髙橋海人が『HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展』を語る。
Culture 2025.07.25
King & Prince 髙橋海人が公式アンバサダーを務めることになった『HOKUSAI-ぜんぶ、北斎のしわざでした。展』の記者発表会に登場。その後行われた限られたメディアのみのインタビューでは、本展覧会の楽しみ方だけでなく、自身と北斎との共通点など、よりパーソナルな思いを語ってくれた。チャーミングな明るい笑顔で迎えられ始まったインタビュー。そこで語られた髙橋海人とアート、そして北斎の関係とは?
ーーアンバサダー就任おめでとうございます。いまのお気持ちをお聞かせください。
まず言いたいのは、就任できたのは映画のプロモーションではないですよってことです(笑)。というのも、ちょうど10月公開の映画『おーい、応為』で葛飾北斎の弟子・渓斎英泉役で出演していて。本当にたまたまなんです。僕もアートに携わる人としていつか展覧会などアートのお仕事がしたいと思っていたので、唐突に叶ってうれしかったです。
ーー髙橋さんは北斎にどんなイメージを抱いていますか?
絵を観て感じたのは、生命力のある力強さです。北斎は90回引っ越したり、家が汚かったり(笑)。映画のなかでは元妻を養うことに躍起になるシーンもあり、ある種の生き辛さを抱えていた人という印象です。けれどそれは、彼が絵に真っ直ぐ情熱を注いでいることを体現しているからだと思いました。とにかく目の前にあることに向き合う姿勢、といいますか。
ーー映画の撮影では浦上蒼穹堂の所蔵庫にも行かれたそうですが、髙橋さんのなかで北斎との共通点などはありましたか?
所蔵庫では『北斎漫画』などを観ることができて、北斎の描くスタイルと僕の間にも共通点があるのではないかと思いました。当時のリアルな世界を、彼のファンタジーなフィルターを通しておもしろく楽しい雰囲気で描いている点ですかね。北斎って、きっと不器用な人なんだと思います。掃除ができないこととか(笑)。厳粛な人間という最初のイメージと打って変わって、「楽しい職人」のようなイメージに変わりました。意外と僕らと同じように、"楽しいから描く"という感じだったのではないかな。
ーー創作において、自分と似ていると思うことはありましたか?
似ているというか、「創ることの楽しさ」は同じような気がします。僕は多趣味だし、絵のスタイルも決まっていません。日常でおもしろいと思うものをいつも追っていて、歌だったり、絵だったり、表現する形や方法が違うのでいろいろな人格を使いわけているような感覚に近いかもしれません。その点が、北斎がその時々で思ったままに描くスタイルと通ずるものがあると思いました。
ーーもしいま北斎に会うことができたら、なにを描いて欲しいですか?
いまの東京をどう描くか気になります。彼の生きていた時代にはここまで色があふれていなかったと思うんですよ。そもそも絵の具を作ることすら難しいことでしたので。特に渋谷とか東京タワーとか、リアルな東京の姿を彼はどう描くのか、彼のフィルターを通すとどんな東京になるかが気になります。
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ーーたくさんの北斎作品をご覧になって、髙橋さんにはどんな影響がありそうですか?
デジタルで表現できない部分に挑戦してみたいと思わされました。実際に実物の作品を目にしてみると、タッチの強弱をより感じられたうえ、線に魂が乗っている! という描き手の思いがより感じられました。
ーー最近、よく美術館やギャラリーに行かれるそうですが、どのような基準で選ばれているのですか?
感覚的には近くのコンビニを探すような感じですかね(笑)。大人になってからカジュアルに行けるようになったのも大きいかもしれません。どんな作品を観ていてもどんどん自分が広がっていく感覚を覚えて、ちょっとした仕事の合間にも駆け込みで足を運ぶことが多いですね。いまではもっと前からこの楽しさに気づけていればよかった〜、と少し苦味が残ってます。
ーー展覧会タイトルに『ぜんぶ、北斎のしわざでした。』とあるように、アニメや漫画のルーツとなっている北斎作品。髙橋さんにとっての絵のルーツとは?
僕の絵のルーツは小学生時代まで遡ります。当時、姉が同級生たちに自分の描いた漫画を配っていたんです(笑)。我が姉ながらその漫画はおもしろかったし、自分が描くもので人が楽しんでくれるということに感動しました。それがアートの世界へ足を踏み入れるきっかけになっていたと思います。姉はいわば、僕の師匠のような、先生のようなもので、あの頃描いていた少女漫画がスタート地点になっていると思っています。
ーーそんなスタート地点からかなりの年月が経ちましたが、いま、世界中どこでも、なんでも描いていいよと言われたら?
家です。趣味部屋のような場所があるので、世の中にはないというかアンリアルなものをそこで描きたいです。大好きな宇宙とか海中とか不思議な世界や、のどかな日本の風景や街並みを、色鮮やかに思うがまま描いてみたいです。
ーーついつい使いすぎてしまう色などはありますか?
僕が描くキャラクターのセロルの色がいちばん好きでよく使ってしまう気がします。コバルトブルーほど明るすぎず、青より濃い感じですかね。詳しくは僕のインスタグラムを見てみてください(笑)。
ーー北斎は絵に夢中すぎて苦悩があったと言われていましたが、忙しいなか絵と向き合っている髙橋さんに苦悩はありますか?
苦悩はないです。いろいろなことができる職業でもあるので、それが柔軟さを生んでいるのではないかと思っています。描きたい!と思った時に描ける環境にあるのも、あまり苦悩を味わってこなかった要因だと思います。
ーー最後に、ファンのみなさんに本展覧会の楽しみ方を伝えるとしたら?
ファンのみんなって考察好きなんですよ(笑)。なので、「北斎の絵は必ずこう見て!」っていうよりも、みんなには北斎の絵を観て自分だけの世界を作ってみてほしいです。今回展示されている作品を含め、細部へのこだわりがすごいので、よく観てみると物語が生まれると思います。
本展覧会のナレーションも務める髙橋は「北斎の作品をよりファンのみんなへ届けたい」と最後に語っていた。どこかミステリアスだが、ポジティブな明るいエネルギーを放つ髙橋。インタビューのなかでは北斎を通して「描くこと」への意欲や、それがどのようなことを自分にもたらしているかを率直に話してくれた。絵を描くことを通して彼の煌めきは遥か彼方まで届き、北斎のように100年の年月を超えて愛される存在となるだろう。これからもアイドルとしての活動はもちろん、アーティストとしての姿にも注目していきたい。
会期:9/13(土)〜11/30(日)
会場:CREATIVE MUSEUM TOKYO[東京・京橋]
営)10:00〜18:00
※毎週⾦・土曜および祝前日は20:00 まで開館
※最終入場は閉館の30 分前まで
※会期中、一部作品の展示替えを行います。
https://creative-museum.tokyo

髙橋 海人/たかはし かいと
1999年4月3日生まれ、神奈川県出身。2018年、King & PrinceのメンバーとしてCDデビュー。俳優としても活躍しており、2023年のドラマ「だが、情熱はある」では、第116回ザテレビジョンドラマアカデミー賞 主演男優賞を受賞。また、グローバルブランドアンバサダーを務めるイタリアのラグジュアリーブランド、エトロでは、自身の描いたペイズリーのアイテムを発売するなど、アーティストとしても独自の感性で活躍の場を広げている。