新世代ミュージシャンに注目! #05 遊び心をふんだんに盛り込んだTempalayの音楽世界

Culture 2016.10.26

テンパレイ(Tempalay)の音楽はどの曲もイントロから、まるで玉手箱を開けたような不思議な浮遊空間が広がる。脱力感あふれるゆるさに、遊び心たっぷりの音遣いや予想を裏切る曲展開、歌詞の言葉遊びも巧みで、いつの間にかその中毒性にはまってしまうのだ。小原綾斗、竹内祐也、藤本夏樹の3人にインタビューした。

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写真左から竹内祐也(Ba)、小原綾斗(Gt&Vo)、藤本夏樹(Dr)。

3人がまったく違うことをしているものがアンサンブルになれば

彼らは知り合った形もユニークだ。5〜6年ほど前に小原が当時ソムリエをしていた竹内と飲み屋で知り合い、年齢差はあったものの人間的に合ったので、遊びでバンドをスタートさせたという。しばらくジミ・ヘンドリックスやホワイト・ストライプスのようなブルース寄りのギターロックを3ピースでやっていたが、小原のやりたいタイプの音楽を演奏するバンドがすでにあったため、“いまのままではそのバンドを超えられないから、自分の周りで誰もやっていないような音楽をやろう”と意を決し、新たな音楽とメンバーを求めることに。ポストロックやシューゲイザー系のバンドでドラムを叩いていた藤本とは対バンで知り合い、人として話が合いそうだったのでセッションに誘い、そこからこの3人で2014年にテンパレイが結成された。

「“面白い音楽をやりたい”と思ってこのバンドを始めて、サイケでロック、なおかつポップなものを表現したいと思っていた時に、アンノウン・モータル・オーケストラの曲『ファニー・フレンズ』をYouTubeで知りました。しかもこの曲を収録したアルバムは、当時のUSインディーシーンで異質だったんですよ。ブラック・ミュージック的なリズムの要素もあったし、ああいうアプローチをしているバンドは他にはいないから、そこでやりたい方向性が閃いたんです。いまは音楽性が似たり寄ったりしているバンドが多いので、面白くてオリジナリティがちゃんとあるバンドをやりたいと思ったんです」(小原)

YouTube「made in japan」1stフルアルバム『from Japan』収録。

いまはむしろちょっとヘンじゃないと嫌なくらい

作詞作曲を担当する小原は、最初にパッとカッコイイものができたら、そこから練ることなく、綿密に計算もせず、感覚重視で作っていくという。他の2人にも自由度の高いもので面白く、一癖も二癖もある音やフレーズを求める小原。

「3人がまったく違うことをしているものがアンサンブルとなって、1つのものになっているのがすごく好きで。そういう意識をなんとなく言葉にせず共有してきて、いまちょっとずつ成立してきた気がするんです」(小原)

竹内は、前はもっと基本に忠実なコードを意識したベースラインを弾いていたが、テンパレイを始めてから変わってきたという。

「最初のうちは、ベースの音に対して(小原)綾斗に“この響きじゃない”と言われて、ちょっと変な音を要求されていたんですけど、次第に俺もそういう音が好きになっていって、今はむしろちょっとヘンじゃないと嫌なくらい(笑)。とはいえ、結構綾斗と戦ってる感じなんですよね。綾斗の曲がすごく好きなので、彼が曲を持ってきた時に、曲をこれ以上にしたいという気持ちでやってます」(竹内)

ベースは歌のメロディとは別に独自に歌うようにベースラインを弾き、藤本のドラムも生ドラムに加えパッドも使って多彩なビートや音を叩き出す。もちろん小原のギターサウンドやヴォーカルの個性も強く、それら各々のサウンドに魅せられながら、その曲の世界観に引き込まれてしまうのだ。

「sea side motel」デビューEP『Instant Hawaii』収録。

「基本、パッドのアイデアは(藤本)夏樹に任せていて、“ここで何かして”って頼んだら、パッドとかで何か考えてやってきてくれる(笑)」(小原)

藤本も話す。

「いまやっている音楽は、前やっていたものとは全然違います。最初はダイナミクスがない感じが好きだったけど、最近はライブではダイナミクスは大事なぁと感じながら変えていってる感じです。フレーズに関してはアリエル・ピンクとか聴いて、サプライズ的なことを何かしたいんですよ。“どこかでハッとする瞬間を作りたい”とは思っているんです」(藤本)

CDを聴いて感じるドラムの音の面白さは、「僕がドラム好きなので、感覚でですけど、ドラムのミックスをやってます」と話す、竹内が手がける曲からも感じられる(「This is TOKYO」「good time」他)。こういったDIYな部分もオリジナリティを確立するのに一役も二役も買っているのだろう。そして、メンバー全員が「曲としてバランスが良く、個性がみんな出てると思うんですよ」と話す「good time」は、「“1曲1サイケ”といったルールを作って、曲の中に必ずサイケな部分を入れるという遊びをしていた時期の曲ですね(笑)」(小原)と説明するように、その楽しさがリスナーに心地よく伝わってくる。また、実験感覚でいろいろな音を曲に挿入していく小原はもともとフレキシブルな性格だったようで、彼からの影響もあるのだろうか、竹内も藤本も「テンパレイを始めて、元からあった自分の中の変な部分が出てきた」と、笑いながら明かす。

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表現することにおいて説明しすぎるものが多くなっている

歌詞について、小原は次のように話す。

「曲を作っている時、歌詞は後からつけますね。でも歌い出しが重要だと思ってて、曲の最初の歌詞にはめる意味、いろんな視点から見てはめる歌詞が決まったら、そこから歌詞の内容が始まるという感覚なんです。具体的に、そもそもここにメッセージがあるというのは後付けかもしれないし、どんどん歌っていると気持ちが変わっていくので、あまりそこまでこだわっている思いはないです」(小原)

シニカルな「Oh.My.God!!」や「made in Japan」に代表されるように、フレーズにスルリと歌詞を詰めていく感じはリズム感がよく、韻を踏んだり、言葉の意味で遊んだり、歌っていても気持ち良さそうだ。

「そうなんですよ、結局言葉遊びなんですよ、歌詞って。いま、説明的な歌が多いですよね。というか、表現することにおいて全部説明しすぎるものが多くなってきていて、情景や心情を説明しすぎる歌詞や、映画にしても、普通にお茶してる時に、“絶対そんなん言わんやろ”みたいなそんな説明的なセリフがあったりして」(小原)

ゆえに音的にも歌詞的にも想像力を働かせてくれるのだ。

「Oh.My.God!!」1stフルアルバム『from Japan』収録。

インタビューしていると、明確に“売れたい”という言葉が飛び出してくる。

「“確実に売れたい”っていうことしか考えていないですね。ただ売れる方法や音楽があるとして、でもたぶん僕らはそこには向いてないから、作品を作ることで、自分らのプロデュースを自分らでするということしかないと思う。なので、結局トータルで自分らがどうしたら目立つかということを常に考えています。そして面白い音楽で売れたい!」(小原)

「売れることが目標でも、そこに行くまでの方法で遊んで、楽しんでいますね」(竹内)

「自分が音楽をやる理由は、単純に聴くのがめちゃくちゃ好きで、で、売れたいですけど、自分がやることが面白くなくなるのは絶対嫌です。素直にドラムのアイデアで面白いと思ったことは全部やるし、何をやったら売れるかわからないけど、単純に自分がいま面白いと思うことを俺は曲に盛り込んでいきたい」(藤本)

今年3月に行ったアメリカツアーが大きな転機になったという。

「正直プロ意識とか芽生えたのは、ここ1、2ヶ月くらいかもしれない。アメリカもそうだし、いろいろあって、竹内が1回辞めて先に帰国したし。アメリカツアーが終わって冷静になった時に、バンドをやれている状況に携わってくれてる人がいて、でも結果が出てなくて、全部僕の責任やったなと思った。基本僕がやりたいことに賛同してみんな一緒にやってくれてる状況なので、僕がもっと本気で取り組んで、いろんな指針をみんなに示して、それをもっと明確にして行動したら、もっとちゃんと行くんじゃないかと思っています。で、いろいろあったことで、いまはとても最強に良い状況だと思っています!」(小原)

YouTube「Festival」 2016年3月に行ったアメリカツアーの模様を収めた映像。ライブにはAmy(Key&Cho)がサポートミュージシャンとして同行している。

10月1日は親しいバンド仲間と千葉の白浜パークで真昼のビーチパーティ“BEACH TOMATO NOODLE”を開催するなど、少しずつながらやりたいことを実現させている。最後に今後の意気込みを語ってもらった。

「いまでも3人でこれやろうと決めてなくて、前よりも自分たちのやりたい事を盛り込もうとしている状態。やってくうちに、もっとやりたいことがあるのでそこに自分を出して、それを共通の認識にしていきたい。バンドの中で楽しみたいし、これから作る曲にしてもセンスの良い遊び方を教えたいですね」(藤本)

「日々、昨日よりもカッコイイものになっていくと思います」(竹内)

「あと基本的には音楽だけじゃなくて行動やイメージや印象を全部裏切っていく遊びをしたい。注目されてきてることを逆手に取っていきたい自己プロデュースも考えています」(小原)

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型破りな部分もあり、どこか危うさを兼ね備えているTempalay。このユニークさをキープしつつ、バランス良く我が道を進んでほしい。

プロフィール
東京・埼玉を中心に活動する小原綾斗(Gt&Vo)、竹内祐也(Ba)、藤本夏樹(Dr)による3人組。結成から1年にしてFUJI ROCK FESTIVAL ’15の「ROOKIE A GO-GO」や、りんご音楽祭など大型野外フェスに出演。2015年9月発売の限定デビューEP『Instant Hawaii』は即完売するほど注目され、2016年1月には1stアルバム『from Japan』を発表。3月にはアメリカの大型フェスSXSW2016に出演、北米ツアーも行った。
http://tempalay.com/

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1st フルアルバム『from Japan』

今後のライブ予定

11/4 國學院大学学園祭
11/4 渋谷O-NEST
11/8 新代田FEVER
11/12 大阪複数会場 《愛はズボーンpresents “アメ村天国”》
11/19 京都METRO(深夜公演)
12/14 名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL

photos : KO-TA SHOJI, texte : NATSUMI ITOH

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