フィガロが選ぶ、今月の5冊 現代スイスを代表する作家による珠玉の作品が、初邦訳。

Culture 2017.11.17

スイスの実力派作家が描く、簡潔で濃密な小説世界。
『至福の烙印』

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クラウス・メルツ著 松下たえ子訳 白水社刊 ¥2,592

SNSで世界とつながっていても「私」という存在の不確実さはいつの時代も変わらない。スイス国内で数々の文学賞を受賞しているクラウス・メルツの小説は、身近な家族の物語をたどることが「私」と「世界」をつなぎとめる確実な方法であるということを知らしめる。唐突なまでの場面展開や複数の語り手による視点の変化、ストイックで濃密な描写など、その独特な語り口は映画を見ているよう。失われた家族や戦争の記憶などがモンタージュのように差し挟まれ、それらがひとつの物語として収束する時、小説世界の不思議な魅力に惹きつけられるだろう。

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書き下ろしも収録。最果タヒの詩集3部作、完結編。『愛の縫い目はここ』
ナイジェリア系作家が紡ぐ、珠玉の長編。『オープン・シティ』

*「フィガロジャポン」2017年11月号より抜粋

texte : JUNKO KUBODERA

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