日) 9:30~19:30 最終入場(金)
休)月、10/15、11/5 ※9/23、10/14、11/4は開館
料)一般¥1,300
https://isson2024.exhn.jp/
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自然界の数学的秩序や建築的構造の探究。
『クリスティアーネ・レーア』
ドイツとイタリアを拠点に、ミニマルアートとアルテ・ポーヴェラの正統な後継者として世界的に高く評価されるクリスティアーネ・レーア。タンポポの綿毛を敷き詰めたクッション、キヅタの種子を積み重ねた寺院、草の茎を寄り添わせたドーム、アザミの種子をヘアネットに詰め込んだ袋、馬の毛と針により"あやとり"のように生み出された形態。微細でありながら堅固な構造物であり、凝視すれば周囲の空気を支配するほどの存在感を示す。素材や空間との忍耐強い対話を通して、レーアは自然界を成立させている数学的な法則や秩序、建築的な構造を探求してきた。関西では初個展となる本展では、鴨川に臨む眺望を借景に、作家が培ってきた唯一無二の世界の捉え方と出合ってほしい。
会期:10/14~11/3
会場:Kojin Kyoto
03-5652-3660
営)13:00~19:00 ※10/30、11/1、2 は21:00 まで
無休 無料
https:// kojin-kyoto.com/
*「フィガロジャポン」2024年11月号より抜粋
text: Chie Sumiyoshi