立田敦子のヴェネツィア国際映画祭レポート2016 #04 ヴェネツィア映画祭はコンペ以外も話題作がたくさん!

Culture 2016.09.12

あくまでもコンペティション部門が中心となるのが国際映画祭の常。今回、コンペ部門での上映は20作品ほど。映画祭期間中は、他にもオフィシャルセレクションだけでも100本以上の映画が上映されます。

ヴェネツィアでは、サイドバーの「オリゾンティ」、有名監督などの新作を上映する「アウト・オブ・コンペティション」、今年から新設されたヴィジョンのある作品を集めた「シネマ・ディ・ジャルディーノ」、修復された名作を上映する「クラシック」などの部門があります。
ということで、メイン部門の受賞対象でないため話題になりにくい、その他部門の話題作もご紹介してみたいと思います。

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『The Bleeder』
 

『ロッキー』のモデルとなった実在のボクサー、チャック・ウェブナーの伝記映画『The Bleeder』(原題)では、主人公のチャックとその妻リンダを、実生活でもパートナーのリーヴ・シュライバーとナオミ・ワッツが演じ、ふたり揃ってヴェネツィア入りしました。

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左から、『The Bleeder』のフィリップ・ファラルドー監督、ナオミ・ワッツ、リーヴ・シュライバー。 photo: ASAC
 

また、大作ではメル・ギブソンが『アポカリプト』(2006年)以来、10年ぶりにメガホントをとった『ハックソー・リッジ』(原題)が上映されました。これは第二次大戦末期、宗教的な理由で武器を持たない主義を貫き、最前線でも丸腰で衛生兵として戦った実在のデズモンド・ドスの物語。後半は、彼が活躍した沖縄戦が舞台となっています。

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『ハックソー・リッジ』
 

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『ハックソー・リッジ』のメル・ギブソン監督。
 

主演は、英国の若手実力派アンドリュー・ガーフィールド。彼の妻役を演じたテリーサ・パーマーや父親役のヒューゴ・ウィーヴィング、上司の軍曹役のヴィンス・ヴォーン、同僚役のルーク・ブレイシーらもヴェネツィア入りしました。テリーサは、妊娠中の大きなお腹をかかえながら、インタビュー&レッドカーペットにも登場! そう、映画祭は、新進俳優にとってはメディアにアピールする絶好の機会なんです。ちなみに、ルーク・ブレイシーもピアース・ブロスナン主演の『スパイ・レジェンド』(2015年)などで絶賛売り出し中の新進俳優ですが、実際に会ったら、スクリーンの中よりも数倍イケメンで驚きました! 本作にも、けっこう“おいしい役“で登場しますが、今後も注目です!

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レッドカーペットに登場した『ハックソー・リッジ』のキャストたち。 photo: ASAC
 

*次のページでは、ジュード・ロウ主演のTVシリーズや、デンゼル・ワシントン主演のクロージング作品を紹介!

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前半、注目された大物といえば、ジュード・ロウ。
ここ数年、映画祭でもNetflixやアマゾンなどの配信メディアが作品を発表していますが、今回は、米国の大手ケーブルテレビHBOが中心となったTVシリーズ『The Young Pope』(原題)の8話中2話分を上映しました。イタリア系アメリカ人の頑固な司祭がローマ法王になる……というお話で、ジュードが若き法王を演じています。

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『The Young Pope』
 

TVドラマといっても、監督は『グレート・ビューティ/追憶のローマ』でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したイタリアを代表する映画監督パオロ・ソレンティーノ。カンヌやヴィネツィアなどの国際映画祭の常連でもあるソレンティーノだけに、映画ジャーナリストたちの関心が高く、評判もよかったです。

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ジュード・ロウ(左)と『The Young Pope』のパオロ・ソレンティーノ監督(中)。photo: ASAC
 

スターパワーを見せつけたのが、クロージング作品『マグニフィセント・セブン』。黒澤明の『七人の侍』(1954年)をベースにした西部劇で、デンゼル・ワシントン、クリス・プラット、イーサン・ホーク、イ・ビョンホンらオールスター、スターキャストでも注目されています。

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『マグニフィセント・セブン』
 

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『マグニフィセント・セブン』
 

『七人の侍』は、黒澤が敬愛するジョン・フォードの西部劇に影響を受けて撮ったオリジナル作品で、1954年のヴェネツィアで銀獅子賞を受賞しています。そして1960年には、米国でユル・ブリンナー、スティーヴ・マックイーンら主演でリメイクされた西部劇『荒野の七人』が金獅子賞を受賞。ヴェネツィア映画祭とはとてもゆかりが深い作品なのです。ちなみに、今年の「クラシック」部門では黒澤版の『七人の侍』も上映されました。

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デンゼル・ワシントン photo: ASAC
 

『マグニフィセント・セブン』の上映にあたっては、アントワーン・フークア監督とデンゼル・ワシントン、クリス・プラットがヴェネツィア入りしました。“7人の侍”が揃わなかったのは残念ですが、みんなオスカー俳優デンゼル・ワシントンに大熱狂! 去年の大ヒット作である『ジュラシック・ワールド』の主演などクリス・プラットのスター指数は急上昇しているハズなんですが、大スターの貫禄にはかなわなかった?
ちなみに、フークア監督はデンゼルとイーサン・ホークが共演した『トレーニング デイ』(2001年)で、デンゼルにアカデミー賞をもたらした立役者。今回もゴールデンコンビが幸運をもたらすかも!?

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『マグニフィセント・セブン』のアントワーン・フークア監督。 photo: ASAC
 

大作以外でもスターがやってくるのが映画祭。
トム・フォードの監督第2弾『Nocturnal Animals』(原題)のレッドカーペットには、前作『シングルマン』に主演し、2009年のヴェネツィアで最優秀男優賞を受賞したコリン・ファースが駆けつけました。
また、ジェームス・フランコやイタリアのキム・ロッシ・スチュアートは、自身の監督作の上映も。いつでもどこかにスターの姿があるのもヴェネツィア映画祭ならでは!

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トム・フォード監督『Nocturnal Animals』のレッドカーペットに駆けつけたコリン・ファース(右)と妻のリヴィア。 photo: ASAC

 

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texte: ATSUKO TATSUTA

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