フィガロが選ぶ、今月の5冊 現代の闇に立ち向かう女性の勇気を描く柚木麻子の新作。

Culture 2017.12.10

私たちのすぐ隣にある、都会の心の闇。

『さらさら流る』

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柚木麻子著 双葉社刊 ¥1,512

暗鬱たる心の闇を抱える光晴と、温かく自由な家庭に育った菫。都内の地下を流れる暗渠をたどりながら、渋谷の路地や世田谷の緑地帯を歩くふたりは互いの魅力に惹かれ合っていく。やがてその関係性がバランスを崩し始め、別れを切り出す菫。数カ月後、明らかになった事件をきっかけにふたりの葛藤と再生の物語が幕を開ける。目に見えない社会の重圧に押し潰されそうになりながらもがき苦しむ菫の意志の力は、やがて周囲の人々をも変えていく。DVやリベンジポルノなど現代の闇は深いが、人間の尊厳をあきらめない菫の姿勢は私たちを奮い立たせる。

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*「フィガロジャポン」2017年12月号より抜粋

texte : JUNKO KUBODERA

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