フィガロが選ぶ、今月の5冊 幻のコラージュ作家、岡上淑子を知っていますか？

幻のコラージュ作家の、優美で洗練された作品集。

『岡上淑子全作品』

岡上淑子著　河出書房新社刊　¥5,400

大胆な構図と洗練されたモチーフ。モノクロームの不穏な世界に舞い降りた優美な女たち。制作に没頭したのは1950年からわずか7年間。17歳の時に終戦を迎え、文化学院のデザイン科に通っていた彼女は、占領軍が置いていったグラフ誌を切り抜き、シュルレアリスム的作品群を生み出した。結婚を機に美術界から遠ざかり、96年に再発見されて、国内外で評価が高まっている“幻のコラージュ作家”だった岡上淑子の150作品を完全収録。敗戦後の東京で、制約や慣習から解放されて自由になることを夢見たひとりの女性のビジョンが時を超えて語りかけてくる。

【関連記事】
友達も彼氏もいないアラサー女性が、解き放たれるまで。『エレノア・オリファントは今日も元気です』
まるで自分に宛てられたような、小川洋子の傑作短編集。『口笛の上手な白雪姫』

＊「フィガロジャポン」2018年5月号より抜粋