2025年、1月から観たい映画が目白押し! 編集部厳選の3作。

Culture 2025.01.16

甘い郷愁も予定調和も排し、カーンと冴えたお宝少女映画。

『ペパーミントソーダ 4K修復版』

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©1977-TF1 DROITS AUDIOVISUELS-ALEXANDRE FILMS-TF1 STUDIO

1960年代のパリの女子校がメイン舞台。騒々しくも夢見がちなリセエンヌたちの学園生活を、いまトラブルが生起してどう転ぶかわからないような生々しさで、けれどあくまで軽やかに綴る。『女ともだち』(83年)が忘れがたいフランス映画界の先駆的女性監督の、日本初公開のデビュー作にして最高作。ボーイフレンドとメールならぬ手紙を交わし、テント泊まりのキャンプに出向く姉に感化され、ママのストッキングを拝借した13歳のアンヌが大人向け炭酸飲料のペパーミントソーダをカップルだらけのカフェで注文したり、心身のアンバランスな思春期の挿話群に感電しそう。失踪した級友の顛末や別れた父との距離感----人の世のほろ苦さもポップで華やいだ色彩が和らげる。

 

『お坊さまと鉄砲』
監督・脚本/ディアーヌ・キュリス
1977年、フランス映画 101分
配給/RIPPLE V
渋谷 ホワイト シネクイントほか全国にて公開中
https://www.ripplev.jp/peppermintsoda/

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最愛の者を失う喪中の危機を、 幽明なポエジーをこめて紡ぐ。

『アンデッド/愛しき者の不在』

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©MortenBrun

北欧スリラーの文豪が脚本に参加。並列して描かれる3話とも死者の蘇りを主題にしていて、ゾンビものの変種といっていい。だが、近親の死を主人公らが受け入れられぬ強い悲嘆の磁場がもたらす蘇りゆえ、むしろ苛烈な愛の物語と呼びたい。たとえば、息子の急逝以来、ぼんやり食堂勤めのルーティンをこなす母のふさぎ方を見かね、孫の墓を祖父が掘り返す。泣き笑いするかのように目をしばたたく幼子は、アンデッド(蘇りし屍)として母や祖父に二度と手放せないほどの慰めを与える。ただし、亡骸を休息させない行為は重い代償を伴う。そんな喪の時間を経て、死者と縁ある者はなんとか日常に帰る。あるいは帰り損なう。そのメランコリックな格調と、収まらない胸騒ぎ!

 

『アンデッド/愛しき者の不在』
監督・共同脚本/テア・ヴィスタンダル
2024年、ノルウェー・スウェーデン・ギリシャ映画 98分
配給/東京テアトル
2025年1月17日より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて順次公開
https://www.undead-movie.jp/

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人も羨む装いのまま衝突し、戦慄的に幕を引く一級家族劇。

『満ち足りた家族』

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©2024 HIVE MEDIA CORP&MINDMARK ALL RIGHTS RESERVED

かたや、利得のためなら冷血漢をも庇うソル・ギョング演じる兄のやり手弁護士。かたや、損をしても道義を通すチャン・ドンゴン演じる弟の敏腕小児科医。年の差カップルの兄の家には放任された先妻の娘が、年上の妻が差配する弟の家にはいじめられっ子の息子が同居する。自足しながらも対照的なエリート家族が、各々の子の影がちらつく殺傷事件を挟み、優雅さを纏ったままくずおれる。ヘルマン・コッホの世界的ベストセラー小説『冷たい晩餐』を今日の韓国に寄せて脚色。隠蔽体質の社会の歪みが子どもを蝕む局面のきめ細かい描写力、首尾の対比も鮮やかなひねりの利いた構築力は、『八月のクリスマス』(1998年)で韓国映画新時代の旗手となった実力派監督の面目躍如だ。

 

『満ち足りた家族』
監督・脚本/ホ・ジノ
2024年、韓国映画 109分
配給/日活、KDDI
2025年1月17日より、TOHOシネマズ シャンテほか全国にて順次公開
https://michitaritakazoku.jp/

*「フィガロジャポン」2025年2月号より抜粋

text: Takashi Goto

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