【フィガロジャポン35周年企画】 パリ装飾美術館が守る、アーカイブという創作のインスピレーション源。
Culture 2026.01.04

アールドゥヴィーヴルへの招待 vol.8
2025年、創刊35周年を迎えたフィガロジャポン。モード、カルチャー、ライフスタイルを軸に、豊かに自由に人生を謳歌するパリジェンヌたちの知恵と工夫を伝え続けてきました。その結晶ともいえるフランスの美学を、さまざまな視点からお届けします。
時間の流れが加速するいま、現代社会を読み解く鍵として「過去」がこれまで以上に重要になっている。過去を振り返り、新たなクリエイションへと繋げるのはモードやアートはもちろん、ビューティやメディアも同様だ。フランスの優れた文化遺産を守る手段、アーカイブ(記録の保管)に携わる女性たちに話を聞いた。
Bénédicte Gady/ベネディクト・ガディ
パリ装飾美術館 館長代行兼文化遺産主任キュレーター

創作のインスピレーション源として、閲覧可能に。
パリ装飾美術館(MAD)のような場所においてアーカイブとは何を意味するのだろうか? その定義は時代とともに変遷してきたと同美術館館長代行のベネディクト・ガディは語る。
「1864年頃は、美術館にしろ産業博物館にしろ"プライベートアーカイブ"と"作品"は同義語だと思われていました。つまり、何もかもが生産・製造するための参考資料とみなされていたのです。当時の創作活動は過去作品をインスピレーション源としていました。だからこそ、ネオロココ様式だのネオゴシック様式といった"ネオ"様式が生まれたのです。アーカイブは創作のための素材だったのです。アールヌーボーやアールデコの時代になると、アーカイブの機能は変化し、ある意味独立した"作品"として認識されるようになりました」
現在、MADにおけるアーカイブは2種類あり、館内で閲覧できる。ひとつは同館が自ら構築したアーカイブ、もうひとつはデザイナーやキュレーター、ファッション史家によるプライベートアーカイブだ。17世紀のデッサン画を専門とするベネディクトにデッサン、版画、写真部門を案内してもらった。この部門は貯蔵庫のひとつを占めており、閲覧スペースが併設されている。その他、ファブリック、ポスター、玩具、家具などさまざまなジャンルの文化財は外部の倉庫に保管し、展覧会の時に展示する。アーカイブを生かすために大規模な展覧会を定期的に企画しており、現在は『Paul Poiret, la mode est une fête(ポール・ポワレ、モードは祝祭)』展が2026年1月11日まで開催されている。同館ではまた、アーカイブの一部を閲覧可能にしたことで"創作のインスピレーション源"という当初の機能を取り戻そうとしている。
「最近は1910~20年代の壁紙への注目度がとても高く、多くのクリエイターが自分の作品や修復作業の参考にしようと閲覧しにやってきます。旧フランス海洋省の建物、オテル・ドゥ・ラ・マリーヌの修復の際に参照されたのも、当館が保存する18世紀の壁紙でした」
*「フィガロジャポン」2026年1月号より抜粋
photography: David Coulon(Madame Figaro) text: Céline Cabourg(Madame Figaro)




