接近! 東京ミレニアルズ

映画を愛する男、役者・井之脇海。

特集

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これからの世代を担う若い才能にフィーチャーするオンライン連載「東京ミレニアルズ」。8回目は、幼少期より子役として演技に親しみ、現在は若手俳優として活躍する井之脇海が登場。数々の映画やドラマで高い演技力を見せる実力派に、人生をかけて夢中になっていると言う、映像作品への熱い思いを聞いた。

クランクアップで終わりなんて、寂しい。

「もともと子役として演技の仕事を始めて、最初はエキストラをやっていました。でも、13歳の時に出演した黒沢清監督の『トウキョウソナタ』(2008年)の出演が大きなきっかけになった。その時、俳優の道に進もうと考えて。現場で演じること自体がおもしろくて、その後出来上がった映像を観て、自己満足かもしれないけどすごく楽しかったんですよね」



それから、少年は芝居の世界へぐいぐいとのめり込んでいく。かつて突き指をしてでも辞めたかった習い事のピアノだが、『トウキョウソナタ』の役でピアノを弾くという場面に直面し、それが楽しい作業へと変わっていったという。

「役をいただいた際には、決して浮き足立たずストイックに、真摯に向き合って、プライベートを削ってでも極めたいと思っていて。極めるためには、見られるとか見せるとか意識しないで、役として自然にその場にいることを大事にしています。小さい頃から、目的のために何をすればいいのか思考するのが好きなので、その考え自体は昔から変わらないですね。ピアノを辞めるためにバスケ部に入って突き指する計画を立てていたくらいですから(笑)」



映画愛、役者愛、芝居愛。どんな形で表現すればいいのか、難しいほどのパッションを抱えた井之脇は、カメラの前に広がる世界だけでなく、それを支える舞台の裏側を知ろうと求めた。その結果、いま、大学で映画を学んでいる。2015年には、自ら監督、脚本、出演を手がけた作品『言葉のいらない愛』が、第68回カンヌ国際映画祭のショートフィルム部門で入選を果たしている。

「自分で映画を作ろうと思ったのは、監督をはじめ演出側が何を求めているのか、もっと知りたいと思ったから。さらにいうと、台本をもらって演じて、撮影がクランクアップしたら自分も終わりというのが寂しくて。映画が生まれるところから人に届けられるところまで、全部知りたいと言う欲求があったんです」



死ぬまでに、多くの作品に関わりたい。

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映像作品において作り手=求める側と、演じ手=形にする側とした場合、ふたつの目線を持つことで、俳優としてのジレンマを持たないのだろうか。

「映画の作り方に理解をもつことで、いい作品作りに影響していると思う。100人の監督がいたら100通りの演出があるので、役者として現場にいる以上、その時に別の感情はむき出しにならない。監督たちと話し合いを設けて自分の思っていることを伝えて、その上でやってほしいと言われれば、いまの段階でいかに自分が近づけるかを考える。でも、そんな考えがあっても、現場の環境で変わることもあって……」



現在公開中の映画『海辺の生と死』では、圧倒的な場所の力を前に、いままで感じたことのない気持ちになったという。特攻艇の出撃命令を待つ朔中尉(永山絢斗)と、彼とどこまでも一緒にいたいと願うトエ(満島ひかり)の鮮烈な出会いと恋の物語を描く本作で、ふたりの間で手紙を運ぶ朔の部下・大坪を演じる。

「この映画は奄美だからできた作品。現場の雰囲気が作品にとって大きく、沖縄ともまた違う感じになったと思います。撮影当時は、物語や役にかなり深く潜っていたので、初号試写を観ても感想が出てこなくて。“自分が東京にいて”しっかり観られないというか……気持ちが奄美に行っちゃうんです。最近、やっと客観的に観られるようになったくらい」



「映像が作るのも観るのも単純に楽しくて、死ぬまで一本でも多くの映像作品に関わりたい」という言葉は、作り手と演じ手を知っている彼の口から出ると、ちょっと受け取り方が変わる。希望が滲んでいるのだ。

「そして、僕が関わることで作品がいい方向に向いたら幸せ。そのためには、自分の人気とかは気にしていないけど、ある程度の知名度は大切だと考えています。いろいろなことにチャレンジしていきたいので、そういう意味では、いつかハリウッド映画には携わりたい。目標というよりも、チャンスをいただけたなら、英語を勉強して目一杯頑張りたいです」



言葉を選びながら話す彼の様子は、足元を見ながら歩を進める姿に重なる。一回一回、一作一作と目の前にあることを、受け取り、理解し、乗り越える。それが未来になると肌で感じているのだろう。ときどき淡い笑顔がこぼれながらも、平熱を保ちながらインタビューに答える井之脇海。世の21歳の青年はこうなのかと驚きながら、ついプライベートについても聞きたくなって……。

「寝ることと食べることが好き。睡眠と食事の時だけは自分でいられるというか。ほっといたら暴飲暴食しちゃうかもしれないけど、仕事のためにセーブしています。そのほか、自分だけの時間や空間を意識するような、毎日決まってすることも好きですね。靴紐を結んでいるときとか。いま素なんだなとか思ったり(笑)」



実に理性的で思慮深く、うん、実にカッコいい。その独特な目線で見る景色は、私たち観る者をどこまでも飽きさせない。

>>井之脇海に17問17答!

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井之脇海に17問17答!

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・好きなアプリ:フィルマークス。「映画記録ができるアプリで、事前にチェックした作品の公開日が来ると知らせてくれるので便利!」

・好きな曲:フィッシュマンズのベストアルバム『空中 ベスト・オブ・フィッシュマンズ』。「その他、ビートルズやU2も好き」

・好きな映画:『ポンヌフの恋人』。「好きな映画を聞かれると毎回違うことを言っちゃうけど、今回はこれ。18歳の頃、オールナイト上映でレオス・カラックスの作品を上映していて、改めてスクリーンで観たら泣いちゃって。思い出の作品のひとつ」

・自分の癖:口を覆う。「昔から無意識でやってる。こうしていると一回言葉を考えられるから、かな」

・ポケットに入っているもの:携帯電話。

・尊敬する人:父親。

・好きな東京の駅:代官山。

・好きな本:パウロ・コエーリョの『アルケミスト』。「高校生の頃から何度も読んでいます。他には、自分が関わる作品の原作を読みます」

・自分の弱点:「仕事など、ハマったりのめり込んだりすると周りが見えなくなること」

・週末に食べたいもの:ラーメン。「まぜそばか、家系」

・好きなお酒:ウイスキーのロック。

・寝る時の格好:膝下丈のバスケットボールパンツにTシャツ。

・好きな香り:桐ダンスの匂い。「安心しますね」

・睡眠時間(オン/オフ):「仕事がある時でも6時間は寝るようにしていて。オフは12時間くらい……趣味がないから寝ちゃうんです」

・最近泣いたこと:「お芝居では泣いたけど、普段の生活では泣いてないな。実際は、涙もろいほうですね。先日久しぶりに両親とご飯に行って、アジの活き造りを見て妙に切なくなったくらい、ですかね(笑)」

・バッグに入っているもの:歯ブラシ、定期入れ、キャップ。

・SMSやLINEで良く使う言葉:「わかりました」。「人とあまり連絡を取らないくて…というか友だちが少ない。高校の友だちでいまでも連絡を取っているのはひとり、プロのドラマーの平陸。尊敬できる人ですね」

いのわきかい●1995年、神奈川県生まれの21歳。2007年の映画『夕凪の街 桜の国』でデビュー。『トウキョウソナタ』(08年)で注目を集める。15年は監督作『言葉のいらない愛』がカンヌ国際映画祭に出品された。、NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」では小野亥之助役で出演が決定。公開中の『海辺の生と死』『月子』に続き、10月7日に前編、10月21日に後編が上映となる『あゝ、荒野』がある。
ブルゾン¥244,080、シャツ¥73,440、パンツ¥155,520、ベルト¥90,720(すべて予定価格)/以上プラダ(プラダ ジャパンカスタマーリレーションズ)
プラダ ジャパンカスタマーリレーションズ 0120-559-914

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texte : HISAMOTO CHIKARAISHI, photos : CHIKASHI SUZUKI, stylisme : MASATAKA HATTORI, coiffure : KENJI IDE

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