「韓国のマリー・アントワネット」とあだ名される不穏な大統領夫人、キム・ゴンヒとは?

Celebrity 2025.02.13

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相次ぐスキャンダルで夫の人気にダメージを与えた韓国大統領夫人、金建希(キム・ゴンヒ)とは、一体どんな女性なのだろうか。

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韓国のユン大統領夫妻(東京、2023年3月16日)photography : Getty Images

韓国では政治情勢の混乱が続いている。1月15日、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領はソウル中心部の大統領公邸で拘束された。64歳の国家元首は、12月3日に「非常戒厳」を宣言したことを理由に罷免される可能性が高まっている。こうした政治的な動きのほか、さまざまな事件によって大統領は人望を失っている。2022年10月にソウルで150人以上の死者を出したハロウィンの事故もそのひとつだが、52歳の妻、キム・ゴンヒをめぐる数々のスキャンダルも影響している。

ディオールのバッグ

2022年9月のことだった。韓国のチェ・ジェヨン牧師は腕時計の隠しカメラで、ディオールのハンドバッグを購入している姿を自撮りした。レシートに表示された価格は2,000ユーロ。その後、牧師は数ヶ月前に親しくなった大統領夫人の事務所を訪れると面会を求め、買ったばかりのブランドバッグをプレゼントした。「こんな高価なものを買わないでください」とびっくりしたような声で言いながらも、大統領夫人は贈り物を受け取ったように見えた。トラップの発動だ。1年以上経った2023年11月、隠し撮りしたその時の映像をYouTubeチャンネル「ソウルの声」が公開した。保守派のユン大統領に反対することで知られるチャンネルだ。トラップの目的はファーストレディが簡単に収賄できることを証明するためだった。

自分の行動を正当化するため、チェ・ジェヨン牧師は政権へのキム・ゴンヒの影響力を懸念していると述べた。AFP通信の報道によると、記者会見で牧師は、高官の人事を彼女が決めるのを電話で聞いたことや、大統領夫人が自分から物を受け取ったのは今回が初めてではないことを主張した。2022年6月には、1,300ドル相当のシャネルの化粧品を贈ったそうだ。韓国では公職者やその配偶者が750ドル以上の金品を受け取ることが禁止されている。これがディオールのバッグ事件の概要だ。

これにより、ただでさえ低かったユン大統領の支持率はさらに急落した。その上、2024年4月の国会議員選挙で過半数獲得を狙っていたのに敗北した与党内で大統領への反発が高まった。大統領夫人は平然と沈黙を保っていたものの、韓国大統領府は弁明に追われた。仏「ル・ポワン紙」の報道によれば、大統領府は不正行為はなかったと否定し、「ハンドバッグはファーストレディにではなく、国家への寄贈で違法ではない」と断言した。

韓国の 「マリー・アントワネット」

キム・ゴンヒが「マリーアントワネット」、すなわち贅沢ざんまいの生活を送ったことで知られる18世紀のフランス王妃にたとえられるようになってから、ディオールのバッグ騒動はますます過熱している。李明博(イ・ミョンバク)元韓国大統領のイメージ・コンサルタントを2007年から2008年の間務めていた「パーソナル・イメージ・クリニック」のカン・ジンジュ院長は、「コリア・タイムズ」紙でキム・ゴンヒのイメージを次のように分析してみせた。「これまでの(韓国)大統領夫人は慎み深い控えめな装いでした。ですがキムは違い、エレガントで洗練された、自立したキャリアウーマンを体現しています」

確かにキム・ゴンヒはこれまでの大統領夫人とは異なる。美術を学んだ後、2007年に美術展企画会社の「コバナコンテンツ」を設立した。2023年6月に彼女を取材したWebサイト「アートネット」によれば、彼女は長年にわたり、アンディ・ウォーホル(2009年)、マルク・シャガール(2010年)、マーク・ロスコ(2015年)、ル・コルビュジエ(2016年)、アルベルト・ジャコメッティ(2018年)など、国際的な名声のアーティストの作品展を実現させてきた。2022年の夫の大統領当選まで、彼女はコバナコンテンツの代表取締役を務めていた。

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影響力とスキャンダル

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ウクライナを公式訪問したユン大統領とキム・ゴンヒ大統領夫人。(キエフ、2023年7月15日)photography : Getty Images

夫の大統領当選後、自分のキャリアを中断したキム・ゴンヒは大統領に影響力を行使できる人物とみなされるようになった。12歳年上の夫に犬食を禁止するよう促したのも彼女だった。ユン大統領はこの問題に取り組むと、昨年の国会で法律を成立させた。キム・ゴンヒは2022年3月、韓国中央日報に夫のことをこう話している。「つきあい始めて、夫は私が仕事で忙しくてきちんと食事をする時間すらないことを知り、かわいそうに思ったのでしょう。結婚したとき、こう約束してくれたんです。『一生、君のために料理を作るよ』って。10年経った今でもそうしてくれています」。ふたりは2012年3月に結婚した。

しかしながら今やユン大統領の足に刺さった棘になっているのはスキャンダル続きのキム・ゴンヒだ。まず、本人の博士論文に関連して盗作疑惑が持ち上がった。数カ月にわたる調査の末、博士論文は問題なしということになったが、その後、021年の夫の大統領選挙期間中、経歴詐称で謝罪に追い込まれた。数週間後にはある記者との会話が流出した。10分間のやりとりの中で、彼女は恥ずかしげもなく夫を「バカだ」とか、「私なしでは何もできない」とこきおろした。その一方で夫が権力を握ったら、夫に批判的な「ジャーナリスト全員を投獄する」こともためらわないと語っている。

これだけではない。大統領夫人の母親、チェ・ウンスンは、2013年にソウル南部の城南(ソンナム)にある土地を購入するために虚偽の銀行証明書を使用し、2023年11月に有罪判決を受けていることが分かった。さらにキム・ゴンヒは夫の選挙前に株価操作に関与したとして別の事件で告発されるも、2023年12月に大統領は拒否権を行使して妻を守った。しかしいまや状況は一変している。韓国を政治的混乱に陥らせたユン大統領の拘束は、「キム夫人」にとって頭が痛い問題だろう。

From madameFIGARO.fr

text : Ségolène Forgar (madame.lefigaro.fr)

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