フィガロが選ぶ、今月の5冊 幽霊が語りかける、悲しく愛おしい昭和の物語。

Culture 2017.11.21

『ゴースト』

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中島京子著 朝日新聞出版刊 ¥1,512

7つの短編に登場する幽霊たちは、どこか身近で愛おしい。それは戦争をくぐり抜けた昭和という時代に取り残されてしまった、さまざまな人やモノに対するノスタルジーの感覚。数世代遡ればどこの家庭にもあったであろう人々の暮らしや思いが、幽霊という媒体を介してふっと日常に現れる。おじいちゃんの幻影や壊れたミシン、戦争孤児の男の子、台湾留学生との出会いなどによって繰り広げられる幽霊との交流は、悲しくも心温まるものとして描かれる。最終話で登場する飲み屋の常連幽霊に至っては、あまりに自然な登場に笑みがこぼれてしまうほど。

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*「フィガロジャポン」2017年11月号より抜粋

texte : JUNKO KUBODERA

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