さくらももこ展、行きましたか?
Culture 2025.01.09
私は幼い頃からさくらももこを崇拝している。
元日、六本木で閉幕ぎりぎりのさくらももこ展に滑り込んだ。昨年の夏、横浜での展示ぶりだ。前回4、5時間くらいかけて、展示された漫画のコマを隅々まで読んでいたので、今回は読み込むことはせずにさらりと見てきたのだが、あらためて心打たれた。
私は大人になったいまでも無論、エッセイと漫画『ちびまる子ちゃん』派。つまりはくだらなくて笑えるほう。名言が散りばめられた神聖なコジコジにはどうもついていけなかった。小学校低学年で祖父に『ちびまる子ちゃん』全巻を買ってもらい、発売しているエッセイは片っ端から何度も読んだ。トイレにまで持ち込み読み、便器に落として泣いたこともあったし、主要キャラクターは全部描けるように練習したし、小学生のくせにその頃の夢は作家(エッセイスト)だった。そのくらいに崇拝していた。
さくらももこに深読みはいらない。壮大な感動もいらない。水虫を緑茶で治したり、飲尿療法を実践したり、グッピーを死なせたり。普通なら他人に明かしたくない内容がわんさか出てくる。ただ単純にくだらない日常を綴っているように見えるが、大抵の人はそれができない気がする。失敗も恥もズルさもすべてを晒し、その潔さが人間らしくて最高にかっこいい。死ぬほど多忙な方だったと思うが、それを微塵も感じさせない、物語の中の彼女自身や主人公のぐぅたらぶりに共感が止まらないのだ。
エッセイには、息子さんの話がたびたび出てきた。生まれ、物心ついてからも、自身がさくらももこだということを隠し、普通の親子生活を送っていたことが綴られていて、なんとも可笑しかったし愛おしかった。
その息子さんの挨拶文パネルから始まる、さくらももこ展。今は亡き母に代わり、あの頃、生意気でチャーミングに描かれた息子さんが、まさかさくらももこ展の始まりの言葉を書かれているなんて。初めて読んだとき、序盤から涙が出そうだった。当時、さくらももこ(親)目線で読んで笑っていたけれど、息子さんと私は同い年だった。それも含めてなんだか感慨深かった。
もしまだ生きていたならば、どこかで会うことができただろうか。私が人生で一番会いたかった人です。
フィガロジャポンのエディター。怪談系YouTubeを聞き流すのにハマっていて、怖さに鈍感になってきた今日この頃。好きな食べ物はじゃがいもと餃子とアイス。コーヒーよりも断然お茶派! 最近の目標は、読書量を増やすこととちゃんと健康に生きること。
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