フィガロが選ぶ、今月の5冊 ピュリッツァー賞受賞、奴隷少女の逃亡を描く長編。
Culture 2018.04.11
奴隷少女は地下鉄道で、自由の地平を目指す。
『地下鉄道』
コルソン・ホワイトヘッド著 谷崎由依訳 早川書房刊 ¥2,484
コーラの祖母は、少女の頃に誘拐され、奴隷船に積み込まれた。コーラの母も、ジョージアの大規模農園に住む15歳のコーラも奴隷だが、同じく奴隷の少年シーザーに逃亡を持ちかけられる。タイトルは当時南部で奴隷の逃亡を助けた地下組織の暗号名だというが、作家はこれをそのまま「地下を走る鉄道」にしてスリリングな逃亡劇に仕立て上げた。地獄巡りのような道程は、理不尽な暴力と差別がまかり通ってきた陰惨な歴史と重なっているが、物語の抜群の求心力が、さらにそれを凌駕していく。ピュリッツァー賞、全米図書賞ほか数々の賞を受賞した傑作。
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*「フィガロジャポン」2018年4月号より抜粋
réalisation : HARUMI TAKI
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