かつて人気を博していた若手ハリウッドスター、シドニー・スウィーニーに何が起こったのか?

Celebrity 2025.11.25

madamefigaro.png

2019年のテレビドラマシリーズ「ユーフォリア/EUPHORIA」で一躍注目を浴びた28歳の女優シドニー・スウィーニーは、ここ数か月、悪い評判や不運に見舞われ、一部のファンやハリウッドからも嫌われるまでになっている。誰も予想できなかった彼女の転落を紐解く。

251125-sydney-sweeney-01.jpg

2022年9月12日、ロサンゼルスで開催されたエミー賞授賞式に出席したシドニー・スウィーニーとゼンデイヤ。photography: Christopher Polk/NBC / NBC via Getty Images

6年前、誰もがシドニー・スウィーニーの名前を口にするほど話題となった。世間はその天使のような顔立ちと青い瞳に魅了されたのはもちろんだが、それ以上に「ユーフォリア/EUPHORIA」での演技の強烈さに注目が集まった。ゼンデイヤやジェイコブ・エロルディと並び、シドニー・スウィーニーは、セックス、ハードドラッグ、アルコールといったさまざまな依存症に苦しむティーンエイジャーの日常をありのままに描いたこのシリーズで、ブレイクを果たしたスターのひとりとなった。

影響力のあるアーティスト

セクシーなキャシー・ハワード役を演じる以前は無名だった当時22歳のアメリカ人女優は、突如として脚光を浴び、ハリウッドという輝かしい未来への道が目の前に開かれた。すべてが順風満帆に整い、シドニー・スウィーニーは「ユーフォリア/EUPHORIA」での演技を称賛する雑誌に対しても余裕の表情を見せ、「ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾート」シーズン1では、ハワイの高級リゾートで家族と休暇を過ごす、甘やかされたティーンエイジャー、オリビア・モスバッハー役を演じた。

2022年、ワシントン州出身の若手女優の彼女は、「タイム」誌の表紙を飾り、同誌が毎年発表する「各分野で最も影響力のある100人の若手才能」に選ばれた。「ユーフォリア/EUPHORIA」で共演したマウド・アパトーは、友人である彼女の人物像を称賛する記事を寄稿し、シドニー・スウィーニーを「無敵な存在」で完璧主義者、努力家、そしてどんなに矛盾した感情さえも表現できる人物だと評した。

興行収入の大失敗

それから3年後、シドニー・スウィーニーを「無敵」とい表現する人は誰もいなくなった。キャリアと名声の絶頂期にあった彼女のスターの華々しい成功は、突如として終わりを告げた。ソーシャルメディアでは、かつて彼女に熱狂したファンたちも徐々に減っている。劇場でも、観客たちは彼女に背を向け始めている。映画の興行成績を分析する専門ウェブサイト「Box Office Mojo (ボックス・オフィス・モジョ)」によると、11月7日に北米で公開された彼の最新作『Christy(原題)』は、史上最悪のオープニング週末を記録したという。

シドニー・スウィーニーは、この伝記映画で女性ボクシングの先駆者クリスティ・マーティンを演じるため、自らの限界に挑戦した。まずは過酷なトレーニングを重ね、筋肉を約30キロも増量し、その後はブロンドのロングヘアを切り、ダークブラウンのショートボブに変えた。

彼女のキャリアの転機となるはずだったこの役は、意図せずして、シドニー・スウィーニーへの大衆の幻滅の象徴となってしまった。映画のポスターに名前が載っているだけではもはや人々を夢中にさせず、むしろ距離を置かせる存在となっている。なぜ、この女優はわずか28歳にして、こんな状況に陥ってしまったのだろうか。

物議を醸した広告

2025年の夏にさかのぼれば、シドニー・スウィーニーの予想外の転落の理由が見えてくる。7月23日、彼女はアメリカン・イーグルのデニム広告キャンペーンに登場した。

彼女は全身デニムで、髪を下ろし、力強い視線でファム・ファタールのようなポーズをとっている。いまのところ、特に問題となるようなことはない。しかし、「ジーンズ」と「遺伝子」の発音が似ていることを巧みに利用した「シドニー・スウィーニーのジーンズは最高」というスローガンが、激しい論争を巻き起こした。アメリカン・イーグルは優生学を推進していると非難され、ブロンドに青い目のシドニー・スウィーニーは白人至上主義を推進していると、米一般紙『USAトゥデイ』が報じた。

広告出演を承諾した彼女は、そのスローガンが伝えようとするメッセージに賛同しているのではないかと疑われることになった。この悪評をきっかけに、シドニー・スウィーニーを巡る論争や物議が、まるでドミノのように次々と連鎖していった。

ドナルド・トランプを支持

8月初旬、イギリスの新聞『ガーディアン』は、シドニー・スウィーニーが2024年11月の大統領選でドナルド・トランプが勝利する数か月前に、共和党に投票登録していたことを報じた。ハリウッドでは、ほぼすべてのスターがジョー・バイデンやカマラ・ハリスの選挙運動に関わっていたため、このニュースは大きな波紋を呼んだ。一方でドナルド・トランプ本人は大喜びし、このスキャンダルを自身の政治的メッセージに利用さえしている。ペンシルベニア州にあるリーハイ・バレー国際空港の駐機場で記者に直撃されたトランプ氏は、シドニー・スウィーニーと彼女のアメリカン・イーグルの広告キャンペーンを称賛した。「もしシドニー・スウィーニーが共和党員なら、彼女の広告は素晴らしいと思う」と冗談めかして語った後、より真剣な口調でこう付け加えた。「共和党支持者がこれほど多いとは驚くだろう。」

ソーシャルメディアでは、主にミレニアル世代やZ世代の若者で構成される彼女のファンたちが衝撃を受けている。彼らの多くは進歩的で反人種差別の立場を取る人々だ。中には、自分のアイドルに裏切られたと感じる者もいる。あるXユーザーはこう怒りをあらわにした。「彼女は女性を支援しているふりをしているけれど、女性の権利や自由に反対する投票をしている。本当に間違った人物に発言権を与えてしまった。」これは、ドナルド・トランプ大統領がアメリカでの妊娠中絶の権利後退に関わり、最高裁に3人の保守派判事を任命したことを指している。さらに別の「ユーフォリア/EUPHORIA」ファンは、「ゼンデイヤの方がいつだって優れた女優だし、良い人。言ったことを撤回しない」と書き込んだ。

X上で非常に影響力のあるMAGA(メイク アメリカ グレート アゲイン、ドナルド・トランプ支持者のスローガン)陣営は歓喜している。ドナルド・トランプの支持者たちは、女優の勇気、先見性、知性、そして何よりもその容姿を称賛している。「彼女を見ただけで共和党員だとわかった」「彼女にとって素晴らしいことだ、彼女は美しく賢い」「シドニー・スウィーニーはさらにセクシーになった」といったコメントが、イーロン・マスクが設立したSNSのX上に寄せられている。

謝罪なし

一方、彼女は沈黙を貫いている。論争を鎮めようとする発言も、公式のコメントも一切ない。この戦略には疑問が残る。もしシドニー・スウィーニーがアメリカン・イーグルの広告スローガンに同意していなかったのだとしたら、単純に謝罪したり、せめて不手際を認めたりすることはできなかったのだろうか。

11月初旬、雑誌「GQ」のジャーナリスト、キャサリン・ストゥーフェルが映像インタビューの中で、シドニー・スウィーニーにこう振った。「広告公開後、『白人は遺伝的優位性をジョークにすべきではない』といった意見が寄せられました...この話題について、ぜひあなたの見解を聞きたかったのです。」しかし、ブラウンのボンバージャケットにウエスタンブーツ姿の彼女は、表情ひとつ変えず冷静そのものだった。顔は無表情のまま、まるでアッパーカットのように「私が話す気になったときには、皆さんそれを知ることになると思います」と冷たい一言を放った。

インタビューの冒頭、シドニー・スウィーニーは論争の的となっていることを理解していないかのように、あどけなさ(あるいは生意気さ)をにじませながらこう語った。「ジーンズが大好きで、いつもジーンズを履いています。」

「あなたはバカ」

この動画はネット上で賛否両論を巻き起こし、共和党支持者はシドニー・スウィーニーが「意識の高い圧力」に屈しなかったことを称賛する一方、進歩派は彼女が謝罪を拒否したことで自らを完全に破滅させたと批判している。「セックス・エデュケーション」や「ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾート」シーズン3で知られるイギリス人女優エイミー・ルー・ウッドは激怒し、いまや悪名高いこの動画の下に吐き気の絵文字を添えてコメントを投稿した。

クリスティ・マーティン役の候補のひとりだった女優ルビー・ローズ(最終的にシドニー・スウィーニーに決定)も彼女を批判している。『バットウーマン』や『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』での演技で知られる彼女は、ソーシャルメディア・プラットフォーム「Threads」で、同僚のシドニー・スウィーニーが共和党員であるせいで伝記映画の興行的失敗の責任を負っていると非難している。「広報チームはこの映画を"失敗作"だと言い、シドニーはLGBTQIA+コミュニティの"みんな"のためにやったと言っています。でも、"みんな"の中で、自分たちを嫌う人間が私たちのふりをして闊歩するのを見たいと思う人なんていません」と彼女は厳しく批判した。クリスティ・マーティンと同じくレズビアンであることを公言しているルビー・ローズは、ボクサー役をLGBTQIA+コミュニティの女優に与えてほしかったという。「あなたはバカで、映画を台無しにした。以上」と、彼女はシドニー・スウィーニーを痛烈に批判し、締めくくった。

『デイリー・メール』紙によると、ゼンデイヤはドラマ「ユーフォリア/EUPHORIA」シーズン3のプロモーション活動中、シドニー・スウィーニーとのインタビューやレッドカーペット出演さえも「政治的な意見の相違」を理由に断っているという。しかし、ふたりは元々とても親しい友人だった。

テイラー・スウィフト最大の敵とのロマンス

いま、シドニー・スウィーニーはもはや「無敵」ではなく、物議を醸す存在となっている。彼女の政治的、芸術的な選択だけが問題視されているわけではない。この夏、彼女のネガティブな評判が高まる中、彼女は音楽業界で最も物議を醸し(そして最も嫌われている)人物、プロデューサーのスクーター・ブラウンと手をつないでいる姿が目撃されている。6月末、イタリアのヴェネツィアで行われたジェフ・ベゾスとローレン・サンチェスの結婚式で出会った。スクーター・ブラウンはテイラー・スウィフトの初期アルバムの権利を彼女の同意なしに購入した人物で、スウィフトは自分の作品の権利を取り戻すため、アルバム全曲を再録音する羽目になった。2019年6月、テイラーは自身のTumblrでスクーター・ブラウンを「操作的でストーカーまがい」と非難している。それでもシドニー・スウィーニーはまったく意に介さず、テイラー・スウィフトの最大の支持者である数百万のファンを敵に回すことも恐れていない様子だ。

11月初旬、シドニー・スウィーニーはスクーター・ブラウンとニューヨークでショッピングに出かけ、セントラルパークでの休憩中に公然とキスをし、交際を公にした。

251125-sydney-sweeney-02.png

2025年11月4日、ニューヨークの街に現れたシドニー・スウィーニーとスクーター・ブラウン。photography: Ramales Felipe/Splash News/ABACA

民主党支持者やテイラー・スウィフトのファンから批判されつつも、いまやアメリカで最も保守的な層から支持を受けるシドニー・スウィーニー。彼女は、すでに破滅的な打撃を受けつつある自身のキャリアを顧みず、この道を突き進むのだろうか。それとも、12月24日に公開予定の映画『The Housemaid(原題)』に賭け、新たなスタートを切るつもりなのだろうか。もしこの映画が、アメリカで450万部以上を売り上げたフリーダ・マクファデンの原作と同様に成功を収めれば、シドニー・スウィーニーを取り巻く論争も一掃される可能性がある。しかし、そのためには、早急にイメージ回復のための新たな戦略を打ち出す必要がありそうだ。

From madameFIGARO.fr

text: Solene Delinger (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest
映画『兄を持ち運べるサイズに』
当たっちゃってごめんなさい占い
35th特設サイト
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories

Magazine

FIGARO Japon

About Us

  • Twitter
  • instagram
  • facebook
  • LINE
  • Youtube
  • Pinterest
  • madameFIGARO
  • Newsweek
  • Pen
  • CONTENT STUDIO
  • 書籍
  • 大人の名古屋
  • CE MEDIA HOUSE

掲載商品の価格は、標準税率10%もしくは軽減税率8%の消費税を含んだ総額です。

COPYRIGHT SOCIETE DU FIGARO COPYRIGHT CE Media House Inc., Ltd. NO REPRODUCTION OR REPUBLICATION WITHOUT WRITTEN PERMISSION.