【立田敦子のカンヌ映画祭2024 #04】蓋を明けて見れば今年も"ジャパンイヤー"!

Culture 2024.05.23

コンペティション部門に日本映画が選出されていないが、今年は、去年に引き続きカンヌは日本関連の話題が多い。

オフィシャルポスターなどのメインビジュアルは、黒澤明監督の『八月の狂詩曲』のスチールからの引用(もちろん世界情勢を鑑みた反戦の含みがある)だし、「監督週間」のメインヴィジュアルは北野武監督の描き下ろしイラストである。 

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黒澤明監督の『八月の狂詩曲』のスチールがポスターに。©︎festivaldecannes

上映作品としては、オフィシャルセレクションのサイドバーである「ある視点」部門奥山大史監督の『ぼくのお日さま』が選出された。大学の卒業制作で撮った『僕はイエス様が嫌いで第66回サンセバスチャン国際映画祭の最優秀新人監督賞を受賞した奥山監督が、脚本・撮影・編集を手が商業映画デビュー作だ。アイスホッケーが苦手なタクヤ(越山敬達)が、フィギュアスケートのコーチ荒川(池松壮亮)と出会い、荒川の教え子さくら(中西希亜良)とペアを組むことになる、というストーリーだ。

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「ある視点」部門に奥山大史監督の『ぼくのお日さま』より。©︎2024BOKUNOOHISAMA

より作家性を重視した作品が選出される「監督週間」には、河合優実主演に迎えた山中瑶子監督の青春映画『ナミビアの砂漠』と、久野遥子山下敦弘共同監督によるアニメーション『化け猫あんずちゃん』、山村浩二監督の短編『とても短い』の3本の日本映画が上映された。1996年生まれの奥村監督、1997年生まれの山中監督といった20代の新進監督がカンヌデビューを飾ったことは、日本映画界にとっては朗報といえるだろう(監督たちのインタビューは追って掲載予定)。

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審査員の是枝裕和監督と、アニメーション『化け猫あんずちゃん』の久野遥子・山下敦弘監督。@Atsuko Tatsuta

また、上映以外でも今年は日本関連のイベントが目立った。

5月17日には、俳優・プロデューサーのMEGUMIが主催する"ジャパン・ナイト"が開催され、俳優・監督の齊藤工や深田晃司監督らが登壇し、プレゼンテーションを行った。

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"ジャパン・ナイト"を主催した俳優・プロデューサーのMEGUMI。©︎Japannight

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"ジャパン・ナイト"に登壇し、プロデュースする2作品をプレゼンした斎藤工。©︎Japannight

翌18日には、日本初の映画製作ファンド" K2P Film Fund I"の記者会見が行われた。これは2023年8月に東映の元プロデューサーである紀伊宗が創業したK2Picturesが日本映画をもっと世界の市場に展開すべく海外の投資を想定して立ち上げた映画製作ファンドで、岩井俊二、是枝裕和、白石和彌、西川美和、MAPPA(アニメーションスタジオ)、三池崇史らの参加がすでに決定しているという。

カンヌ映画祭はマーケットも併設されていることもあり、ビジネス的にも世界で最も重要な映画祭となっている。それ故に、映画上映以外のこうしたイベントやパーティなども連日いくつも開催されている。

映画ジャーナリスト 立田敦子

大学在学中に編集・ライターとして活動し、『フィガロジャポン』の他、『GQ JAPAN』『すばる』『キネマ旬報』など、さまざまなジャンルの媒体で活躍。セレブリティへのインタビュー取材も多く、その数は年間200人以上とか。カンヌ映画祭には毎年出席し、独自の視点でレポートを発信している。

text: Atsuko Tatsuta editing: Momoko Suzuki

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