トランプ支持者たちが愛する歌姫ラナ・デル・レイとは?
Celebrity 2025.01.19
レトロなスタイル、ノスタルジックな歌詞、そして最近のジェレミー・デュフレーヌとの結婚を経て、ラナ・デル・レイは保守的な男性層をますます魅了している。その結果、主に民主党支持者である彼女のファンコミュニティには大きな失望が広がっている。
2024年12月7日、ロサンゼルスで開催された「Variety Hitmakers」授賞式に出席したラナ・デル・レイ。photography: Joe Scarnici / Variety via Getty Images
2024年12月7日、ロサンゼルスで開催された「Variety Hitmakers」授賞式に登場したラナ・デル・レイは、再び時代を超越したような印象を与えた。多くの女性がミニドレスやランジェリーが透ける衣装、そして超ハイヒールを身に付ける中、39歳のアメリカのシンガーは、オールドマネースタイルのジャッキー・ケネディ風ラウンドネックセーター、マリリン・モンロー風の不満げな表情、そしてリタ・ヘイワースにインスパイアされた完璧なブローヘアが特徴のヴィンテージスタイルで目を引いた。
そして、ステージに上がり、マイクを手に取ったラナはこう語った。「業界の状況や周囲の期待が自分の価値観と合わない中で、物事がどうなるかについて素直な期待を持ち続けるのは精神的にとても疲れます。」続けて彼女は、夫のジェレミー・デュフレーヌに感謝の意を表し、「素晴らしい夫」として彼を公の場で称賛した。ワニツアーガイドのジェレミー・デュフレーヌは、「ドナルド・トランプの支持者」と複数の情報筋によって伝えられている。
これだけでインターネットが炎上することになった。このコメントを受けて、ラナ・デル・レイは公式に親トランプ保守派だとするXの投稿があった。一方で、2017年にトランプに対する大規模なオカルト儀式を実行したとして知られている彼女は、「決してトランプ側についたことはない」と主張する民主党支持のファンたちもいる。一方では、彼女を称賛する共和党支持者たちがいる。例えば、@2dwadeはXで「ラナ、私たちは君の秘密を知っているし、私たちは君の味方だ」と発言。その後の投稿では「彼女は民主党支持者じゃない。もうやめて。彼女は共和党支持者の夫との結婚生活に満足している」と続けた。
Lana Del Rey on her marriage with her Republican husband:
-- Wade (@2dwade) December 8, 2024
He is an "honest partner" who she was waiting for when working in an industry where her "values and morals don't match up with whats going on"
Oh Lana, we know your secret and we support you pic.twitter.com/lMEZKiuPd1
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古き良き民主党支持者?
何と言おうと、ラナ・デル・レイが再び共和党支持者の心を揺さぶったのはこれが初めてではない。2023年、彼女のアルバム「Did You Know That There's a Tunnel Under Ocean Blvd」は、特に保守的な人々の間で大きな反響を呼んだ。その中でも特に注目されたのは、「ジュダ・スミス・インタールード」という曲で、カリフォルニアの有名な牧師、ジュダ・スミスの説教がほぼ5分間にわたって収められている。この大ヒットアルバムで、ラナ・デル・レイは自らをさらけ出し、神への愛情から奔放なセクシュアリティまで、幅広いテーマについて語る。特に成功を収めた「A&W」では、業界に忘れられることへの恐れを打ち明け、常に「ガール・ネクスト・ドア(隣に住んでいそうな女の子)」と分類されがちな自分に対する思いを綴っている。また、「キャンディ・ネックレス」では、オールドハリウッドの亡きアイコンたちへの敬意を表している。
アメリカの旗を背景にした彼女のアーティストとしての表現は、共和党支持者たちを魅了している。例えば、保守系シンクタンク「クレアモント・インスティテュート」の発行する「アメリカン・マインド」の編集者、スペンサー・A・クレイヴァンもそのひとりだ。彼はXでこう投稿している。「今こそ、保守的な異性愛者の男性たちにラナ・デル・レイの魅力について語ってもらうときが来た。」
It is once again time for me to ask that heterosexual conservative men please explain lana del ray to me
-- Spencer A. Klavan (@SpencerKlavan) March 24, 2023
その後、編集者は議論を呼びかけ、複数の保守的な男性たちが同じ考えに賛同する。保守系の新聞『ザ・スペクテイター』の編集者、ベン・ドメネッチはこう述べている。「彼女は、異性愛者の男性たちがアメリカの太平洋沿岸で描かれるセクシーな女性像のすべてを体現している。太陽に照らされたカリフォルニアの甘くて悲しい愛人、アメリカの旗に包まれ、タバコと壊れた夢の味がする。」別の編集者はこう分析している。「彼女は"女性として"持っている非常にリアルなパワーを直感的に理解し、その魅力と神秘性を音楽に反映させている。」
I don't think you need an explanation of why conservative men love this pic.twitter.com/u1byILFFlJ
-- Ben Domenech (@bdomenech) March 24, 2023
よく考えてみると、これらの見解には一理ある。なぜなら、ラナ・デル・レイに関しては、常に少し曖昧な部分があるからだ。ある日、彼女はポップミュージック業界の民主党支持者、テイラー・スウィフトと腕を組んで歩いているのが目撃される。同年、アラバマ州の田舎町にあるワッフルハウスで、店員の服を着て見知らぬ人に撮影され、常連客とともに「アメイジング・グレイス」を歌う姿が捉えられる。また、テキサス州とオクラホマ州のフットボールの試合で、サンティアゴブーツを履き、ビールを手にして突然現れたこともある。
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自由な精神
ラナ・デル・レイは、武器の使用に反対する姿勢を「Looking For America」の歌詞に表現している(「I'm still looking for my own version of America / One without the gun, where the flag can freely fly」/「私は自分のアメリカの形を探し続けている/銃のない、旗が自由に揺れる場所」)。一方で、テイラー・スウィフトがアメリカ大統領選挙でカマラ・ハリスに投票する意志を公然と表明したのに対し、ラナ・デル・レイは世界を分ける問題について沈黙を守ることから批判を受けている。
ラナ・デル・レイは、彼女の信念をInstagramに投稿した動画で、少しずつ公開するスタイルをとり、その後数時間以内に削除することが多い。彼女は自身の信念を、アートや音楽を通じて表現すると語っている。また、彼女の楽曲には、男性との破壊的な関係を魅力的に描いたり、崩れゆくアメリカンドリームを懐かしんだりする女性像がしばしば登場する。特に、1950〜60年代の女性たちを象徴するパステルカラーのドレスやシュークリームのようなヘアスタイルをした姿が描かれ、これらはノーマン・ロックウェルの作品にも似たイメージだ。ちなみに、ロックウェルの名前は2019年にリリースされた彼女の7枚目のアルバムにも冠されている。
多くの人々は、「彼女は現代的な理論に縛られたリベラルではなく、むしろ古き良きリベラリズムを体現している」とリッチ・クロムウェルは『ザ・スペクテイター』の記事で述べている。実際、彼女はアメリカ的な自由な精神を持つ女性で、ハーレーダビッドソンに乗って見知らぬ人たちとともに66号線を走ったり、元彼が住む街に最新アルバムのための1枚の看板を掲げたりする自由を楽しんでいる。まさにその独立心とレジリエンスの精神が、彼女を政治的アイコンにする要因となっており、それは時には彼女自身が意図したものではないこともある。
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2024年12月7日、ロサンゼルスで開催された「Variety Hitmakers」授賞式に出席したラナ・デル・レイ。photography: AMY SUSSMAN / Getty Images via AFP
From madameFIGARO.fr
text: Augustin Bougro (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi